第20話・いくぞ、お前ら! 戦闘開始だ!
木の枝の門を抜ければ、木々の隙間から夕日の光が零れる、幻想的な森の中という風景へ移り変わった。中心には、例の大木がそびえ立っている。
「――っ!!」
そして、その大木の前には、三メートルほどはあるんじゃないかってくらいの、現実離れした巨漢が木に凭れて座っていた。両手で棍棒を抱えながら、スヤスヤと眠っている。言葉だけ聞くと、かわいらしい姿を想像するかもしれないが、実際はまったくそんなことはなく、むしろ恐怖を感じた。
座っている状態でその大きさだ。立ち上がれば、これ以上に大きいだろう。まん丸に膨れた腹が、さらにその巨大さを強調していた。
「……ドンキーフールだ」
ケンは呟いた。
「……んぁ」
俺らが来たのを察したか、ドンキーフールはゆっくりと目を開いた。
「……姐サン?」
ドンキーフールは呟き、俺らを見るや、驚いた様子で飛び起きた。
「アダダ! チガウ! 勇者ダ! 姐サンノ言ウトオリ、ホントニ来タンダ!!」
ドンキーフールは慌てて立ち上がった。
「聞け、ドンキーフール! 俺らは、そこの木の実を取りに来たただけなんだ。素直に取らせてくれるなら、とりあえず今だけは倒さないでおいてやるぜ?」
俺は言うと、ドンキーフールは「へへ」と不気味に笑った。
「木ノ実、ナイ。オデ、全部食ベダ。姐サン、全部食ベテイイ、言ッタ。ミンナ、助カラナイ、スルタメ!」
――けっ。ここまで想定済みってわけかよ。
さっきから姐さん、姐さんって……もしかして、ハンドレディのことか?
「食べ……!? じゃあ、お姉ちゃんはどうやって助けるのよ!!」
ソラちゃんは声を荒らげた。
そんなソラちゃんにケンは言う。
「問題ない。奴を倒し、腹を裂いて木の実を回収すればいいのだ。消化されてようと、その成分を採取できればいいだろう?」
「Ew……結構エグいこと言う、ケン……」
リアムは心底引いているようだった。
「何、オ喋リシテル! ボコボコ、サレタイカ!」
ドンキーフールは怒り、持っていた棍棒を構えた。
「……こんなすぐにバトルが始まるなんて、最悪ね」
ソラちゃんは呟いた。
「Just in caseで、作戦決めといてよかったな、ユータ!」
リアムは俺の肩をポンと叩きながら言った。
「勇者様。わたしとムギちゃんとケンちゃんは後方から援助するのです。みんなもそれでいいですよね?」
「了解した」
「もちろんだニャ!」
ケンとムギちゃんは頷いた。
「じゃ、残ったガッツリ攻撃型の俺たちは、ガンガン前方から攻めるとしようぜ」
「Roger!!」
「指図しないでほしいものね。わかったわ」
リアムとソラちゃんも戦闘準備に入った。
ソラちゃんだけは相変わらず塩対応だが、それも上等だぜ。
「倒サナキャ! 姐サンニイイトコロ、見セナクチャ!」
巨人は大きく棍棒を振り上げた。
俺は剣を抜き、巨人を見据えて叫んだ。
「いくぞ、お前ら! 戦闘開始だ!」




