第13話・ソラちゃんも、一筋縄じゃいかないぜ
村の中央にある銅像の前に座り込みながら、俺らはさきほど購入したソフトクリームを食べていた。
「ずいぶんとデカい銅像だよな、これ」
「村長らしいのです。とってもおじいちゃんなのです」
「自分をBronze statueにしちゃうなんて、憧れるな!」
「憧れるのか……。僕にはわからない感情だ」
なんだか、こんな感じでこのままおいしい物でも食べながら、こうして雑談していたい気分になるが、そうもいかない。
本題に入るとしよう――と思った時だった。
「ニャニャ! アンタもしかして、ウワサの勇者かニャ!?」
ムギちゃんが声をかけてきた。
その後ろには――ソラちゃんの姿が。
「……っ!」
ソラちゃんの、怒りに狂った姿が脳内に呼び起こされる。すぐに振り払うように、一度強く目を瞑った。
「勇者御一行あろう者が、こんなところにタムろしてアイス食べてるとか、ニャンかガラ悪いニャー」
そう言って、ムギちゃんはケタケタと笑った。
今の時点では、ムギちゃんはとても元気だ。
だが、今晩にはムギちゃんは死んでしまう。
「ニャ〜。悪かったニャ。そんな顔しニャいでほしいニャ」
俺は難しい顔をしていたのか、ムギちゃんは眉を八の字にしてそう言った。
「いや、ごめん! 別に気を悪くしたとかじゃねぇよ。ちょっと、考え事してて」
俺は慌ててそう言い訳した。
ムギちゃんは安心したようで、笑顔に戻った。
「ならよかったニャ〜。あ! 自己紹介がまだだったね。ウチはムギ! で、こっちが妹のソラ!」
俺にとっては、そんなことは十分知っているが……ムギちゃんとソラちゃん……そして、この三人もお互い初めましての状態なんだよな。
「あ! そうだ! ここで会ったのも何かの縁だし、〈フレンド〉にニャっとこ!」
そう言って、ムギちゃんは右手を差し出した。俺も右手を出そうとして、慌ててそれを引っ込めた。
もし、本当に俺が原因だとしたら、またムギちゃんがこれをきっかけに死んでしまうかもしれない。
「……ニャ。嫌、なの?」
ムギちゃんが途端に悲しそうな表情を浮かべる。
「ごめん! 今はまだできない理由があって……」
俺はそんなことないと、両手を全面に振って否定した。
「もしかしたら、俺のせいで……」
「……ニャ? 俺のせい?」
「ええと……」
――そうだ。ここは正直に、俺の〈SKILL〉について話そう。
俺らの死はソラちゃんの暴走によるもの……そして、ソラちゃんの暴走の原因は姉の――つまり、ムギちゃんの死だ。
ムギちゃんの死さえ回避できれば、この先へ進めるかもしれない。
ムギちゃんとともに行動すれば、死の原因がわかるはず。もしかしたら、今回ムギちゃんを救える可能性だってありえる。
そうとなれば、二人には俺らと共にいっしょに行動してもらったほうが都合がいい。
そう結論づけて、俺はムギちゃん、ソラちゃんに言う。
「二人とも、今日は俺らと付き合ってくれ!」
目の前の姉妹は、不思議そうな顔をして、互いの顔を見合わせ、対象的に首を傾げた。
◇
「ふんふん。なるほどニャー。ユータは、そんな特別な力を持っているんだね」
まず、自身の持っている〈SKILL〉についてムギちゃんとソラちゃんに、現状わかっている限りのことを話した。
「ああ、そうだ。……で、俺はここにきてからすでに二回繰り返している」
ほかの五人をそれぞれ見ながら話す。
「一周目は浜辺の岩穴で眠っている間に死んじまったみたいで、セーブ地点に戻ってきた。二周目は野宿を避けたが……」
俺は、ソラちゃんを横目で見た。
ソラちゃんは視線を感じるや、静かに身構えていた。
やはりソラちゃんはこの時点で、すでに俺にまとう“魔女の匂い“ってのに、気づいてる。
「――二周目は、魔獣との戦いから逃げるために、自決した」
俺は、そこだけ説明をごまかした。
ソラちゃんがマキとリアムを殺し、そして俺らも殺そうとしてきたので逃げた――なんて言ったら、マキとリアム、そしてケンも、ムギちゃんとソラちゃんに敵意を持ち、信用しなくなるだろう。
ソラちゃんが孤立する可能性だってある。
それに俺は、嘘をついているわけじゃない。ソラちゃんの召喚した魔獣から逃げたのは、事実なのだから。
物は言い様ってやつだ。
「一周目はなぜ死んでしまったのかわからない。ひとつ考えられるのは、眠っている間に魔獣にやられたのかもしれないってことだ。二周目、その時間起きていたときに、魔獣と出会ったから」
みんなには魔獣と言っているが、実際のところ、一周目の可能性として、ゲームオーバーの原因を上げるとしたら、野宿した俺らは、ソラちゃんに殺された。
一周目の時も、俺はムギちゃんの手に触れている。それが原因かは不明だが、ムギちゃんが命を落としてしまい、狂乱したソラちゃんは復讐するために、野宿していた俺らを見つけ殺害した。
ケンはきっと戦ってくれていたのだろうが、HPエネルギーを魔力に変換して攻撃するソラちゃんに敵わず、やられてしまったんだと思う。
「……んで、おそらくだが、一周目も二周目も共通して言えることがある」
俺はムギちゃんを見た。
「ムギちゃんは、その日の夜に死んじまうってことだ」
ムギちゃんは「……え」と声を震わせた。同時に、ソラちゃんの目つきが鋭くなる。
「原因はわからねえ。だけど、考えられる原因としては……」
俺を睨むソラちゃんに、視線を返す。
「――魔女の呪い、だろ? ソラちゃん」
ソラちゃんは言われると思ってなかったのか、大きく目を見開いた。
「感じるんだろ、俺から魔女の匂いが」
ソラちゃんは真っ直ぐ俺を見つめ、答える。
「……臭いの、自分でもわかってたのね」
「その臭いって言い方は控えてほしいかなーなんて。お兄さん、割と傷つきやすいんだぜ?」
俺は、ソラちゃんの敵意を少しでも解かせないかと、笑いかけた。
「臭いのは事実だから、変える気はない。ユータ、自覚しているのなら、決してお姉ちゃんに指一本と触れないで」
ソラちゃんは、ムギちゃんの前に立った。
「本当は、今すぐこの場を離れたいけれど、話の続き、聞いてあげる。どうやらあなたは、悪い魔女ではないみたい」
ソラちゃんはそう言ってくれた。
「……初めから、一本道でここまで来れていればよかったんだがな」
ソラちゃんも、一筋縄じゃいかないぜ。




