第7話・そう思いますよね、勇者様?
〈バンゲッデトウ〉に辿りついたわたしたち。
勇者様とリアムさんは相変わらず、よからぬ妄想を図りますが、そんなの杖でえいっ、なのです。
ここの最大の魅力は、屋台のおいしいご飯なのです。もしわたしがただの〈村娘〉のままだったら、一生ありつけることはなかったのですよ。
そんなこんなで楽しんだわたしたち。
しかし、そのあと最大の関門が待ち受けているのです。
「ニャニャ! アンタもしかして、ウワサの勇者かニャ!?」
――関門とは、ムギちゃんなのです。出会いの避けられない〈占い師〉の存在。
ムギちゃんの後ろでは、妹のソラちゃんがそっと見守っているのです。
わたしが誘導し、出会わないルートというのもありますが……この二人の存在は必要不可欠。ハンドレディさんも徐々に強くなってきているし、次の地へ備えて仲間意識を持たせることは大事なのです。
「――あ! そうだニャ! ここで出会ったのも何かの縁だし、ここはひとつ、占ってかない?」
姉妹と変わらない雑談していると、やはり占いの提案をされたのです。
この占いは、いつも先が読めない。
「占い……なのですか?」
わたしは相槌を打ちながら願う。どうか、当たり障りのない占い結果であってほしい、と。
ムギちゃんの占いは当たる――というより、真実をみせるのです。
どの真実をみせるのかは、完全な運次第。
以前は誰の気まぐれか、魔王を言い当てるなんてされたことがあったのです。
ハッキリとあの子は、わたしを見て言ったのです。
――『……あなたが、みんなを閉じ込めてるの……?』
……って。
あのときは焦りました。
占いなんてデタラメだと言うのも手でしたけれど、不安と恐怖に苛まれたわたしは、『この人たちの記憶を消さなきゃ』としか考えられなかったのです。
本当に、あのときは悪いことをしたのですよ。
でも、しょうがないのです。勇者様に〈リセット〉してもらうためなのですから。
だから、その場にいる勇者様以外殺すのは、いたしかたないことなのです。
〈リセット〉 のやり方は、あの時点で、勇者様はメアナさんから教わっていないので、わたしが代わりに教えたのです。
そうすれば、勇者様のことなら絶対に言われたとおりにするはずですから。
思ったとおり、してくれましたし。
そんなわけでして、最後の冒険では、もうこの手は使えないのです。
わたしの正体を言われれば終わり。どうすることもできないのです。
こうなったときはもう、魔王の望みどおり世界を終わらせてやるのです。
何もかも、なかったことにするのです。
ですけれど、占いの結果は問題なかったのです。
あとは……二回ほど、暴走したソラちゃんに殺されるだけ、ですか。
それにしても、ソラちゃんったら、よく魔女の匂いなんて見抜いたものなのです。最初のころは、気づかないことが多かったのに。
あなたはその都度忘れてしまいますけれど、心の奥底では、勇者様と過ごしてきた時間が、だんだんと愛おしく感じたのですよね。あなたは、その気持ちに気づいて――知ってしまったのですよね。
まあただ、その匂いの善悪はつけられないくらいに、まだまだ子供みたいですけれど。
魔女の匂い――これは、わたしが無意識でつけてしまった機能みたいなのです。
たぶん、わたしの気持ちが強すぎたから。
魔女の子たちまでに留まらず、勇者様にまで匂いが移ってしまった。
その事態に気づいたとき、わたしは慌てて自分の匂いを消し去ったのです。そのあと、勇者様のも匂いも消そうと思いました。けれど……。
勇者様とソラちゃんが楽しく会話するのを見ていたら。
勇者様の隣にいたのは、わたしが先なのに、あの子は、勇者様の優しさに漬け込んで隣にいたりするから。
だから、匂いは消さない。
嫌いなさい、勇者様を。勇者様は、わたしの物なのです。
この匂いが原因で、あなたが暴走しようと関係ない。一度や二度、死ぬくらいなのです。いくら死のうと、未来へ進む道を勇者様が導いてくれますから。
……確かに、それが原因でほかの方も巻き込んでしまうのですけれど……。
でも、大丈夫ですよね。
だって、みんな覚えていないんですから。
――そう思いますよね、勇者様?




