第5話・相変わらずの、わからず屋やな!
ウノとサノは、左右にわかれ動きはじめた。
――挟み撃ちして、俺らを倒す作戦か?!
「えーっと…… 〈威嚇連撃〉 ?」
サノは俺らの前方に立つと、足を踏み鳴らした――その振動は床を震わせ、俺らのバランスを崩す。
――この技、聞き覚えがある。確か、南エリアの魔女の子の……。
「I got this!!」
リアムは攻撃をものともせず、サノに向かって走り出す。
攻撃範囲内まで攻めると、リアムは高く飛び、サノに向かって拳を振り上げた。
「くらえ! 〈気合拳〉 ――」
「毎度、同じ流れだな」
ウノの蔑むような呟き。
直後、リアムの拳にまとった〈SKILL〉は消滅した。威力のないただの通常攻撃は、あっさりとサノに止められ、カウンターを受けてしまう。
「〈凍結呪術〉。これ、結構使い勝手いいな」
ハンドレディの技――コイツら、魔女の子の技使えるのか!?
「魔女の子の技はすべては使えません……。より厳密に言えば、ドンキーフールとハンドレディの技だけです」
サノは俺の内心を読み取ったかのようなタイミングでそう答えた。
「Hey! オラをムシするな!!」
リアムはサノへ攻撃をつづけるが、サノは俺に意識を向けたまま、軽々とそれを受け流していく。
まるで、散々同じ流れをこなしてきたかのように、機械的に。
コイツらにとっては、この戦いが『何周目』かのことでしかないようだ。
過去の記憶を持たない俺たちは圧倒的に不利だ。
俺は今回の周の記憶は維持できるが……。
「――〈拳銃使い〉と〈死神〉の 力も使えたらいいんだけど、この二人に限っては、武器ありきの戦いだしな」
「それもありますが……お二人は勇者側に寝返りました。そんな人の力を借りるまでもありません」
ウノとサノの会話に挟まれながら、俺は打開策を探す。
サノはいよいよリアムをねじ伏せ、ウノも次の攻撃態勢に入った。
「ウノ。さっさと今回も終わらせましょう」
「ああ、ようやく終わりも見えてたしな!」
長期戦はお望みではないらしい。今にもトドメを刺す勢いで、ウノとサノは同時に魔法陣を展開し、モンスターや魔獣を召喚した。
数は多いが――今の俺たちにとっちゃ、そんなのは雑魚キャラだ!
「こんなの、わたしの魔法で燃やし尽くしてやるのです! ――〈ホムラマ〉!」
マキの炎呪文で、一帯のモンスターは業火に飲まれていく。
「はいはい、すごいですね。でも残念ながら、モンスターが使えなくなれば、また召喚すればいいだけの話なのです」
サノは言って、さらに五体の魔獣を召喚し、一斉に俺らに向かわせる。
「〈ロックダン〉!」
ケンは魔法弾を撃ち、三体の魔獣の足止めに成功するが、逃した二体は俺に対し、一直線にかけてくる。
魔獣とはまだ距離がある。俺は素早く〈風切剣〉を使い、それぞれ二体にダメージを与えた。
「よっしゃ!」
魔獣はその一発で砂となって消えていく。この程度なら、いくらモンスターや魔獣を出されようとも対抗できる!
――あとは、ウノとサノをどう倒すか……。
「……俺らをどう倒すか、考えてんだろ」
耳元で囁かれた声に、背筋が凍った。
「……くそっ!」
俺は無理矢理にでも腕を奮い立たせ、剣を後ろに振り切った。
紙一重で躱されるが、ウノは驚いた表情をしていた。
「……すごいね。前は動けなかったのに」
「ウノ。油断しないでください。あくまでも、わたしたちは、過去の勇者しか知らないんですから」
サノは言って、俺では無く三人へ視線を戻した。
「目的は勇者のゲームオーバーです。ここはウノに任せますよ」
ウノは「オーケィ」という掛け声に合わせて、俺を蹴り飛ばした。
その威力は凄まじく、ただ蹴られただけだと言うのに、壁まで一気に吹っ飛ぶ。
「悪いなぁ、勇者。さっさと死んでもらうで――どうせまだ、何度か生き返るんやろ」
身体を起こしウノを見たとき、彼は『セイバーの姿』に変身していた。
「前みたいに痛くはせぇへん。一発でイかせたるわ」
「……お前は変身する度に、本人に合わせて演技してんのかよ」
ウノは答えず、代わりに腰の剣を抜いた。俺もすぐに立ち上がり、自身の剣で対抗する。
ひたすら首を狙うウノ。俺は防御に手いっぱいで、互いの刃が交差する音が不規則に鳴りつづける。
俺はそのさなか、懸命にウノに問いかける。
「どうしてお前らは……! 魔王は! ゲーム世界を終わらそうとするんだよ!」
「真の目的は叶うことがないからや! だったら、すべてを闇に葬って、なかったことにすれば、全部、全部忘れられる!」
「真の目的って……、それは、だって!」
やり取りの合間に金属音が耳を掠り、その度に、冷や汗が伝う。
「……! 勇者! お前気づいたんやな? だったら、どうして俺らと戦う! 戦うってことは、そういうことやろ!!」
「当たり前だ! みんなを現実世界に戻すのが、勇者の役目なんだから!!」
「勇者自身はどうやねん!!」
キン、と互いの剣が重なり、俺らは刃越しに睨み合う。
「俺は、魔王様の気持ちがよくわかるで……。そら、俺らは魔王様の身体の一部みたいな存在やから、手に取るようにわかる。でも、それと同じくらい、勇者の気持ちも見えるねん」
「何がわか――」
「ずっと見てきた。魔王様を通じてな。お前ホンマは、この世界にいたいんちゃうか?」
「…………っ」
「なぁ、勇者。今からでも遅ないで」
ウノの誘い言葉に、一瞬、心が揺れ動く。
ゲームが楽しいのは、本音だ。
仲間たちが大好きなのは、本心だ。
そんな世界と離れるのは――。
「……ダメだよ、ウノ。俺は勇者なんだから。魔王を倒すのが、俺の役目だ」
「……っ! 相変わらずの、わからず屋やな!」
ウノの力が勝り、押し出された切っ先は俺の首を掻っ切った。
俺は、ゲームオーバーした。




