06 黒ローブはお断り
委員長の言葉にショックを受けつつも、リノートの街に入るために列に並ぶ。周りには馬車が多く、外装なども今までに見たことのないものも多い。
御者の服装も違うが、そもそも種族が違う人がいる。
「委員長、エルフだよ。エルフがいるよ!」
ファンタジーの定番、エルフがいる。全体的に線が細く美形で、切れ長で他人を見下したような瞳。そしてなにより細く尖った耳が特徴だ。
「シースにはエルフやドワーフが住んでいるから、そこから来ているのだろう」
ドワーフもいるのか!? ぜひともスフランの次はシースに行きたいものだね。
「スフランの後は、ドワーフに会いにシースに行くよ。ずんぐりむっくりに会いに行くよ」
「ドワーフの前でずんぐりむっくりなんて言うんじゃないぞ。怒って穴から出て来なくなるからな」
穴から出て来ない? さすがドワーフ、穴に住んでいるんだ! 煙で燻したら出てくるのかな?
「すごいなシースは、ファンタジーが詰まった国じゃないか!」
後はドラゴンや妖精が住んでいれば完璧だよね。
「ファンタジー? よく分からないが、変わった国というのは確かだな。だから人間至上主義の聖王国とも仲があまり良くない」
そうなんだ。でもその聖王国のリノートにエルフが来るんだ、リノートは聖王国の中でも変わった街なのかもしれないね。
「リノートの領主は大のお金好きで、金さえ払えば種族の違いなんて気にしない人だそうだ」
分かりやすい合理主義者だね。でもだからこそ、この街が繁栄しているわけだ。
「面白そうだから会ってみたい気もするけど」
僕の言葉にマノンがビクッと反応する。そして心配そうにチラチラとこちらを見てくる。うん、領主に会いたくないんだね。
「そろそろ僕達の番だね」
今度は委員長とアレッサがビクッと反応する。大丈夫なのか?
兵士が近づいてきた。
「リノートへは何の用で?」
そう言って、手を出してくる。
「スフランへ寄る途中です。1晩泊まって明日また出発予定です」
その手に僕のギルドカードを渡す。そのカードを見ながら「この年でCランクか」と驚いている。
「そうか、人数は?」
ギルドカードを返しながら聞いてくる。
「4人、うちのパーティーメンバーです」
「なるほどな、よし通っていいぞ!」
「ありがとう!」
お、問題なくいけそうだね。馬車を走らせて街の中に入っていく。後はつけられていないかどうかだね。委員長とマノンにその確認をしてもらっているから、結果待ちだね。
委員長が近づいてきた。
「どうだった?」
「特に変な動きをしている人はいなかったわ」
2人がシロと言う以上、おそらくシロなのだろう。もちろん警戒はするが。
「ありがとう、じゃあ宿を探すよ」
探すといっても、この街は宿が多い。色んなところから人が集まるから、宿も多く必要になってくるのだろう。多少高くなっても、逃げやすいように、門に近いほうがいいだろう。
宿を決めると観光だ。
「では、冒険者ギルドへ行くぞ!」
ではじゃない! 僕達が賞金首ってこと、忘れているのか?
「行かない! 明日には街を出るのに、依頼を受けている暇なんてないからね」
まったく。ギルドになんて行ったら、また今夜は野営になるじゃない。ギルドは時間のあるときだけだよ。
「じゃあ、食事ですか?」
「そうだね、食事と街を見て回りたいかな」
街を見て回っていると、ときおりエルフを見かける。ドワーフもいるか探したが、見つからない。もしかすると鍛冶屋とか飲み屋にでもいるのかも。街並みは他の街と大きく変わらないが、店の数が多く、様々な店がメイン通りにずらりと並んでいる。
「まるで観光地みたいよね」
変な商品もあるし、お土産用かな?
「木刀とか売ってないかな?」
買っても使わないけど、つい買ってしまうよね。僕も修学旅行で買ったのが家で眠っているはずだ。
「ないわよ。真剣が売っているのに木刀を売る必要なんてないでしょ」
この世界にはリアルな武器屋があるから駄目なのか。木刀よりもナイフのほうが売れてるかもね。
「僕達がこの街で大活躍すると、メイド服や執事服が売られるようになるのかな?」
「メイド服や執事服はもともとあるじゃない。それに大活躍なんてしないから関係ないわよ」
そっか、じゃあニューロードの衣装を作るっていうのはどうだろ? 新撰組の衣装みたいに人気が出るかも。
「よし! 頑張って新しい衣装を考えますか!」
作るのは僕じゃないけど。
「いらないわよ! もうすぐこの服も着なくてすむのに!」
ちっ! 委員長は反対派か、アレッサとマノンはどうでもよさそうだね。ならばまずはアレッサからだね……。
「アレッサはパーティーカラーって考えたことある?」
「パーティーカラー? なんなのだそれは?」
「僕達ニューロードの服装や目立つ特徴かな、騎士の鎧が統一されてるように、僕達の格好も統一すれば目立つと思わない?」
騎士は子どもの憧れの存在だから、そのいいイメージを持ってもらえれば理解してくれるはずだ。
「ほう、つまりニューロードのみなで黒いローブを――」
「却下!」
「ないわね」
「あれはちょっと無理です!」
アレッサが落ち込んだ。
みんなであれを着ていたら、変な宗教にはまった頭のおかしな連中って思われてしまうから。アレッサを引き込もうとしたのは失敗だったね。マノンはそこまで服装にこだわらないし、適当に可愛い服をマノンに着せて我慢しよ。
「あの店がいい匂いをさせてるから、あの店で食べるよー」
「おー!」
店のドアを開けて中に入ると、食事をしていた男性と目が合う。
「あーーーー!!」
男性が僕達を見て、大きな声で驚き叫ぶ。
んー? 知らない人だよね? 会った記憶はないと思うけど……。向かいに座ってる男が左手で頭を抱えている。
「……隊長、声を出してどうするのですか。思いっきり警戒されてしまったじゃないですか」
「アルトゥーロ、だから貴様は駄目なのだ! こんな女共などすぐに俺の魔法の餌食にしてくれるわ!」
なんでこの人、自分で魔法を使うって言うんだろ? この距離なら詠唱破棄を使われなければ、魔法を撃つ前に反撃できると思うけどね。
「俺は先日、魔法でノヴァージェの北にある山を崩してやったんだ。もしそれほどの魔法をここで撃てばどうなるか、分かるよな?」
んん? あの崖崩れはこいつの仕業なのか!? でもわざわざ自白するとは何考えているんだろ?
「もしかしてあの崖崩れって……」
「そうだ! この俺の魔法で山を吹っ飛ばしてやったのよ!!」
何をしているんだこいつは……。向かいの男がまた頭を抱えているし。
「ふっ飛ばしたのならちゃんと掃除しろ! みんなが困っていたから僕達が道を通れるようにしたのだからな!」
「余計な事をするな! あれはあのままでいいんだよ!」
なんて勝手なやつだ!
店にいた客達が急に立ち上がると、男に掴みかかる。
「余計な事をしているのはてめえのほうだろうが!」
「うちの商会もあのルートを通っているんだよ!」
「てめえのせいで損害を被ったんだ! 覚悟はできているんだろうな!」
商人達だったのか、途中の村で商品を売買していたんだろうね。それがこの男のせいで、ルートを変えるはめになったわけだ。
「おい! 俺を誰だと! 離せ!」
「衛兵に突き出してやれ!」
「アルトゥーロ! 何をしている! 早く助けろ!」
アルトゥーロと呼ばれた男が破壊魔の髪の毛を掴むと、走って逃げた。
「イタタタタ!!!」
なんて恐ろしい逃げ方……。あれは絶対悪意があるよね……。
「くそっ! 逃げられたか!」
破壊魔達のテーブルを見ると、お金が置いてある。おそらくここの料金だろう。アルトゥーロという男は意外と優秀なのかもしれない。
「おっと、嬢ちゃん達が道を通れるようにしてくれたって言ってたよな、ありがとな」
「そうだ、俺からもありがとうよ」
「だな、感謝してるぜ」
次々と商人達に礼を言われる。あくまでついでにしただけなんで、礼を言われるとこそばゆいね。
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