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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第3章 聖王国脱出
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05 前進あるのみ

次回は14日投稿予定です。


「ところでリノートの街には入るのかしら?」


 そうだよね、行っても入れるとは限らないよね。


「一応入るつもりだよ、無理なら逃げる!」


 もしかすると、2度と来れないかもしれないから、入れるなら入っておきたいかな。問題は入口でどうなるかだよね、駄目なら拒まれるはず。


「街に入れても、また襲撃されるかもしれないわよ……」


 夜中の襲撃はあまり気にしていないかな。問題は街中での襲撃やストーカーかな。対処が難しいから困る。


「夜は部屋の前に障壁を張っておくよ。外からも入れなくしておけば、安心でしょ?」


「そうね、この国の街で泊まるのも、せいぜいあと1日ぐらいでしょうから、問題はないかもしれないわね」


 後は離れたところを狙われないように警戒しないとね。


「それと単独行動はこの国を出るまで厳禁でいこう」


「分かったわ、最低2人で行動するわけね」


 アレッサはともかくマノンの懸賞金は500万だから狙われそうだし。


「カレン、トーカ! 前から多くの馬車が走ってくる! どうする?」


 アレッサに呼ばれて、前に確認をしに行く。確かに何台もの馬車がこちらに走ってくる。


「どういうことかしら? たまたま同じタイミングで来ているのかしら?」


 そんな偶然があるとは思えないけど、絶対ないとは言い切れない。

 もちろん警戒はしておいたほうがいいだろうね。


「おおーい! この先は崖崩れが起きていて進めないぞー!」


 近づいてくる馬車の御者が原因を教えてくれた。


「教えてくれてありがとー!」


 御者のおじさんに手を振ってお礼を言う。


「だって、だからみんな引き返している訳だ」


 これで、僕たちの進むルートは海岸沿いに進むルート限定になったと言える。


「これはやっぱり罠よね……」


 たぶんね、海岸沿いに進めば、敵の襲撃が待ち構えていると考えるのが妥当だろう。


「ふむ、我が魔法でそのような罠など叩き潰してやるわ」


「周囲の警戒なら任せてください!」


 うんうん、2人ともやる気十分だね。これなら大丈夫でしょ!


「よし、進路このまま、前進ー進め!」


「ちょっと、このまま進めば崖崩れがあって進めないわよ……。まさか、あれは嘘の情報だったのかしら?」


「いや、たぶん本当だよ。でもほら、崖崩れをそのままにしておくのは良くないし」


 直しておけばみんなが助かり、僕達も罠にかからずにすむから一石二鳥。


「トーカはたまに良い人になるな」


 たまにとは失礼な。でもついでだけどね。


「トーカは凄いです! 私も頑張ります!」


 マノンが応援してくれるだけで、僕は満足だよ。


 馬車を走らせて崖崩れの現場へ行ってみると、いくつか大きな岩が転がっている。


「土砂はないんだね。これならすぐに片付きそうだよ」


 見上げて山肌を見てみると、不自然な焦げ跡が見える。おそらく魔法で山の岩を破壊して落としたのだろう。土砂がないのは自然災害ではないからなんだろうね。

 岩に近づくと、インベントリに放り込んでいく。岩なので、1つ1つは大きく重いが、インベントリに入れてしまえば関係ない。全ての岩を取り除いたので、これで他の馬車も通ることができるだろう。


「思ったよりも早く終わったね。これで安全なルートを進めるはずだよ」



 ◇◇◇



「……隊長、あいつら来ませんね」


「アルトゥーロ、だから貴様は駄目なのだ。やつらは来る! 俺の勘がそう告げている!」


 はぁ、出たよ、隊長の勘。結局、今回も無駄足だったわけか……。


「いつも隊長の勘って外れるじゃないですか……、当たったことってあるんですか?」


 俺がこの隊長の下で働き始めてから、一度も当たったところを見たことがない。賭けをやっても成立しないほどの精度の低さだ。


「アルトゥーロ、お前ならどうする? 北のルートは使えない、ならば西のこのルートしかあるまい!」


 そうなんですけどね。でも実際来ていない以上、外れとしかいい様がないと思いますけどね。


「もしかして賞金稼ぎにでもやられたんじゃないですか?」


 相手は女4人、油断したところをブスリと。


「馬鹿を言うな! 俺達の尾行を見抜いたほどのやつらだぞ、そう簡単にやられる訳がないだろ! しかも1億以上が2人もいるんだ、実力も桁違いに違いない!」


 あれは隊長が尾行中に「お前らは4人のうちどの子がタイプだ?」とか言ってるからでしょ。俺らは暗部なんですから、仕事中にそのノリはおかしいでしょ。


「1億って言っても王女殿下のお誘いを断ったのが原因ですよね。別に彼女達が悪いことをしたわけじゃないですし、実力は金額とは比例しないですよ」


「馬鹿もん! 余計な事を言うな。誰に聞かれてるか分からないんだぞ!」


 誰にって……、俺達は今、彼女達を襲撃するために山の中に隠れているんですから、俺達の仲間しかいないに決まってますよ。

 なんでこの人、暗部なんかにいるんだろ。絶対向いてないのに……。


「それで、俺達はいつまでここに隠れているつもりですか?」


「もちろん見つけるまでだ! 第一の連中が失敗したんだ、俺達が成功させれば俺達第三の評価もうなぎ登りだぞ!」


 はぁ、隊長は無駄に出世欲が強いからなぁ。暗部にいる時点で、出世街道から離れていることに、そろそろ気がついてほしいのだけど……。


「ですがもう夕方ですよ。北のルートを行き、引き返して西ルートに変えるなら、既にこの道を通っているはずですよ」


 大量の馬車が昼過ぎに通ったから、あの大量の馬車が北から引き返してルートを変えた馬車だろう。あの時は馬車の数が多くて彼女達の馬車を探すのに大忙しだった。結局見つからなかったけど……。


「アルトゥーロ、貴様は単純だな! やつらは裏をかくつもりなのだ! だからこそ、あえてこの時間に通るはずだ!」


 裏をかくならもっと別のルートに進みますよ。そもそも彼女達がスフランに行くとは限らないですからね。


「ですがスフラン以外の国に行くならこのルートは通りませんよ」


「…………」


 固まってしまった。どうやらその考えには至っていなかったようですね。

 この隊長、魔法の才能は高いのだけど、頭があんまりですからねぇ。

 さて、これからどうしましょう……。



 ◇◇◇



 リノートに向けて移動すること4日。途中にある村などにも寄り野菜などを買いながらのんびり進んで行っていた。村などでは特に普通に接してもらっていたので、情報はまだ回っていないのかもしれない。


「そろそろリノートよね。街に入れるのかしら?」


 おそらく後1時間ぐらいで、リノートに着くはずだ。もしもリノートに情報が回っているのなら入れないだろう。

 こちらの情報がどうやって回っているのか分からないので、判断がつかない。

 委員長は少し緊張して、顔が強張っている。着ている物もいつでも戦えるように執事服から鎧へと着替えている。

 アレッサも緊張していたので、御者席にいたのを馬車の中に引っ込めて、今は僕が御者をしている。

 マノンは全く緊張してない様なので、後ろの警戒をしてもらっている。マノンは権力者には弱いけど、こういうのは大丈夫なんだよね。


「お、街が見えてきた。なかなか大きな街だよ」


 僕の声に、委員長とアレッサがビクッと反応する。あまり緊張しすぎるのも色々と心配になってくるんだけど……。

 リノートはスフランとの交易が盛んな街だけでなく、北にあるシース国とも近いため色んな人や物が集まってくる街でもある。


「きっと美味しい物や楽しいことが、集まった街なんだろうね」


 僕の発言に、委員長がきょとんとする。


「あなたって意外と純粋な心を持っているのね」


 委員長が妙に優しい顔でそんなことを言ってきた。


 どういう意味? いままでずっと、心が汚いと思われていたの!?


いつもお読み頂きありがとうございます。


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