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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第3章 聖王国脱出
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06 黒ローブはお断り


 委員長の言葉にショックを受けつつも、リノートの街に入るために列に並ぶ。周りには馬車が多く、外装なども今までに見たことのないものも多い。

 御者の服装も違うが、そもそも種族が違う人がいる。


「委員長、エルフだよ。エルフがいるよ!」


 ファンタジーの定番、エルフがいる。全体的に線が細く美形で、切れ長で他人を見下したような瞳。そしてなにより細く尖った耳が特徴だ。


「シースにはエルフやドワーフが住んでいるから、そこから来ているのだろう」


 ドワーフもいるのか!? ぜひともスフランの次はシースに行きたいものだね。


「スフランの後は、ドワーフに会いにシースに行くよ。ずんぐりむっくりに会いに行くよ」


「ドワーフの前でずんぐりむっくりなんて言うんじゃないぞ。怒って穴から出て来なくなるからな」


 穴から出て来ない? さすがドワーフ、穴に住んでいるんだ! 煙で燻したら出てくるのかな?


「すごいなシースは、ファンタジーが詰まった国じゃないか!」


 後はドラゴンや妖精が住んでいれば完璧だよね。


「ファンタジー? よく分からないが、変わった国というのは確かだな。だから人間至上主義の聖王国とも仲があまり良くない」


 そうなんだ。でもその聖王国のリノートにエルフが来るんだ、リノートは聖王国の中でも変わった街なのかもしれないね。


「リノートの領主は大のお金好きで、金さえ払えば種族の違いなんて気にしない人だそうだ」


 分かりやすい合理主義者だね。でもだからこそ、この街が繁栄しているわけだ。


「面白そうだから会ってみたい気もするけど」


 僕の言葉にマノンがビクッと反応する。そして心配そうにチラチラとこちらを見てくる。うん、領主に会いたくないんだね。


「そろそろ僕達の番だね」


 今度は委員長とアレッサがビクッと反応する。大丈夫なのか?

 兵士が近づいてきた。


「リノートへは何の用で?」


 そう言って、手を出してくる。


「スフランへ寄る途中です。1晩泊まって明日また出発予定です」


 その手に僕のギルドカードを渡す。そのカードを見ながら「この年でCランクか」と驚いている。


「そうか、人数は?」


 ギルドカードを返しながら聞いてくる。


「4人、うちのパーティーメンバーです」


「なるほどな、よし通っていいぞ!」


「ありがとう!」


 お、問題なくいけそうだね。馬車を走らせて街の中に入っていく。後はつけられていないかどうかだね。委員長とマノンにその確認をしてもらっているから、結果待ちだね。

 委員長が近づいてきた。


「どうだった?」


「特に変な動きをしている人はいなかったわ」


 2人がシロと言う以上、おそらくシロなのだろう。もちろん警戒はするが。


「ありがとう、じゃあ宿を探すよ」


 探すといっても、この街は宿が多い。色んなところから人が集まるから、宿も多く必要になってくるのだろう。多少高くなっても、逃げやすいように、門に近いほうがいいだろう。

 宿を決めると観光だ。


「では、冒険者ギルドへ行くぞ!」


 ではじゃない! 僕達が賞金首ってこと、忘れているのか?


「行かない! 明日には街を出るのに、依頼を受けている暇なんてないからね」


 まったく。ギルドになんて行ったら、また今夜は野営になるじゃない。ギルドは時間のあるときだけだよ。


「じゃあ、食事ですか?」


「そうだね、食事と街を見て回りたいかな」


 街を見て回っていると、ときおりエルフを見かける。ドワーフもいるか探したが、見つからない。もしかすると鍛冶屋とか飲み屋にでもいるのかも。街並みは他の街と大きく変わらないが、店の数が多く、様々な店がメイン通りにずらりと並んでいる。


「まるで観光地みたいよね」


 変な商品もあるし、お土産用かな?


「木刀とか売ってないかな?」


 買っても使わないけど、つい買ってしまうよね。僕も修学旅行で買ったのが家で眠っているはずだ。


「ないわよ。真剣が売っているのに木刀を売る必要なんてないでしょ」


 この世界にはリアルな武器屋があるから駄目なのか。木刀よりもナイフのほうが売れてるかもね。


「僕達がこの街で大活躍すると、メイド服や執事服が売られるようになるのかな?」


「メイド服や執事服はもともとあるじゃない。それに大活躍なんてしないから関係ないわよ」


 そっか、じゃあニューロードの衣装を作るっていうのはどうだろ? 新撰組の衣装みたいに人気が出るかも。


「よし! 頑張って新しい衣装を考えますか!」


 作るのは僕じゃないけど。


「いらないわよ! もうすぐこの服も着なくてすむのに!」


 ちっ! 委員長は反対派か、アレッサとマノンはどうでもよさそうだね。ならばまずはアレッサからだね……。


「アレッサはパーティーカラーって考えたことある?」


「パーティーカラー? なんなのだそれは?」


「僕達ニューロードの服装や目立つ特徴かな、騎士の鎧が統一されてるように、僕達の格好も統一すれば目立つと思わない?」


 騎士は子どもの憧れの存在だから、そのいいイメージを持ってもらえれば理解してくれるはずだ。


「ほう、つまりニューロードのみなで黒いローブを――」


「却下!」

「ないわね」

「あれはちょっと無理です!」


 アレッサが落ち込んだ。

 みんなであれを着ていたら、変な宗教にはまった頭のおかしな連中って思われてしまうから。アレッサを引き込もうとしたのは失敗だったね。マノンはそこまで服装にこだわらないし、適当に可愛い服をマノンに着せて我慢しよ。


「あの店がいい匂いをさせてるから、あの店で食べるよー」


「おー!」


 店のドアを開けて中に入ると、食事をしていた男性と目が合う。


「あーーーー!!」


 男性が僕達を見て、大きな声で驚き叫ぶ。

 んー? 知らない人だよね? 会った記憶はないと思うけど……。向かいに座ってる男が左手で頭を抱えている。


「……隊長、声を出してどうするのですか。思いっきり警戒されてしまったじゃないですか」


「アルトゥーロ、だから貴様は駄目なのだ! こんな女共などすぐに俺の魔法の餌食にしてくれるわ!」


 なんでこの人、自分で魔法を使うって言うんだろ? この距離なら詠唱破棄を使われなければ、魔法を撃つ前に反撃できると思うけどね。


「俺は先日、魔法でノヴァージェの北にある山を崩してやったんだ。もしそれほどの魔法をここで撃てばどうなるか、分かるよな?」


 んん? あの崖崩れはこいつの仕業なのか!? でもわざわざ自白するとは何考えているんだろ?


「もしかしてあの崖崩れって……」


「そうだ! この俺の魔法で山を吹っ飛ばしてやったのよ!!」


 何をしているんだこいつは……。向かいの男がまた頭を抱えているし。


「ふっ飛ばしたのならちゃんと掃除しろ! みんなが困っていたから僕達が道を通れるようにしたのだからな!」


「余計な事をするな! あれはあのままでいいんだよ!」


 なんて勝手なやつだ!

 店にいた客達が急に立ち上がると、男に掴みかかる。


「余計な事をしているのはてめえのほうだろうが!」

「うちの商会もあのルートを通っているんだよ!」

「てめえのせいで損害を被ったんだ! 覚悟はできているんだろうな!」


 商人達だったのか、途中の村で商品を売買していたんだろうね。それがこの男のせいで、ルートを変えるはめになったわけだ。


「おい! 俺を誰だと! 離せ!」


「衛兵に突き出してやれ!」


「アルトゥーロ! 何をしている! 早く助けろ!」


 アルトゥーロと呼ばれた男が破壊魔の髪の毛を掴むと、走って逃げた。


「イタタタタ!!!」


 なんて恐ろしい逃げ方……。あれは絶対悪意があるよね……。


「くそっ! 逃げられたか!」


 破壊魔達のテーブルを見ると、お金が置いてある。おそらくここの料金だろう。アルトゥーロという男は意外と優秀なのかもしれない。


「おっと、嬢ちゃん達が道を通れるようにしてくれたって言ってたよな、ありがとな」

「そうだ、俺からもありがとうよ」

「だな、感謝してるぜ」


 次々と商人達に礼を言われる。あくまでついでにしただけなんで、礼を言われるとこそばゆいね。


いつもお読み頂きありがとうございます。


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