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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第二章・バンゲッデトウ
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第17話・……ああ! もう後ろに戻るなんてこと、してやるもんか!

 俺たちは、村の一番奥にある、大きな藁の屋根の建物の前まで来ていた――どうやら、ここが村長の家らしい。


 魔王からヒントをもらった俺は、みんなに魔王との会話を話せない代わりに、ひとつ提案をしたのだ。「村長の元へ行ってみないか」と。


 最初にムギちゃん占ってもらった時に言われた、『絡み合った運命』……これは、何かゲームのイベントを指していて、村の長(おさ)と接触することにより、イベントが起き、この状況を打開できるかもしれない、と話したのだ。


 ……ま、なんて言ってみたのは、偶然にも、おやつを食べている時に、村長の銅像の話を仲間(コイツら)としたからなのだが。


 今思えば、村長なら魔女の子について何か知っていてもおかしくはない。


 テオドロス王女の話を聞いていた時、あの人は魔女の子について報告を受けていると話していた。各国からの報告者といえば、まず思い当たるのは各国の代表者だろう。


 この国の代表者と言えば、〈バンゲッデトウ〉唯一の村を治める村長、〈ノスティモ村長)だろう。


 初めからここに来てみればよかったかもしれないが、まあゲームに寄り道は付き物だろ。

 ……本音を言うと、銅像を見かけるまで思いつかなかっただけだが。


 村長の家の前は、テオドロス王女の時のように警備が立っているわけでもなかった。ほかの家より少しサイズが大きいだけで、あとは変わりない。そのまま入れそうだ。……いや、テオドロス王女と比較するのが間違っているか。あの人は、この世界の王女だもんな……。


 いざ村長と対面するため、木製のドアを二回ノックした。


「はーい」


 玄関の向こうから女性の声がし、中腰で現れたのはひとりの女性だった。白髪のよく似合う、物腰の柔らかい印象を受ける老婆だ。村長の奥さんなのだろうか?


 女性に案内され、中へ入る。村長の家は全体的にアジアンチックな感じで、観葉植物もたくさん飾られていた。

 いくつか部屋を通った先に、見覚えのある顔が現れた。それは痩せ型の白熊で、体毛のボリュームが多く、目にまで毛がかかっている。銅像の凛々しい姿とは少しばかりイメージが違うが、紛れもない、この村の村長だった。


 ケンと同じように、『獣人』という種族に当たるのだろう。


 俺たちは、奥さんに言われ、村長の座っている向かいのソファに腰かけた。


「ニャンか、銅像よりも実物のほうがヒョロいニャ」

「ムギちゃん、しっ!」


 ムギちゃんが失礼なことを呟いたので、俺はすぐさまその口を押えた。

 村長は毛の隙間から、ノロリと目を覗かせた。


「……何か言ったかね? 最近耳が遠くてのぉ……悪いがもういっぺん――」

「いえっ! 何も言ってません!」


 俺はハッキリと大きな声で答えた。

 村長は「そうかそうか」としわがれた声で笑った。


「それで、あなたたちは……?」


 村長に問われ、俺から答える。


「俺は〈勇者〉、ユータです。……で、こっちから――」

「ああ、よいよい。ゆうだいくん。わたしは一気に聞いても覚えられんからのぉ」

「……あの、ユータです」

「ゆうあくんじゃな。わかっておる」


 …………。

 まあいい。気にしていたら、いつまで経っても先へ進めなさそうだ。


「いやはや、まさか勇者御一行様がこんな島にまで訪れていたとは。 テオドロス王女からは聞いております。そうですか、あなたが」

「……テオドロス王女から?」

「――ええ。テオドロス王女から、この世界に勇者が誕生したと、必ずや魔王を倒してくださると、通達がありました」


 ちょうどそのとき、奥さんが部屋に入ってきてそう答えた。

 お茶を用意してくれたらしく、手馴れた動きで、ローテーブルの上に丁寧に配膳している。


「おっと、自己紹介が遅れましたな。こちらがわたしの妻、ヘリオス。そして、わたしがこの村の村長、ノスティモでございます」


 村長とその奥さん─――ヘリオスさんは深々と頭を下げた。


「……で、勇者様。あなたがここへ来てくれたということは」


 村長――ノスティモさんは、もう理由を見越しているのだろう。

 俺は事情を話し始めた。


「俺らは、この国にいるという魔女の子を倒しに、ここへ来ました。しかし、未だ魔女の子を見つけることができず……村長さんは、何か知ってるんじゃないかと思いまして」


 村長は「ふむぅ……」と唸り、お茶をひとくち啜ると語り始めた。


「……数日前のことでした。突然、見慣れない顔が現れたのです」


 村長は顎髭を擦りながら、話をつづける。


「最初は旅の方かと思ったが違かった。……魔女の匂いがする、とヘリオスはすぐに気づきました。わたしはすぐにテオドロス王女に報告し、警戒をしていたのです。しかし、魔女の子は、その後姿をくらまし、この島もいつもどおりの日常が流れておる。平穏すぎるのが、逆に不安でして……」


 隣で、ヘリオスさんもうんうんと頷いていた。


「……あの、ヘリオスさんは、魔女の匂いがわかるんですか?」


 ヘリオスさんは頷いた。

 だったら、今も俺から魔女の匂いがしているはずだ。なぜ、何も言ってこなかったのだろう。

 俺は気になり、恐る恐る問う。


「なら、俺から……」

「――します。けれど、魔女の子ではない……何か違うものを感じるのです。わたしにもわかりませんが、あなたを疑うようなことはしなくてもよいことだけは、わかります。何より、あなたはテオドロス王女も認めた〈勇者〉 。訝しむなんてことは、決していたしません」


 違(・)う(・)も(・)の(・)とは、なんなのだろうか?

 やはりそれは、この〈SKILL〉によるもの?


 とにかく、今は疑われないだけよかったと思おう。


「村の人には、何も伝えていないのですか?」


 マキがそう質問すると、村長は「ええ」と答える。


「変に不安を煽っても、みな、パニックになるだけです。だから、わたしは何も言わずに……」


 村長がそこまで話したときだった。


「ノスティモ村長!!」


 突然、一人の青年が息を切らしながら駆け込んできた。見るに、この村の人だろうか。


「ど、どうしたんですか。いきなり……」


 ヘリオスさんが聞くと、青年は答える。


「大変です! 僕の妹がっ……それに、村のみんなも!」


 青年は酷く焦っている様子だった。村で何か大きな事件が起きていることは確実だ。


 村長はそれを聞き、杖をつきながらゆっくりと立ち上がった。


「すぐ向かおう。……勇者様も、いっしょに来てくれますかな」


 俺は「もちろんです」と答え、村長とともに青年についていく。


「ユータ。前にもこんなのことがあったのか?」


 道中、リアムにそう聞かれた俺は、首を横に振った。


「いや、今までは、日が沈むまで実に平和な村そのものだったぜ。こんなイベントはなかった……」


 そう言って、俺は気づく。

 魔王の教えてくれたヒント――イベントを起こすには、順序があるということ。


 今回のこの行動が、イベントを起こすきっかけだったんだ。


「――起きなかったんだ。俺たちが、誤った行動をしていたから。だからこの重要なイベントを見逃し、やり直すこと(ゲームオーバー)になった」


 ……初めから、俺がここへ来ていたら。


 俺たちが野宿をして死ぬ運命も避けられたし、ムギちゃんが死に、ソラちゃんが手を汚すこともなかった。


「――勇者様。今は、過去の反省会をしている場合じゃないのです」


 俺の表情から察したのか、マキはそう声をかけた。


「こうして今、全員生きて立っている。だったら前だけ見て、ゲームを進めるだけなのです」


 そうでしょ、勇者様、とマキは笑いかけた。


 ――マキには、いつも励まされてばっかりだ。


「……ああ! もう後ろに戻るなんてこと、してやるもんか!」


 俺の周りには三人の仲間がいる。それに、今回はムギちゃんにソラちゃんもいる。


 俺は強く地面を蹴りあげ、先へ進んだ。

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