↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第二章・バンゲッデトウ
28/134

第5話・金がないなら出ていくんじゃな

「くさいって言われた、くさいって言われた、くさいって言われた、くさいって――」

「ゆっ、勇者様! 元気出すのです!!」

「そ、そうだユータ! 聞き間違いかもしれない!」


 あのあと、ムギちゃんたちと別れ、ギルドで情報収集をしたが、結局魔女の子――ドンキーフールに関する情報は一切得られなかった。


 それよりも俺は、ソラちゃんに「くさい」と言われたことのダメージが大きく、まったくそれどころではなかった。


 もう日も落ちるというのに、引きずりまくりである。


「ケ、ケン……。俺、くさいかな?」


 ケンは俺の首元を嗅ぐと、


「ふむ。汗くさいな。まあ、冒険していればそれが普通だろう」


 と、答えた。


「やっぱ俺くさいんだ……」


 さらに肩を落とした。

 マキとリアムは必死に俺の背中を撫でて励ましてくれた。


「……Hey!Don't say that!」

「そうなのです! 時には嘘をつくことも大事なのですよ!」


 二人の言葉がさらに俺の心を抉った。お前ら、それ遠回しに『くさい』って言ってるようなもんだからな。


「あー! そんなことよりなのです! もう真っ暗になるし、今夜はもう寝て休むのです!」


 マキは話を変えるように大きな声で言った。


 ……うん。俺もいつまでも落ち込んでないで、前を向いて生きよう。


「そうだな。俺も、もう気持ちを切り替えるよ。さっさと宿屋に行って、すぐに風呂に入るぜ!」

「エイエイオーなのです! その意気なのですよ!」


 今日は特に大きな収穫はなかったが、体力満タンにさせて明日また頑張ろう。


 俺らは、村にある宿屋に移動した。


「すみません。ここで一泊したいんですが」


 俺が尋ねると、受付のカウンターの奥から老齢の男性がひょっこりと顔を出した。


「はいはい。500ゴールドね」


 俺は言われたとおりの金額を出そうとした。


「……あれ?」


 ゴールドの残高を確認すると、もうすでに300ゴールドしかなかった。 ……さっきまであったと思うんだが。


「Sorryユータ! さっきお腹すいて、ゴハンたべた!」


 えへへ〜と、リアムは頭を掻きながら言った。


 ――いや、お前ふざけてんのっ!? ってか、いつの間に、俺の懐からゴールド取り出して食ってんの!?


 呆れ返って、溜息しか出なかった。


「……リアムは論外として、ほかにゴールドを所持している方」


 俺が聞くと、マキにもケンにも、目を逸らされた。


 …………。


 俺は、ゴマすりをしながら受付の男性に擦り寄る。


「あの〜……宿泊代を300ゴールドまで負けてもらえるなんてことは――」

「金がないなら出ていくんじゃな」


 バッサリと切り捨てられ、俺らは宿屋から締め出されてしまった。

 武具屋の時と、まったく同じ展開である。


「Oh well……今夜はノジュクしかないな!」

「リアム、それはお前が言うんじゃねぇ!!」


 お金がなくてはしかたない。


 俺らは村の入口前にある浜辺を歩きながら、ちょうどよい岩穴を見つけ、そこで過ごすことにした。


「〈ホムミ〉!」


 マキは呪文を唱え、木の枝の山に火がつけた。簡易的な焚き火の完成である。岩穴がオレンジ色の光で照らされ、気持ちをリラックスさせてくれた。


「ポカポカ〜ってやつだな!」


 リアムは焚き火に手をかざしながら言った。


「そうなのです。これで、少しは虫除けにもなってほしいのですが……。さっきから蚊が飛んでいて嫌なのです……」

「海辺だもんな……。宿に泊まってりゃ、こんなことないんだが」


 俺はそう言って岩壁に背を預けた。


「あとはただ日が昇るのを待つだけ……だが、その間にモンスターが現れないかだけか不安だな。仮に寝込みを魔女の子に襲われるなんてことがありゃ、最悪だぜ。村の中だったら、少なくともモンスターは出ないから、安心なんだけどなー」

「村で野宿しようとしたら、すごく怒られたのです……」


 この世界のルールでは、村で寝泊まりする行為は禁止のようだ。焚き火を焚いて野宿の準備をしていたら、村人に見つかり、強制的に村の外へ追い出されてしまった。というより、追(・)い(・)出(・)さ(・)れ(・)る(・)よ(・)う(・)に(・)、(・)俺(・)ら(・)の(・)身(・)体(・)が(・)勝(・)手(・)に(・)動(・)い(・)た(・)。そういうシステムなのだろう……元々ある、ゲームのイベントなのかもしれないな。

 そんなわけで、宿屋からも追い出され、しまいには村からも追い出されてしまったわけだ。


そんな俺らの会話を聞いてか、岩穴の入口付近で座るケンは、外を眺めながら、


「モンスターのことは気にしなくていい。ここは僕が見張ってるから、君らはゆっくり休め」


と言った。


「なんだよ、そうやってお前ばかりカッコつけやが……ふあぁ」


 言っている途中で欠伸が出てしまった。身体は正直なのである。

 不眠で死ぬことなんてこの世界ではないだろうが、俺の意思は睡眠を求めていた。


「僕は大丈夫だ、ユータ。僕みたいなのは、人間よりも睡眠を必要としないから」


 俺は重くなっていく瞼に逆らえず、ケンの言葉に甘えることにした。


「Good night……みんな……」

「おやすみなので……スゥ〜……」


 俺は二人が眠りにつくのを見て、


「おやすみ」


 と、返して眠りに落ちた。




◇




 次の日の朝。

 俺は目を開けると、〈ノスティモ村〉の入口に立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。