↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/134

第6話・逃げ道はもうない

「勇者様? 開けないのですか?」


 マキに言われ、俺は我に返る。

 思えば、ずっと扉の取手を掴んだまま、ボーッとしていた。


 ――ボーッと……? いや、違う!


 俺は後ろを振り返る。

 長い長い廊下。しかし、その奥は黒い闇に包まれ、先が見えない。


 前回は、廊下を歩いている途中で目覚めた。

 今は、扉の前で目が覚めた。


 ――戻(・)る(・)時(・)間(・)が(・)、(・)前(・)回(・)よ(・)り(・)も(・)短(・)く(・)な(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)。


 サノが言っていた、『勇者の退路を、断ち切ってやりましょう』ってのは、まさか――戻れる時間をなくしていくってことか。


 ――クソっ。ここに来て新ルールなんて、やってらんねぇぜ。


「ゆーうーしゃーさーまー?」


 マキが顔を覗き込んできた。俺はその距離の近さに驚いて、思わず一歩あとずさる。


「どうしたのですか。あ。もしかして、入るのに怖気づいた、とかなのです?」


 マキはそうからかった。それに便乗して、リアムも「ビビり勇者! ユータ!」とヤジってきた。

 ケンはそんな二人を見て、「二人とも、魔王城にいるというのに呑気なものだ……」と呆れ顔だ。


 この様子じゃ、三人からしたら、今までただ廊下を歩いてきただけと認識しているに違いない。ウノとサノの戦闘(さっきまでのこと)を覚えているのは俺だけか。


 しかし……今戻ってきたのが扉前。もし、次もまた戦闘でやられたりしたら、次に戻る先は戦闘中かもしれない。


 そうしたら、いよいよ勝ち目はなくなる。

 どうにか、ここで戦いを終わらせないといけない。


「…………」


 もし、今もウノとサノはこの様子をどこかから見ていて、俺の行動で次の戦闘の対策を練るのだとしたら。

 ……今までの俺が取ってこなかった戦法は、何かないか。

 …………。


 ――ひとつ、これは賭けになるがやってみるしかない。


「……なあ、マキ。西エリアでのこと、覚えてるか」

「え? なんなのですか、急に……?」

「西エリアで、まだケンと仲間になる前だ。新しい武器をゲットして、それからケンとどうやって戦って勝つか、リアムと三人で話し合ってたよな」

「そんなこともあったのです。懐かしいのです」

「も(・)う(・)、(・)覚(・)え(・)た(・)ん(・)じ(・)ゃ(・)な(・)い(・)か(・)」


 俺は言って、マキの持つ杖を見た。

 マキはひとつ間を空けて、それから目の色が変わった。どうやら、俺の意図を読んでくれたらしい。


「? オ、オラとケンだけ仲間ハズレってやつだ!」

「僕はなんとなく予想がついたぞ」

「What!?」


 さすがケン。そのあたりは、すぐに察しがついたらしい。まあ、ケンもある意味当事者だもんな。

 一方リアムは……うん、いつもどおりだ。それはそれで置いといて。


「……この先に、ウノとサノっていう魔王(ラスボス)の前に、ひと悶着ある。必ずこの一発で倒したい。そこでだ――」


 俺は三人に作戦を伝え、その扉を開けた。


 扉の先では、もうムギちゃんとソラちゃん姉妹に化けたりなどしておらず、正々堂々、ご本人の姿で待っていたウノとサノがいた。


 ――いや、ウノだけは違う。ウノは、セイバーの姿で待ち構えていた。


「なんだその姿、気に入ったのかよ」

「これが一番しっくりくるねん。この〈プレイヤー(データ)〉、なかなかに強いしなぁ」


 背後の扉は、自重で錆びついた音を立てながらゆっくりと閉まる。


 逃げ道はもうない。

 あとは二度目の正直ってやつで、勝つだけだ。


 ――そう意気込んだと同時に。


「……ッ!?」


 ウノの剣先が、すでに俺の喉元近くまで接近していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。