第6話・君は、そうやって僕に勝ったんだろう?
「おはよう……ん?」
目を覚ましたら、太陽がサンサンと輝いていた。
昨夜はぐっすりと眠れた――ということでは決してない。なぜなら、目の前の景色は、岩穴の先に見える海ではなく、屋台で賑わい活気に溢れている〈ノスティモ村〉の光景だったのだから。
「Awesome! I want to stay here forever!!」
聞き覚えのあるリアムの歓喜の声を聞いて、胸の奥底から恐怖が湧き上がってくる。
「ユーマ。何をおはようなどと寝惚けたことを言っている。今はもう昼だぞ」
隣でケンはそう言った。
「なあなあ、ユータ! あれ美味しそうだぞ! 食べよう!」
リアムが屋台を指差しながらそう声をかけてきた。
「……あ、ああ。そう……だな」
――昨日と、まったく同じだ。
「わーいなのです! わたし、あのソフトクリームみたいなのが食べたいのです!」
俺はただ、呆然と立ち尽くすばかりだった。
前回と、まるで同じやり取りが目の前で繰り広げられている。
――戻ってきてしまった。
でも、どうして?
リアムとマキは先にソフトクリームの屋台に並びに行ってしまった。
残された俺とケン。俺は、リアムとマキの様子を見つめながら聞く。
「……なぁ、ケン。昨晩、何が起こったか知ってるか?」
ケンは戸惑いを見せた。
「……昨晩とはなんの話だ? 昨晩は、ただ船の中で過ごしただけだろう」
「船の中で……?」
〈アンノウンダイチ〉から〈バンゲッデトウ〉まで、俺らは船に乗り、海を渡って来た。だけど、それは一昨日の話――否、違う。
今となっては、昨日の話か。
みんな、何も覚えていない。この先起きたでき事は、すべて記憶がリセットされている。
〈ロード〉なんてもちろんしていない。
――俺は、昨夜眠っている間に死んだんだ。
だからこそ今、最後にセーブした地点へ戻ってきている。
――『……絡み合った運命が、この者たちを阻んでいる』
ふと、ムギちゃんの占いの言葉が、脳内でリフレインされる。
――『死の輪廻から、抜け出すのだ』
占いのとおりなら、俺は今、その『死の輪廻』とやらに嵌っているんじゃ……。
――『まず、ひとつずつその運命の糸を解いてゆけ』
――『解いた先に、巨人待つ。巨人を打ち倒すことできれば、出口ある光に一歩近づくだろう』
もしかしたら、この死の原因を解明させて乗り越えないことには、ドンキーフールまで辿り着けない……ってことなのか。
そもそも、なぜゲームオーバーしたんだ?
眠っている間に、モンスターに襲われたか?
それか、魔女の子が俺らを見つけて殺したか?
――いずれにせよ、ケンひとりにすべてを任せてしまったんだ。
ケンは、どんな思いをしたんだろう。
「…………ごめん、ケン」
突然の謝罪に、ケンは困りきった顔をしていた。ケンの記憶はなくなってしまっているのだから、当然の反応だとは思うけれど。
「……そうか、わかった。これは二度目の世界なんだな」
「…………」
「だが謝るな、ユータ。僕は、何も覚えていないのだから」
「……でも」
「気負うな、ユータ。失敗したなら、やり直せばよいだけだ」
ケン微笑むと、
「君は、そうやって僕に勝ったんだろう?」
と、言ってくれた。
少しだけ、心が軽くなった。
「……お前に励まされるとは、思ってもみなかったぜ」
「こういうときは、素直にありがとうじゃないのか」
――まさか、こんな早くに言い返されるとはな。
「ああ。ありがとよ、ケン」
俺はぐーっと大きく背伸びをし、前を向く。
「腹が減ってはなんとやらだぜ! 飯食って元気出して、そんでゲームオーバーの理由を突き止める!」
俺は、マキ、リアム! 俺の分もよろしく頼むぜー! と声をかけながら、二人の元へと走った。




