↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
最終章・神風勇太はたった一人の勇者となる
131/134

第1話・どっちが上か、勝負してやるのです

 川のせせらぎが妙に耳に障る。


 マキ(彼女)とは、これまでの長い間過ごしてきたけれど、本当の意味で向き合ったのは初めてだった。


「……いつから、気づいていたのです?」


 マキは聞いた。


 今更ながらに思う。……いや、今までは理解したくなくて、事実に蓋をしていた。

 口調こそ違えど、マキの声と魔王の声は同じだった。

 魔王はしっかりと、見た目だって、マキの面影を残していた。


「……初めて会ったときから、だ。些細なことだけどさ、気になってたんだよ。……俺がマキをあの三人組(チンピラ)から助けたとき、マキ、迷わずこう言ったよな――『……勇者様!』って」


 マキは吊り上げた口角を変えることなく、俺の言葉を聞いている。


「おかしいよな……だって、元々このゲームに〈勇者〉なんて〈JOB〉がないんだからよ。いくら俺のこの格好が勇者らしいものだとしても、そんな迷いなく真っ直ぐに呼びかけるかなって――だって、〈プレイヤー(俺ら)〉からしたら、ゲームは始まったばかりなんだぜ?」


 マキは鼻で笑う。


「でも、それだけじゃ理由としては弱いのです……。そんなの、当てずっぽうの推測にすぎないのです」

「ああ。だから、俺はそこまで、そんなことを気にしていなかった。一時期は忘れてしまうくらいに……。だけどさ、マキはいつだって、率先して俺らのことを導いてくれたよな」


 マキの顔から笑みが消え、目を細めた。


「マキはすべて知ってたんだ。知っていたから……自分が犠牲になるとわかっていても、動いていた。


〈アンノウンダイチ〉じゃ、テオドロス王女に魔女の子の話を引き出させたり、ケンとの戦闘前には、わざとあの場には関係ない〈ミラーネ(魔法)〉の話をして、俺にヒントを与えた。


〈バンゲッデトウ〉じゃ、ケンが毒の話を持ち出したときも即座に否定して……、そのあと、魔王が進むためのヒントを与えてくれた。今思えば、マキこそ魔王なんだから、道しるべを示してくれるのは、ある意味当然なのかもしれない。


〈ヨシワラトウゲンキョウ〉じゃ、遊女からの奇襲に、瞬時に反応していた。逃げれるかもわからない状況で、マキは迷わず逃げるように指示をしてくれた。〈エキドナ〉を操っていたのもマキなんだろ? 声もそっくりだし……それに、エキドナが喋っている間、マキだけは目を伏せてたよな? ……ああ、ほんの一瞬だけ、マキのことも見てたんだよ。


〈シロケシキノチ〉じゃ、迷い踏みとどまる俺を鼓舞してくれた。セイバーとの戦いのとき、マキは、ツリィとの息が一寸の狂いもなくピッタリだった。よく、同じ魔法呪文をあんな声を揃えて言えたよな。


〈魔王城〉では……マキ、なんだよな。魔王の存在を消そうとしていたのは。


……マキがいなかったら、ここまで来れなかったことばかりだ」


 マキは川面に視線を落とし、しばらく黙っている。


「……マキは、〈プレイヤー〉じゃないんだよな」

「……なんでそう言い切るのです」

「ただの〈プレイヤー〉が、プログラムに干渉なんてできねぇよ」


 マキは杖を取り出すと、顔を上げた――すべてを諦めたような、やるせない笑みを浮かべていた。


「……そう。わたしが、この世界を狂わせたAI(元凶)なのです。魔王を創りだしたのも、魔女の子を創りだしたのも、全部、全部わたしなのです。こうなったら、『プレイヤーのマキ』はおしまいなのです。もう勇者様とは、この世界にいられない」


 マキは杖の先をこちらに向けると、言う。


「計画は変更なのです。勇者様と、みんなと――真っ暗な世界へいくのです」


 マキは 「〈ジホエンジャ〉」と唱えた。

 俺は素早く剣を抜いたが、直後、業火が俺の身体を包んだ――だが、不思議と熱さは感じなかった。

 剣は、迫り来る炎を受け流してくれていた。テオドロス王女から授かった王家の剣の効果が、今ここへきて発揮していた――そうか、王家の剣(これ)はマキ(魔女)に対して効果を発揮するものだったんだな。


「……テオドロスの剣か」


 マキは憎たらしく呟いた。


「ああ。どうやら王女(ひめ)さんの剣は、ようやくここで本領発揮ってとこらしい」


 マキはニヤリと笑い、言う。


「いいだろう。ぽっと出の干渉者(王女)とこのわたし――どっちが上か、勝負してやるのです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。