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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第2章 メイドと執事と盗賊と
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32 それぞれの戦い 前


 やはりいたか。まさかこいつらが、迷宮から出てきているとは思わなかったよ。兵士達が挑んでいくも、何もできずに倒されていく。


「前進速度を落とせ! ボスのお出ましだ! あれは僕が倒す!! 周りの雑魚どもを討伐しろ!!」


「「「「おーーーー!!!」」」」


 僕の言葉に素直に従ってくれる。みんなボスを倒したがっているのかと思っていたが、そうでもないようだ。


「やっぱりあれが群れのボスだったようね」


 後方に下がっていた委員長がいつの間にか最前列に来ている。その目はしっかりと3馬鹿兄弟を捕らえ、闘志が溢れている。


「あれはいったい何がしたいんだろ? 迷宮にずっといればいいのに……」


 迷宮主を倒した影響なのかもしれないけど。


「分からないわ。でもこんなに早く再戦する機会がやってきたのだから、喜ぶべきよね」


 僕は別に、再戦を望んではいないんだけど……。委員長は既に戦う気満々だ。

 3馬鹿兄弟とは既にギルドマスターや隊長さん挑んでいるが、3馬鹿兄弟はまだ余裕を見せている。


「あれがこの戦いの元凶という訳だ。ふふふ、我の杖の錆びにしてくれようか」


「今夜はオーク焼きがいいです!」


 あら、アレッサとマノンが一緒に出てきたようだ。あと、オーク焼きはしません。委員長も嫌そうな顔をしているし。


「アレッサとマノンは他の魔物の討伐をお願いするよ」


「む? どういうことだ、我らも戦えるぞ!」


「私もオークに負けたりはしません!」


 僕の言葉に2人は反論する。相手が少数なら負けない自信があるのだろう。僕も相手があれでなければ参加させたかもしれないが、あれは駄目だ。


「私や天沢さんが1対1で戦って勝てなかった相手よ。それでも勝てるというのかしら?」


「僕もかなり苦戦したよ。相手の戦い方を参考にして、それを取り入れた結果、なんとか勝利につながったんだよ。今ギルドマスター達が戦っているけれど、負けるのも時間の問題だろうね」


 2人もあれの実力がどれほどのものか理解できただろう。2人には悪いけど、今回は遠慮してもらう。


「それならせめて援護だけでもさせてほしい!」


「私も! 2人と一緒に戦いたい!」


 援護か、僕のほうは無理だと思う。委員長を見ると、顔を横に振る。


「戦うのなら3体目だね、委員長は前回の続きがやりたいだろうし、僕も1対1で叩き潰したいから。だから援護するなら残りの1体かな、ギルドマスターがなんて言うかは知らないけど……」


「ふむ、だったら冒険者らしく勝手に介入するとしよう」


「上手く隠れて撃てば大丈夫!」


 これで方針は決定したね。


「じゃあ、いくよ!」


「ええ!」

「「はい!」」


 僕と委員長は3馬鹿兄弟の下まで走る。そしてそのままオークキングに奇襲をかける。


「ダークバインド!」


 オークキングの足元が黒くなると、それに気がついたオークキングがすぐに横に跳ぶと、辺りを警戒する。


「誰だ!」


「まさか穴ぐらから出てきていたとはねぇ、もう一度戻しに行く必要があるのかな?」


「小娘!」

「メイド!」


 オークキングと隊長さんが反応する。

 小娘はともかくメイドではないから……。メイド服を着ているだけだから。


「隊長さんはあっちのオークをお願いできるかな? オークキングは僕の獲物だから」


 オークマジシャンのほうを指しオークキングに向かい合う。

 隊長さんはもうボロボロだ。一度下がったほうがいいと思うけど、立場上ここで下がる訳にはいかないだろうね。


「しかしこいつは強いぞ、2人で戦ったほう――」


 オークキングに槍を突き出す。それを見抜いていたのか剣で弾かれる。右肩、左わき腹、首を狙い突くが弾かれ避けられる。オークキングも負けじと剣を振り下ろし、すぐさま振り上げてくる。それを回避しつつ振り上げた状態の手を狙い突くが、上手く下がられた。


「――ああ、うん……ここは任せる……」


 隊長さんがオークマジシャンに向かって走って行く。その姿を僕とオークキングが見送る。

 あの人まだいたんだ……。


 気を取り直すため一呼吸入れる。そして一瞬で間合いに入ると槍で上腕、脇、腰と連続で突く。予想通り全て防がれるが一瞬タイミングを遅くさらに体を少しずらし首を狙って突く。オークキングも慌てて体をずらし回避するが、首を5ミリほど切り裂き、血が流れる。


「さすがに簡単には勝たせてくれないか」


「ふはははは、あれから少しは腕を上げたようではないか」


「当然! また前みたいに倒してあげるよ」


 突きに強弱や緩急をつけて攻め立てるが、やはり防がれ、避けられてしまう。

 ……そう甘くはないか。

 戦い方を突きだけでなく、薙ぎ払いを中心に切り替える。


 上から下から横からと攻め立て、たまに突きを入れる。戦い方を変えたのでオークキングもあまり攻めてこず、慎重になっているように見える。


「どうしたの? もしかして戦い方を忘れたの?」


「ふはははは、意外とまともな戦い方もできると感心しておったのだよ!」


 基本に帰って戦わないと、攻撃が通らないからだよ。格下との戦いに慣れると、雑に戦う癖がついてしまうんだよね。だから強者との戦いだと苦戦してしまう……。

 顔を狙い突くように見せかけ魔法を使う。


「ダークバインド!」


 オークキングが横に跳んだところを槍で斬りつけるが、剣に阻まれる。


「ファイヤーランス!」

「ファイヤーランス!」


 魔法同士がぶつかり相殺されると、構わずその先にいるオークキングを狙い槍を投げつけた。


「「ダークバインド!」」


 投げた槍を剣で弾かれると、同時に魔法が発動する。オークキングはおそらく横に跳ぶと予想し、インベントリから新しい槍を取り出すと、走ってその着地予想場所を槍で突き刺す。


 キンッ! という金属のぶつかる音と槍を持つ手が、槍が堅いものに阻まれたことを教えてくれた。


「しまっ――」


 足元の床は既に黒くなっており、そこから現れた鎖が僕の体を縛り付けた。



 ◇◇◇



 初宮さんがオークキングに向かっていくのを見て、私は前回のリベンジを果たすべく、オークジェネラルの下に行く。オークジェネラルの周りには多くの兵士が囲んでおり、攻めあぐねているのが分かる。


「行かせてもらうわよ」


 兵士達の合間を縫って、オークジェネラルの前に立った。


「ほう、お前はあの時の人間族か。また負けに来るとはな。どうせなら兄者を倒したものと戦いたいのだがな」


「今回は勝たせてもらうわよ。あと、前回も負けていないから」


 前に立つだけで強さを感じさせられる。少しでも気を抜くと私が負ける姿が浮かんできそうよね。

 オークジェネラルがオークキングの方を見る。向こうでは既にオークキングと初宮さんが戦っているようね。


「やはりあの小娘も来ていたか」


 嬉しそうに笑うと私のほうを向く。私はおまけって訳かしら、あまり舐めないでもらいたいわね。


「では早く終わらせるとしよう」


 そう言うと一気に間合いに入ってきて剣を振り下ろしてくる。オークジェネラルも魔法を使えるのだけど、前回は使ってこなかった。使う必要がなかったとも言えるけど……。


 剣を後ろに跳び避けると、蛇腹剣を鞭モードに切り替え叩き斬る。相手の間合いでは戦わず、常に自分の間合いで戦えば勝機もあるはずよね。

 鞭モードの蛇腹剣は独特の軌道なので防ぐことは難しい。それなのに……そのはずなのに、私の攻撃が悉く剣で払われる。そして、払いながら歩いて近づいてくる。


 嘘でしょ……。これが通用しないなら剣か魔法で戦うしかないのだけど、剣だと勝てる自信がない。魔法で戦うしかないわね。


 後ろに跳ぶと魔法を撃つ。


「サンダーランス!」


 雷の槍がオークジェネラルへ飛んでいくが、横に跳んで避けられた。

 だったら数で押してやればいいわ。


「サンダーランス! サンダーランス! サンダーランス! サンダーランス! サンダーランス!」


 オークジェネラルを狙い魔法を連発する。オークジェネラルもさすがに慌てて走り出す。


「さっさと当たりなさいよ!」


「ふざけるな! 貴様は剣士ではなかったのか!」


 走りながら怒っているが、オークジェネラルも魔法は使えるはずだ。私の鑑定には炎魔法という文字が見えているもの。


「私は魔術師よ! あなただって魔法がつかえるでしょ!」


 魔術師と知って驚いている。人前では蛇腹剣ばかり振っているから驚くのは当然だけどね。

 オークジェネラルが私に向かって走ってくる。剣を盾代わりに使い、魔法によるダメージを受けつつも「うおーー!」と叫びながら突っ込んでくる。


「……ちょっ!?」


 蛇腹剣を剣モードに変え、横に避けようとするが、そのままタックルされ吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされながら、今魔法を撃てば直撃させられるかもと他人事のように思った。


「ファイヤーランス!」


 撃った魔法がオークジェネラルの顔に直撃する。


「グホッ……み、見事……」


 私はそのまま意識を失った。


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