第8話・いや〜、姉妹って最高だな
まだ、後頭部がジンジンする。
これがアニメだったら、絶対頭に大きなタンコブが描かれているぜ。
昼食を食べたあとは、ギルドの外へ出て島を探索してみたが、何も収穫はないまま夜を迎えてしまった。
一体、ドンキーフールって奴はどこに隠れてやがるんだ。
やはり占いの言葉に従い、ひとつずつその『絡まった運命の糸』とやらを解かなくてはならないらしい。
そうなるとまずは……昨晩、眠っている間に死んだ理由を判明させないとな。
俺らは、前回お金が足りず泊まれなかったあの宿屋に来ている。
宿屋に入る前にゴールドの残額を確認する。よし、ちゃんとあるな。
今回ばかりは、リアムもお金を勝手に使うなんてことしなかったみたいだ。
「I'm hungry〜」
……おかげで腹は空いてるみたいだが。
いや、すでに結構食べてるはずなんだけどなぁ。
まあいい。
宿屋で受付を済まし、俺らは二階の部屋へ向かう。
――そういや、よくRPGの画面だとベッドがひとつしかなくて、勇者一行はそこで眠るって感じだけど、この場合どうなるんだろう。まあ、そもそもゲームの表示は勇者ひとりしか映ってないのでなんら違和感はないのだが、実際のところ、仲間を引き連れているんだもんなぁ。
俺は、ひとつのベッドに四人で眠る姿を想像した。
真ん中でマキが「お、押し潰されちゃうのです〜!」と叫んでいるところまで、容易に想像できてしまった。
ま、さすがにそんなことないだろうけどな。
さすがにそこはVRゲームの世界。ちゃんと人数分のベッドがあるだろう。
「ニャニャ! ニャンとまた会っちゃったね!」
部屋に入ろうとした時、隣の部屋からちょうど顔を出したのは、なんとムギちゃんだった。
「ムギちゃん! ムギちゃんたちもここに?」
「うん! 家があるわけでもニャいからねー。普段はここで寝泊まりしてるの!」
ムギちゃんの後ろから、ひょっこりとソラちゃんも顔を出した。
ソラちゃんは、訝しげに俺を見ている。な、なんだ……? やっぱり臭いのか……?
しかし、それよりも重要なのが。
「ニャンだニャ? そんなに見て?」
――二人のパジャマ姿が愛くるしい!!
お揃いの白猫をモチーフにしたパジャマは、二人によく似合っていた。
しかも服の穴から尻尾はちゃんと見せる――魅せるような仕様になっている。
一部アシンメトリーに仕上げているのは、お姉ちゃんのムギちゃんはショートパンツ、妹であるソラちゃんはロングスカートなところだ。
「いや〜、姉妹って最高だな」
「ユータ、やっぱりPervert……」
「勇者様、情けないのです」
「…………」
横にいる三人の冷たい視線とムギちゃんからの「ユータ、キモい奴だー!」という笑顔の侮辱を受けて、いよいよ俺らは自分の泊まる部屋へと入った。
中は結構広々としていた。トイレと風呂のスペースはちゃんと別々に備えつけられており、いくつかの家具や家電も揃っていた。これだけあれば、十分に宿屋でも生活していけそうだ。
そしてベッドもちゃんと二台あった――ん、待てよ、二台!?
俺たちは四人だ。残り二台足りない!
ベッドのサイズはキングサイズが二つ……これは普通に考えて、二対二に分かれて眠ることになるよな……。
俺はチラリとマキを見た。
――つまり、男三人で、誰かひとりが女子と添い寝することになる!! むしろ添い寝が、できる!!
俺はひとつ咳払いをし、リアムとケンと頭を突き合わせる。
「……よし、聞け男ども。ベッドはふたつしかない。こん中で、誰かひとりがマキと眠ることになるわけだが、そこでだ。ここは――」
「じゃあ、わたしはここで眠らせてもらうのです」
俺が話している途中で、マキはひとりでひとつのベッドに寝転がった。
「……え? ……え? あの、マキさん?」
マキは身体を起こして俺を見た。
「あの〜。俺の勘違いならいいンスけど、まさかそこにひとりで眠るおつもりですか?」
マキは被っていた帽子を脱いで枕元に起きながら、「それはそうなのです」と言う。
「わたし、女の子なのですよ。まだお付き合いしていない方と、同じベッドはメッ、なのです」
――うむ。なるほど、ごもっともな意見だった。
……というわけで。
結局、その日の夜、ひとつのベッドに男三人という最悪の状態でベッドにつくことになった。
「な、なんで俺が真ん中なんだよ……!」
――サンドイッチにされるなら、ムギちゃんとソラちゃんがよかったぜ。
そう思った瞬間、寝相の悪いリアムの腕が、俺の顔面に直撃した。




