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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第一章・アンノウンダイチ
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第19話・この名前は、ずっと大事にする

「パー……ティー……?」


 狼男は目を丸くした。


「えーっと……つまり、仲間になれってことだ! 俺らといっしょに、冒険しろってこと!」


 俺が言うと、狼男はますます理解できないという顔をした。


「Cool! ユータなら、ソーユーこと、言うんじゃないかって思った!」


 リアムは俺の肩に手をかけながら言った。


「わたしも、勇者様の意見に賛成なのですよ」


 マキも俺に笑いかけ、狼男へ視線を移動する。


「あなたは――自分のことを弱いと言いましたが、それは違うと思うのです。あなたは、とっても優しい心を持っているんだと思うのです」


 マキは「ねっ、勇者様」と言った。

 俺は頷く。


「……ああ。魔王の配下の癖して、魔王の考えが理解できないほどに、お前は普通にいい奴だよ」


 狼男は目を見開いて、また俺らを睨みつけた。


「……考えが読めない。貴様、どういうつもりだ。敵である僕を仲間に入れるなど――」


 お前の言うとおり。本当、俺はどういうつもりなんだろうな。


「お前さ、魔王を止めたいんだろ。俺らだって同じだ。魔王がこの世界を終わらせようというのなら、俺らはそれを絶対に止めなきゃならねぇ。どうせ目的が同じなら、いっしょに俺らと行こうぜ。仲間は多いほうがいいだろ?」


 狼男はまだ俺たちを怪しんでいる。


「僕は敵なんだぞ。そんなのを仲間になんて、信用できないだろ!」

「――ああ、信用できねぇ」


 狼男は眉間に皺を寄せ、苛立ちを見せる。


「だからさ、お互い信頼しあえるように上手いことやっていこうぜ」


 俺は右手を差し出した。

 狼男は半歩身を引いて、俺らの顔を順番に眺め、一瞬右手を持ち上げたが、しかし、また後ろへ引っ込めてしまった。

 俺は、そんな優柔不断狼男に、言う。


「……ってかさ、どっちみち!お前に選ぶ権利なんてねぇんだよ。敗(・)者(・)は(・)勝(・)者(・)に(・)従(・)う(・)、なんだろ?」


 狼男は「……そう、だったな」と、ようやくその目元を緩め、俺の手を握り返した。


「今日から敵ではなく仲間(とも)だ。よろしく頼むぞ。勇者……」


 狼男は言葉を詰まらせた。

 ああ、そうか。


「――ユータだ。勇者でもユータでも、好きに呼べ」


 続いて、マキとリアムも、


「マキなのです」

「オラはリアムだ!」


 と名前を述べた。


 狼男はひとりひとり目を合わせながら、「ユータ、マキ、リアムだな」と名を繰り返し、呟いた。


「……えーっと。ところで、そういやお前の名前って?」


 魔女の子の話を聞いている時も、狼男の名前は出て来なかった。

 前に〈STATUS〉を見たときも、『???』となっていて、わからないままだったし。


 俺が聞くと、狼男は困ったように眉を下げた。


「それが……名前はないんだ。魔王様は僕らに名前をつけることはしなくてだな……。他の奴らは自分で自分の名を決めて名乗っているのだが、僕はその…名前というのが思いつかなくて……」


 そのあたりは、各々のキャラクターに投げやりなのか……。今更な感じだが、ゲームのキャラクターが自我を持って、喋って行動しているって、冷静に考えるとすごいよな……AIの進歩には感心する。ゲームの中に閉じ込めるってのは褒めらねぇけどな。


 話を戻すが、この狼男には名前がないらしい。名前がないのは不便だしな――よし、ここはひとつ、俺が名づけ親になるとしよう!


「だったら、お前の名前は――ケンだ!」


 狼男――改め『ケン』は、耳をピンと立てた。


「How come?」


 リアムが聞いてきたので、俺が胸を張って答えようとすると、


「……もしかして、〈拳(・)銃使い〉だから『ケン』なのですか?」


 と、マキが口を挟んだ。

 ……はい。大正解です。


「タンジュンだな、ユータは〜」

「ぐぬぬ……。じゃあ、リアムだったらなんてつけるんだよ!」

「……Wolf・Handgun」

「お前もそのまんまじゃねぇか!」


 そんなやり取りに笑い声が混じった。

 ケンは、俺たちを見て笑顔を見せていた。


「楽しそうだな……君(・)た(・)ち(・)は」


 その場の空気が、途端に和み出した。


「ユータ、その名前気に入った。これからはケンと名乗らせてもらう」


 俺はリアムにドヤ顔してみせた。リアムは、はいはいと言った感じであしらう。


「ケンは言いやすいし、ケッキョクそれがBestだ」

「決まりなのですね。わたし、今後はケンちゃんって呼ばせてもらうのです!」

「ああ! ……って、マキ、コイツにだけち(・)ゃ(・)ん(・)づ(・)け(・)なんて、どうして!?」


 これは聞き捨てならなかった。

 コイツだけ俺らと違ってちょっとクールでカッコイイ雰囲気があるからなのか。それとも、大人な魅力が出ている感じが女子心をくすぐるからなのか。


「……んー。そんなに深い意味はないのです。ケンちゃんの語呂が好きだし、かわいいからなのです」


 ――そうかそうか! なら、俺としては安心だぜ!


「……だそうだ、ケン! 残念だったな! ちょっとイケメンだからって調子乗んなよ!」

「僕は別に何もしていないし、なんのことやらなんだが……まあいい」


 ケンは俺を見つめると、微笑んだ。


「――ありがとう、ユータ。この名前は、ずっと大事にする」


 俺は気恥ずかしくなって頭を掻いた。



 そんなこんなで、新たな仲間――〈拳銃使い〉のケンを迎え入れ、四人パーティとなった俺たち。


 残る魔女の子は三人。

 魔王への道のりは、まだまだ長そうだ。


 先のことを考えると、正直心が折れそうになるけど、仲間(コイツら)といっしょなら、大丈夫。

 どんなに無謀な試練が来ようとも、俺は〈SKILL(この力)〉を使って、何度だって立ち上がってやる。そんで、いつか絶対に乗り越えてみせる。


 粘り強さなら、誰にも負けねぇ。

 せいぜい胡座をかいて待ってろ、魔王。

 超絶強くなって、お前をボコボコにしてやるからな!


「――どんなことがあっても、全力でぶつかってくぞ! お前ら!」


 俺たちは四人ら手を重ね、息を合わせ、鼓舞する。


「「「「エイ、エイ、オー!」」」」


 天に向かって手を振りあげ、俺たちは空高く叫んだ。

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