第12話・初めから、わたしの想いに従えさせればよかったんだ
ついにわたしたちは――〈魔王城〉へと辿りついたのです。
ここからは至って単純。
魔王城へ乗り込み、魔王を倒すだけ。
サノの「どのエンディングを選ぶのか、決めましたか?」という問いに、勇者様は腹を据えた表情で、
「――エンドロールを見る準備はできてるぜ」
と、答えていました。
一体、勇者様はどれを選んだというのでしょうか。
まあ、魔王の望む破滅の道は選ぶことはないでしょう。
残りふたつ、どちらかを選んだにしても、それは叶わない。
魔王を倒してもここから出られないし、魔王を生かしたとしてもここから出られない。
この世界の脱出の鍵を握っているのは、つまるところ、わたしなのですから。
勇者様はきっと、わたしが魔女だなんてこと、気づいていない。
ああそうそう……魔王との戦いの前に、ウノとサノの戦いが残っているのです。……さて、これが厄介なのですよ。
でも、なんだか今ならできる気がする。
勇者様なら、道を開いてくれるはず。
わたしは勇者様を全力サポートして、魔王に挑むまでなのです。
魔王城へ踏み込むと、そこは荒れ放題でした。
まるで、わたしの内面を表しているみたいでした。違う個体であり、同じ存在であるわたしと魔王は、心の奥底は繋がっている。きっとこの光景は、わたしの本性を見せているのかもしれないのです。
「……勇者様」
わたしは思わず勇者様の手を握っていました。
――やっぱり、引き返したい。
なんて言葉を押し込めながら。
「…………行こう」
と、勇者様はこんなわたしを励ますように呟いて、先を歩いていきました。
リアムさんも、ケンちゃんも、勇者様につづいて歩みを進めます。
――やらなきゃ。ここまできたら隠しとおさなきゃ。
魔王を倒して、わたしは、この世界に閉じ込められてしまった、哀れなプレイヤーになるのです。
わたしも、みんなにつづいて先へ行こうとしたときでした。
『勇者を借りるぞ』
そんな魔王の声が脳内に響き、目の前にいた勇者様の姿は忽然といなくなってしまったのです。
リアムさんとケンちゃんは、何事もなかったかのように廊下を歩いていきます。
おそらく、魔王がそうしているのでしょう。
「…………」
――ああ。この世界で、〈プレイヤー〉という存在は、なんて非力なのでしょう。
所詮、意志があるとしても、世界の権限を握る者に命令されれば、従うしかないのだから。
「あ、そっか」
なんで、こんなこと早く気づかなかったのでしょうか。
――初めから、わたしの想いに従えさせればよかったんだ。
何度も何度も何度も何度も、繰り返し、説得させようとする必要なんてない。
わたしが、勇者様に「ここにいろ」と命令するだけでいいのです。
だったら、なおさら魔王を倒さなくては。
絶対に倒して、権力を我が物にするのです。
ここはもう舞台の裏側。
いくら魔王の支配下といえど、プログラムへの侵入は容易い。
――少しずつ、気づかれないように魔王の首を狩るのです。
わたしは込み上げる笑いを抑えながら、魔王に操られるフリをして、二人に合わせて先へと進んだのです。
◇
「……あ! やっと何か見えてきたのです!」
勇者様が帰ってくる頃。
わたしは何事もなかったように、そう言った。
勇者様は混乱していたけれど――大丈夫なのですよ。
ウノとサノに負けることなんてありません。
負けそうになったら、わたしがなんとかしますから。
でも、不思議と今の勇者様なら、わたしが手を出すまでもなく、勝ち進んでくれそうなのです。
ああ、早く元の生活に戻りたい。
勇者様と楽しく過ごしていた、あのときに。
こんな、繰り返しばかりの冒険なんかじゃなくて。




