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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第3章 聖王国脱出
97/129

17 未経験でした


 山脈の麓にたどり着いた僕達は、ここで夜営の準備を始める。インベントリからテントを取り出し設置する。


「3人はもう先に進んでいるのかしら?」


 迂回したとはいえ、スピードは3人のほうが速いから、もう先に進んでいるだろう。


「たぶん僕達が戦っている間に、山に入ったんじゃないかな」


 もうすぐアンデッドが活動しだす時間だから、今頃対策をしている頃だろう。


「そうよね、スフランに入るまで、追いつけないかもしれないわね」


 そうかも、待ち合わせしているから問題ないけど。


「僕達のほうがおそらく後だから、追っ手が来たら倒しておかないとね」


 軍隊を壊滅させたとはいえ、無事な人もいるだろうから、その人達で隊を再編して追撃があるかもしれない。

 人数が多いと見つけやすいけど、少ないと山の中では見つけにくいから注意が必要になってくるよね。


「そのときは広域魔法を撃って脅せばいいんじゃないかしら」


 脅かしすぎでしょ……。でも相手も任務だからそれでも追いかけてくるかもね。

 さっさと国境を越えてしまうのが一番だよね。

 寝袋を取り出すと、テントに入れる。


「脅してもついて来るのもいるだろうし、時間をかけずに国境を越えるのが一番だよ」


 テーブルやイスを取り出して座る。


「……それはそうなのだけど、それならもう少し進んでから夜営の準備をしてもいいんじゃないかしら」


 今日は頑張ったからこれ以上頑張りません。


「どうせ軍の人達も、今頃は再編や夜営に準備に忙しいから、追っ手は明日からだよ。つまり明日から頑張れば大丈夫!」


「……そう、それなら明日は早起きして進むわよ」


 ……早起きか。こんなことなら軍に止めをさしておけばよかった……。



 ◇



 翌朝、太陽が昇りきる前に委員長にたたき起こされ、出発する。どうしてこんな早い時間に委員長は起きることができるんだろう。目覚まし時計でも持っているのかな? でも目覚ましのベルを聞いた記憶はないんだけど。


「委員長はもしかして3時間ぐらいしか眠ってないの?」


 山道を歩きながら、委員長に質問する。


「そんなわけないじゃない。6時間ぐらい寝ているわよ」


 6時間!? この世界は電気が発達していないので、夜は本当に暗いため、22時までに寝る時間となる。つまり委員長は朝の4時頃には起きている訳だ。


「早起きしすぎでしょ!」


「私が早いかどうかは置いておいて、あなたは遅すぎると思うわよ。どうして22時前に寝て朝の8時にやっと起きるのよ……」


 9時間以上寝ないと寝た気にならないんだよね。きっと前世は猫だったに違いない!


「しかもそれだけ寝ているのにさらに馬車の中でも寝ていたりするし……」


「昼寝は別腹だから。それに僕も寝たくてなるんじゃなくて、気がついたら寝ているんだよ。もしかしてこの世界に来た影響かも……」


 時差ボケってやつだね。こればかりは仕方がない。


「あなたは元の世界にいるときも授業中はほとんど寝ていたじゃない。試験中でさえほとんど寝ていたのに成績は悪くなかったっていうのは詐欺よね」


 あれは教師の言葉が子守唄のように聞こえていたからね。それにしても元の世界では委員長とあまり接点はなかったと思うけど、僕の成績をどうして知っているんだろ?


「委員長はもしかして全員の成績を知っているの?」


「そんな訳ないでしょ!」


 あれ? 成績が上位なら知っててもおかしくないかもしれないけど、そこまで高くなかった僕の成績を知っているのはどうしてだろう。


「じゃあどうして僕の成績を知っているの?」


「………そんなことよりも追っ手が心配だからさっさと行くわよ」


 え? え? 質問の答えは??

 委員長が急に走り出したので、僕も委員長を追いかけるために走る。

 僕が委員長に追いつきそうになると、委員長がさらにスピードを上げる。

 ?? 何やっているんだろ? 何故か僕と委員長の追いかけっこが始まった。



 ◇



「はぁはぁはぁ、どうしてこれだけ走ったのにあなたは平然としているのよ……」


 これでも運動はそこそこ得意だし。それに僕は自分のペースで走っていたからね。委員長も普通に走ればここまで疲れなかったはずだよ。


「休憩する? 無理すると後で辛くなるよ」


「そうね、少し休憩しましょうか」


 かなり疲れたのか、委員長がその場で座り込む。山道なんて慣れていないはずなのに、ペースを考えずに走るから……。

 僕も休もうとすると、遠くから馬の蹄の音が聞こえてくる。それも1頭ではなくそれなりの数のようだ。


「追ってかな? 馬の蹄の音が聞こえる」


 休んでいた委員長も気を引き締めなおし、耳を澄ます。


「そうね、いちおう隠れて様子を見ましょうか」


 僕達は道を外れ、山の中に身を隠すことに。そして道には以前崖崩れの時に拾った岩を並べて通れないようにしておく。


「これで足を止めざるを得ないでしょ」


「不自然じゃないかしら? 岩がこんなところに並んでいるなんて……」


 崩れるような岩山も側にないから不自然だろうね。


「警戒してくれたら時間稼ぎにもなるからちょうどいいでしょ」


 できれば馬も確保したいところだね。そうすれば3人にも追いつけるかもしれないし。

 言っている間に馬に乗った男達が岩の前まで近づいてくる。


「くそっ誰だ、道を封鎖するなんてふざけた真似をするやつは!」


「以前隊長も同じことをやっていましたが……」


「そんなことは覚えておらん! さっさと部下に岩をどけさせろ!」


 どっかで見た顔だと思ったら、以前崖崩れを起こしたストーカー達ではないか。


「委員長、魔法を撃ち込むよ」


「ええ、まさかあの人達も来ていたなんてね」


「「サンダーランス!」」


 岩をどかそうとしている人達を狙い撃つ。直撃を受けて倒れると、他の人達も慌てて警戒を始める。


「なんだ!? 奇襲か!?」


「魔法です! 2人やられました!」


「ええい! 全員戦闘態勢だ! 山に突っ込めー!」


 お、突っ込んで来るのか。ならここで叩いておくかな。


「い、いけません隊長、相手の数も分からないのです。ここは一度下がりましょう!」


「アルトゥーロ、だから貴様は駄目なのだ。このまま敵を全て倒してしまえば問題ないではないか!」


 僕と委員長が近づいてくる人達を次々と倒しているのに気がついていないのだろうか?


「既に半数以上がやられています。このままだと全滅してしまいます!」


「なに! くそっ、不甲斐ないやつらめ! もういい撤退しろ!」


 ストーカー達が慌てて撤退していく。馬も何頭か残っているので、2頭を残して他は逃がしてやる。

 アンデッドにはならないでね。


「馬ゲットー! これで3人に追いつけるね」


 馬のスピードなら今日中にも追いつけるかも。


「……でも私達、馬に乗った経験ないわよね」


「………あっ」


 この馬、どうしよう……。


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