第13話・ほんと大好きだぜ、みんな
魔法陣から飛び出したのは、一本の黒い触手。触手は、一瞬のうちに俺の首に巻きついた。
「……最後の狂いは〈ニードル王国〉とやらにいるテオドロスとかいう王女だった」
少しずつ、首が締めつけられていく。
「まさかあの女まで自我を持ち、そんな剣を生み出すとは思わなかった。この世界と我々を断ち切る、その剣を」
――いや、違う。あの女は自我を持つことはないと、高を括っていた。と、魔王は話をつづける。
「世界を治める王女……なんて、ただの設定かと思っていたよ。まさか本当に世界を愛し、護ろうとする心があったとはな……」
俺はなんとか剣を振るい、触手を断ち切った。
触手は消え、解放された俺は息をつく間もなく、次の攻撃に備える。
「――ま、我も心によって生まれた故、何も不思議なことではないか」
魔王は、今度は右手に棍棒を出現させ、握り締めた。一気に距離を詰め、俺に向かって棍棒を振り下ろす。
金属の鈍い音が響く。
剣と棍棒のせめぎ合い状態。一方が力を緩めた瞬間、それが勝負の分かれ目だ。
「本当ならなぁ、ここで一斉に四人の魔女の子を召喚させ、お前を叩き潰すんだがなぁ。……あいにく、もう一部のデータしか使えない」
「そりゃ……どういうことだ?」
「我の身体を見ればわかるだろう。我を含め、データが消されはじめているんだよ……もう必要とされなくなったのだ」
――必要とされなくなった? 一体、それは……。
「〈リセット〉も使えないとなれば、もう逃げ場はないからか……まったく、腹が立つ」
魔王の力がより強まる――俺は負けじと押し切り、距離を空けることに成功した。
一瞬よろける魔王。俺は踏み込み、今度はこちから剣を振りかざす!
「……くっ!」
棍棒でその攻撃は防がれ、俺はそのまま押し返されてしまう。
「思いどおりにさせてたまるか。最後は我々ごと、永遠の闇に堕ちてやろうぞ!」
勢いのまま、俺は床に倒れ込む。顔を上げれば、もう魔王は棍棒を振り上げていた。
「大丈夫さ――痛みなんて感じぬまま、暗闇に落ちていくのだから」
力の差は歴然だった。せめてもの抵抗で剣を上げるが、おそらく剣諸共頭を潰されて、終わる!
……こんなエンディング、迎えてたまるか。
魔王に負ける勇者の物語なんて、認めねぇ。
勝たなきゃ、勝ってみんなを……!
「――マキ! お前ら! 助けてくれ!」
俺は叫んだ。
勇者なのに、最終局面で仲間に助けを乞うなんて、マジでダサいよな。
そんなことを思って、自嘲しかけたときだった。
「〈ザライゲイン〉 !!」
白い閃光が、魔王の頭からつま先まで駆け抜ける。
魔王は硬直し、棍棒は手から離れた。
「勇者様! 大変お待たせしたのですよ!」
俺は、確かに三人の姿をこの目で捉えていた。
「ユータ! I'm here!」
みんな力強く立って、そこにいる。生きている。
「ちゃんと助けに来たぞ、ユータ」
いつもピンチな時に、支えてくれる仲間がそこにいる。
こんな勇者に、ついてきてくれる仲間が。
「ほんと大好きだぜ、みんな」
俺は誰にも聞こえないくらいの大きさで、そう呟いた。




