↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
第一章・アンノウンダイチ
22/134

第18話・俺らとパーティをー組め!

「魔女は、この世界に突然現れた。

理由はわからない。知る者はどこにもいない。それはそれは、長い時間が経ってしまったからだ。


己の欲のままに生き、強大な力を手にした魔女は魔王となり、いつしかこの世界を手の内に入れた。


魔王は世界を恐怖に陥れ、破壊の限りを尽くした。


思いのままに生きていた魔王。だが、それを決して許さない者がいた。阻止しようと、立ち上がる者がいた。

それはのちに〈勇者〉と呼ばれるひとりの青年だ。勇者は魔王を打ち倒し、地の底へと封印した。二度と、魔王が目覚めぬように」


 リアムは頭の後ろで手を組みながら、「オキマリってやつで、ゲンザイは魔王がメザメました、だな」と言った。


「お決まり……?」


 狼男はリアムの言葉に疑問を抱いたようだった。『お決まり』がわかるのは、〈プレイヤー〉だけの話だもんな。


「……ふん。まあいい。そういうことだ。おそらく長年の時が経ち、封印の力も弱まったのだろう。そして、魔王様は復活した」


『おそらく』って……このへんは曖昧な表現だな。

 元々魔王がいる世界のゲームじゃないし……所々、設定の粗さがあるのか?


「再び目覚めた魔王様は、今度こそ、この世界を破壊しようと企んでいる。野望を確実なものとするために、魔王様は新たに僕たちを生み出した」

「――魔女の子、ですね」


 マキが言うと、狼男は頷いた。


「……そう呼ばれてるみたいだな。僕たちの使命はただひとつ、魔王に唯一対抗できる存在、〈勇者〉を倒すこと」


 狼男は俺を見た。


「魔王様は一度勇者に倒されている――だからこそ、早々に片づけたいとお考えなんだ」

「魔女の子にやらせて魔王は出てこないなんて、魔王ってのはCowardだな!」


 リアムが言うと、狼男は「そういうことじゃない」と呆れた視線をやった。


「魔王様は魔王城から出られないんだ。目覚めたばかりで今はとても衰弱なさられているから。……仮に、魔王様自らが貴様らを手にかけようものなら、一瞬で散りとなるぞ」


 確かに。現状、俺らのレベルは5しかない。そんな状態で魔王が目の前に現れたなら一瞬でお陀仏だ。クソゲーにもほどがある。


「僕らはそれぞれ各国にわかれ、〈勇者〉を待ち構えている。まず西の国――この〈アンノウンダイチ〉を担当していたのが、僕だ。


南の国、〈バンゲッデトウ〉をドンキーフール。


東の国、〈ヨシワラトウゲンキョウ〉をハンドレディ。


北の国、〈シロケシキノチ〉をグリムリーパー。


以上の僕ら四人の魔女の子が、魔王様の命により各国に配置されている。命令は〈勇者〉を殺せ、ただひとつ。それ以外は好きにしていいと言われている」


「……どれも元々このゲームにはいないキャラクターばかりなのです」と、マキは呟いた。


 つまり、AIが創り出したキャラクターってわけだ。


 すべては、〈勇者〉を殺すために。

 ……といっても、俺は殺されれば、またセーブ地点から何度でもやり直せるのだが、魔王はそれを知らないのか? ……いや、この世界を書き換えたAI(張本人)が魔王なら、知っていそうなものだが……。


 この剣を授けられた時も思ったが……、世界を書き換え、〈プレイヤー〉を閉じ込めた本人……ソイツを魔王とすると、わざわざこんな自分が不利になることをするわけがない。おそらく、世界に――プログラムに干渉できる人物が別にいるはずだ。


 もしかするとその存在(ひと)が、俺に〈勇者〉の力を与えたのかもしれない……なぜ、俺なのかはわからないが。


 その別の人物とやらの可能性があがるのは、〈紫苑街(シオンガイ)〉で聞いた、あの天の声だろう。あの人は、どこから語りかけていたのだろうか。

 現実世界? それともこの世界のどこかから?

 どちらにせよ、あの口振りから〈プレイヤー〉側の人だということはわかる。

 もう一度会って――会えなくとも、もう一度、話せないだろうか。


 そうこう考えているうちに、「――以上が、僕ら魔女の子と呼ばれるメンバーだ。僕らは魔王様の命令に従い、〈勇者〉の命を狙っている」と、狼男は話を締め括った。


 ある程度の事情はわかった。

 ハンドレディと出会ったとき、俺を見て頬を紅潮させたのも頷ける。


「命令を成し遂げた者には、魔王様の魔力を分けてもらえる。みな、その魔力(ちから)を求めて躍起になっているみたいだが……」


 狼男は一度言葉を切り、俯いた。


「……僕は、そんなことどうでもよかった。魔王様のやろうとしていることを、どうしても応援できなかった。なぜ世界を終わらそうと企むのか、理由も聞かされないまま、その計画に加担するのは、正直、不服に思っていた。どこか頭の片隅では、この計画を阻止しなければと思っていた」


 その声には、悔しさと無力さがこもっていた。


「だけれど、魔王様の命令には従うしかなかった。僕には、拒否する力なんてなかったんだ。僕は、魔王様の子なのだから」


 狼男は「でも、何よりも」と言い、顔を上げた。


「三人を――勇者を殺さなくちゃならないことが、本当は理由もわからず辛かった」


 狼男が、ようやく本音を洩らした瞬間だった。


「結局、僕は弱いだけなんだよ。こうして、勇者に倒され、情けをかけてもらうほどにな」


 狼男は話し終えると、俺の目を見た。


「さあ、話せることはすべて話したぞ。これから僕をどうする? このまま置いていくか? ――それとも、その剣でトドメを刺すか?」


 狼男は脱力した笑みを浮かべ、両手を広げた。


 マキとリアムは固唾を飲んで俺を見ている。

 俺は一歩、前に出て狼男と向かい合った。


 答えは、話を聞く前から決まっている。

 俺は、堂々とその答えを口にした。


「俺らとパーティーを組め! いいな!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。