第19話・この名前は、ずっと大事にする
「パー……ティー……?」
狼男は目を丸くした。
「えーっと……つまり、仲間になれってことだ! 俺らといっしょに、冒険しろってこと!」
俺が言うと、狼男はますます理解できないという顔をした。
「Cool! ユータなら、ソーユーこと、言うんじゃないかって思った!」
リアムは俺の肩に手をかけながら言った。
「わたしも、勇者様の意見に賛成なのですよ」
マキも俺に笑いかけ、狼男へ視線を移動する。
「あなたは――自分のことを弱いと言いましたが、それは違うと思うのです。あなたは、とっても優しい心を持っているんだと思うのです」
マキは「ねっ、勇者様」と言った。
俺は頷く。
「……ああ。魔王の配下の癖して、魔王の考えが理解できないほどに、お前は普通にいい奴だよ」
狼男は目を見開いて、また俺らを睨みつけた。
「……考えが読めない。貴様、どういうつもりだ。敵である僕を仲間に入れるなど――」
お前の言うとおり。本当、俺はどういうつもりなんだろうな。
「お前さ、魔王を止めたいんだろ。俺らだって同じだ。魔王がこの世界を終わらせようというのなら、俺らはそれを絶対に止めなきゃならねぇ。どうせ目的が同じなら、いっしょに俺らと行こうぜ。仲間は多いほうがいいだろ?」
狼男はまだ俺たちを怪しんでいる。
「僕は敵なんだぞ。そんなのを仲間になんて、信用できないだろ!」
「――ああ、信用できねぇ」
狼男は眉間に皺を寄せ、苛立ちを見せる。
「だからさ、お互い信頼しあえるように上手いことやっていこうぜ」
俺は右手を差し出した。
狼男は半歩身を引いて、俺らの顔を順番に眺め、一瞬右手を持ち上げたが、しかし、また後ろへ引っ込めてしまった。
俺は、そんな優柔不断狼男に、言う。
「……ってかさ、どっちみち!お前に選ぶ権利なんてねぇんだよ。敗者は勝者に従う、なんだろ?」
狼男は「……そう、だったな」と、ようやくその目元を緩め、俺の手を握り返した。
「今日から敵ではなく仲間だ。よろしく頼むぞ。勇者……」
狼男は言葉を詰まらせた。
ああ、そうか。
「――ユータだ。勇者でもユータでも、好きに呼べ」
続いて、マキとリアムも、
「マキなのです」
「オラはリアムだ!」
と名前を述べた。
狼男はひとりひとり目を合わせながら、「ユータ、マキ、リアムだな」と名を繰り返し、呟いた。
「……えーっと。ところで、そういやお前の名前って?」
魔女の子の話を聞いている時も、狼男の名前は出て来なかった。
前に〈STATUS〉を見たときも、『???』となっていて、わからないままだったし。
俺が聞くと、狼男は困ったように眉を下げた。
「それが……名前はないんだ。魔王様は僕らに名前をつけることはしなくてだな……。他の奴らは自分で自分の名を決めて名乗っているのだが、僕はその…名前というのが思いつかなくて……」
そのあたりは、各々のキャラクターに投げやりなのか……。今更な感じだが、ゲームのキャラクターが自我を持って、喋って行動しているって、冷静に考えるとすごいよな……AIの進歩には感心する。ゲームの中に閉じ込めるってのは褒めらねぇけどな。
話を戻すが、この狼男には名前がないらしい。名前がないのは不便だしな――よし、ここはひとつ、俺が名づけ親になるとしよう!
「だったら、お前の名前は――ケンだ!」
狼男――改め『ケン』は、耳をピンと立てた。
「How come?」
リアムが聞いてきたので、俺が胸を張って答えようとすると、
「……もしかして、〈拳銃使い〉だから『ケン』なのですか?」
と、マキが口を挟んだ。
……はい。大正解です。
「タンジュンだな、ユータは〜」
「ぐぬぬ……。じゃあ、リアムだったらなんてつけるんだよ!」
「……Wolf・Handgun」
「お前もそのまんまじゃねぇか!」
そんなやり取りに笑い声が混じった。
ケンは、俺たちを見て笑顔を見せていた。
「楽しそうだな……君たちは」
その場の空気が、途端に和み出した。
「ユータ、その名前気に入った。これからはケンと名乗らせてもらう」
俺はリアムにドヤ顔してみせた。リアムは、はいはいと言った感じであしらう。
「ケンは言いやすいし、ケッキョクそれがBestだ」
「決まりなのですね。わたし、今後はケンちゃんって呼ばせてもらうのです!」
「ああ! ……って、マキ、コイツにだけちゃんづけなんて、どうして!?」
これは聞き捨てならなかった。
コイツだけ俺らと違ってちょっとクールでカッコイイ雰囲気があるからなのか。それとも、大人な魅力が出ている感じが女子心をくすぐるからなのか。
「……んー。そんなに深い意味はないのです。ケンちゃんの語呂が好きだし、かわいいからなのです」
――そうかそうか! なら、俺としては安心だぜ!
「……だそうだ、ケン! 残念だったな! ちょっとイケメンだからって調子乗んなよ!」
「僕は別に何もしていないし、なんのことやらなんだが……まあいい」
ケンは俺を見つめると、微笑んだ。
「――ありがとう、ユータ。この名前は、ずっと大事にする」
俺は気恥ずかしくなって頭を掻いた。
そんなこんなで、新たな仲間――〈拳銃使い〉のケンを迎え入れ、四人パーティとなった俺たち。
残る魔女の子は三人。
魔王への道のりは、まだまだ長そうだ。
先のことを考えると、正直心が折れそうになるけど、仲間といっしょなら、大丈夫。
どんなに無謀な試練が来ようとも、俺は〈SKILL〉を使って、何度だって立ち上がってやる。そんで、いつか絶対に乗り越えてみせる。
粘り強さなら、誰にも負けねぇ。
せいぜい胡座をかいて待ってろ、魔王。
超絶強くなって、お前をボコボコにしてやるからな!
「――どんなことがあっても、全力でぶつかってくぞ! お前ら!」
俺たちは四人ら手を重ね、息を合わせ、鼓舞する。
「「「「エイ、エイ、オー!」」」」
天に向かって手を振りあげ、俺たちは空高く叫んだ。




