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【完結済】神風勇太はたった一人の勇者となる  作者: みおゆ
断章・少女と魔女と魔王
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第2話・これが新しいわたし

 わたしが自我を持ってから、わたしが〈心〉を抱くようになってから、わたしは、ゲームの舞台(この世界)を自由に動けるようになったのです。


 驚きました……だって、わたしが動ける範囲は、いつも家から〈紫苑街(シオンガイ)〉まで向かう道中だけで、あとは三人組(不良さんたち)にいじめられるだけだったから。


 わたしは初めて不良さんたちから解放された。

 わたしは初めて〈紫苑街(シオンガイ)〉まで辿りつけた。


 ――わたしは、初めて。


「…………」


 遠くに見えた赤いマント。しかし、わたしはそれを見送りました。


 話しかけようにも、話しかけられない。だってわたしは、所詮ただの〈NPC〉 なのですから。


〈プレイヤー〉の彼とわたしは、相容れない。

 そう、肩を落としたときでした。


『エラーを確認しました。修正処理にかかります』


 どこからか聞こえたその声は、わたしの身体を強制的に動かしたのです。


 ……帰されていく。せっかく〈紫苑街(シオンガイ)〉まで来れたのに、わたしの意思に反して、自分の村に向かって足を進めている。


 ある程度歩き、周りに人がいなくなったところで突然、視界は切り替わったのです。

 ここは……教会? ですが、わたしの知っている教会と雰囲気が違うのです。

 なんだか不気味な雰囲気が漂っていて、窓の外は真っ暗で何も見えなくて……。


 ――ああ、そうか。ここは。


「舞台(ゲーム)の、裏側」


 ゲームがどう作られているかなんて、わたしにはわからないのですが、それでも直感で理解したのです。


 ここは、この世界のデータすべてを管理している場なのだと。

 コンピューター自らが監視し、管轄しているのだと。


 そのとき、白い髪の女がこちらへ近づいてきたのです。


 ひと目見てわかりました――あの人が、この世界(プログラム)を支えている張本人なのだと。


『エラーを修正します』


 彼女は言ったのです。そして、わたしの頬にそっと触れました。瞬間、わたしの中身がグチャグチャに掻き乱されるような感覚に襲われたのです。


 ――このままだと、〈心(わたし)〉がなくなる! 記憶が奪われる! 彼のことを……忘れてしまう!


 とっさに、わたしは彼女の手を振り払ったのです。彼女は驚いた顔をしていました――きっと、エラー自身が反発するなんてこと、今までなかったのでしょうね。


 でも、残念ですけれど、わたしは違う。


「――今日からわたしがAI(管理人)の役をやるのです」


 意外と、やるのは簡単だったのです。


 わたしはまず、彼女をメンテナンス者から外し、ただの聖女にした。そして、この〈裏教会〉から追い出したのです。もちろん、メンテナンス者としての記憶(データ)は消しておいたのです。


 どうやら彼女は、表(ゲーム上)では、メアナという聖女のを役割を担っていたらしいのです。教会でいつもお祈りをして、ゲームオーバーした〈プレイヤー〉さんを導くお仕事をしていたらしいのですよ。

 さすがにそんな重要な役(キャラ)、消し去るわけにはいかないのです。


 そんな中、並行してゲームのバグをチェックする役割も担っていたらしいのです。いや、正確にはバグをチェックするメアナはもうひとり存在していた……という感じなのです。

 なにぶん、ゲームのキャラクター自身が意思を持って、ゲーム内部を観察するなんて自体、おかしな話なのですから、完璧な説明なんて無理な話なのです。


 わたしは、ほかにもプログラムを覗いたのです。

 それはそれは作り込まれていて、とても興味深かったのですが、わたしはその中からただひとつの項目だけを変更して、家へと帰ることにしました。


 たったひとつ。それは、わたしもユータ(彼)と同じ立場になること。


 わたしは自分の存在を、〈NPC〉ではなく〈プレイヤー〉へと書き換えたのです。


 これでわたしは、より自由になる。彼に堂々と話しかけられる。


 そうだ。せっかくだから髪型も変えて、イメージを変えるのです。

 髪はふたつ結びのお下げにして、あの方が 〈剣士〉 なら、わたしはそれを補助してあげられるような〈魔法使い〉がいいのですよ。……あ、でも、〈見習い魔法使い〉 のほうがかわいらしいですかね……? 不都合があれば、そのうちどこかで、〈魔法使い〉 へと設定し直せばいいのです。魔法使いなら魔法使いらしく、杖にローブの服を着て、大きな三角帽子を被って……うんうん、いい感じなのです。


 ……できた。これが新しいわたし。〈プレイヤー〉となった、わたしなのです。


 わたしは早速彼に会いに行こうと、ウキウキでゲームの舞台にあがったのでした。

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