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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第二章・バンゲッデトウ
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第16話・我はできる限り、お前とフェアでいたいのだよ

 こんなの、最初に占ってもらったときにはなかった。一体、何が起きてるんだ?


「おい、勇者よ」


 ムギちゃんから放たれた言葉に、俺は背筋が凍った。


 ――その声は、魔(・)王(・)の(・)声(・)そ(・)の(・)も(・)の(・)だったからだ。


「……な、なんで」


 ハッとなり周りを見渡すと、目の前のムギちゃん――否、魔王と俺以外、みんな硬直していた。


 ――いや、違う。


 俺は空を見上げた。雲の流れも止まっている。


 これは、俺(・)ら(・)以(・)外(・)の(・)時(・)間(・)が(・)止(・)ま(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)?


「はぁ。お前らがあまりにも回り道な行動をするものだから、思わず出てきてしまった」


 魔王は言う。


「ああ。言っておくが、この娘には何もせんよ。お前と話すためにちょっと身体を借りるだけさ」


 ……なんで、このタイミングで魔王なんかが。


「〈拳銃使い〉も困ったものだな……ああ、今はケンという名を授かったのか。中途半端な推理しかできんのだから」


 魔王はぐーっと背伸びをした。


「はぁ。半獣人の身体は慣れんな。お前のぉ、我を出すようなことをしよって、面倒な奴だ。前の世界線ではすんなりと進んでいたというのに」


 魔王はよくわからない文句を言った。


 俺は警戒し、背の剣に手をかけた。

 それを見た魔王はニヤリと口角を上げると、


「我を攻撃するつもりか? 怪我をするのはこの娘だぞ」


 と、先制して警告した。


 俺は舌打ちし、剣から手を離す。せめてもの反抗で、魔王を睨みつけることしかできない。


 魔王は「それでよい」と言い、語り出す。


「いいか、勇者。ゲームには各所に『イベント』というものがあるのだよ。」


 ――イベント?


「わたしが楽しむためのイベントだよ。この娘が死ぬ原因ともなったイベントがな」

「……っ! じゃあ、ムギちゃん殺しの犯人はお前だってのか!」

「さあな……。それと、死んでしまったのはこの娘だけではなさそうだぞ?」


 魔王は不敵に笑うと、俺に近づき耳元で囁く。


「なあ勇者よ。昨晩は、や(・)け(・)に(・)静(・)か(・)だ(・)っ(・)た(・)と(・)思(・)わ(・)ん(・)か(・)?」

「……ま、まさか」


 魔王はまた後ろへ下がり、再び話を再開する。


「さて、三つヒントをやろう。ひとつは、お前らの話している〈STATUS〉だが、表示されないものもある――それは、プログラム上フォローされない部分だ。ふたつ、ゲームのイベントを起こすには、順序というものがある。そして最後に、魔女の子に制約などない。〈プレイヤー〉と同等の権利を有している」


 ということは、今回のイベントを動かしているのも魔女の子が……?


「我は絶対にクリアできないようなゲームは作らぬ。隅々まで探索し、ゲームをクリアしてみせよ。ゆとりのお前にとっては、攻略本も攻略サイトもない世界で、クリアしろというのは厳しいかもだが」


 魔王はクスクスと笑った。


「……俺は、元からそんなもの見ねぇよ」

「はっ。なら、さっさとクリアするんだな。まだ我が子に会えもしていない癖に」


 俺は言い返せなかった。


「じゃあな、勇者。今回だけは特別に我が直々にヒントをやったが、今後はもうない。今回だけは特別だ。ま、『チュートリアル』というやつだな」


 魔王がどこかへ行ってしまいそうな気がして、俺は「待て!」と、慌てて呼び止めた。


「なんだ? 答えを教えろと言うのか?」

「違う。ひとつ疑問があるんだ」

「ふむ、答えてやるか」


 魔王は面倒くさそうな顔をしながらも、聞く姿勢になってくれた。


「お前は俺の何度もやり直せる力を知っている……よな。でも、どうして魔女の子……手下にはそれを教えないんだ? お前の肩を持つ気はねぇが、情報を共有しないのは、その……不利じゃないか?」


 魔王の目的は未だに曖昧だ。俺は少しでも真相に近づけないかと、そう聞いた。


 魔王は少し黙って、こう答える。


「ただでさえ、最終ボスである我がすべてを知っているのだ。我が子と情報を共有したら、それこそお前らが圧倒的不利になるだろう? それはゲームとしてつまらない。補足だが、お前の力の影響を受けないのは、プログラムに干渉でき、プログラムを鑑賞できる者だけと決まっているのだ。それ以上データを追加しようものならパンクしてしまうよ。何事にも限度があるのだ」


 魔王は微笑し、


「我はできる限り、お前とフェアでいたいのだよ」


 と言った。


「さて、もうよいか。我もそろそろ疲れてきた。こうして離れて会話をするのは、結構疲れるものなのだよ」

「……ああ。せいぜい魔王城でビビりながら待ってろ」

「ククク、相変わらず威勢だけはよい奴よ」


 またな、勇者よ、と言い残し、魔王はいなくなってしまった。

 すると、急に風が顔を撫でた。時間が動き出したんだ。


「……ニャ? あれ? ウチ、どうしてたんだっけ?」


 同時に周りも意識が復活し、みんな揃って困惑した顔をしている。


「What?  I fell asleep?」

「僕も眠ってしまっていたんだろうか……? すまない」

「……あれれ? なのですよ」


 さっきまでの状況を説明したいところだったが……やはり、話そうとすると言葉が出なかった。


 さて、どうしたものか……と考えていると、ソラちゃんが口を開いた。


「……お姉ちゃん。間違えて眠り魔法でもかけてたんじゃない? 前もやったことあるじゃない」


 ……ね、眠り魔法?


 俺はムギちゃんを見た。ムギちゃんはポン、と手を合わせた。


「あ! そうかもー!  実は〈ミライヨチ〉と眠り魔法の〈ネムリウラナイ〉って、近くにあるんだよね。スキルの選択、間違えたのかもニャ」


 えへへーとムギちゃんは頭をかいていた。

 なんとかこの場は過ごせたようだ。今回は、過去のムギちゃんのドジに助けられたぜ。


「でも、ウチらラッキーだよ! これ、成功率30パーセントなんだ!」


 ムギちゃんは右手で三の指、左手でゼロの形を作ってみせて、笑った。


 そんな姿を見せられてしまっては、呆れるよりも先に、みんなの笑顔がこぼれていた。


 ――絶対に、ムギちゃんを守りきらないと。


 俺は、心の中で強く誓った。

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