33 それぞれの戦い 後
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私とマノンはオークマジシャンに近づいていく。オークマジシャンはギルドマスターの剣を長い杖で打ち合っていた。
「ほらほらお嬢ちゃん、その程度か?」
「くっ! このー!」
ギルドマスターの剣を簡単に防ぎ、かなり余裕があるように見える。
「あれが魔術師だと……、近接戦なのにギルドマスターがまるで相手になってないではないか……」
ギルドマスターの太刀筋は私から見てもかなり凄い。だがそれをあのオークマジシャンは容易く防いでみせる。
「アレッサ。私達は私達の仕事をするだけです!」
マノンはオークマジシャンの戦い方を見ても何も思わないのか、平然と弓の準備をしている。
「そ、そうだな。参加する以上、役に立ってみせないとな」
覚悟を決め、狙いをつけようとすると、1人の騎士が戦いに参加してきた。
あの方、既に傷だらけですけど、大丈夫なのでしょうか?
「ギルマス、私も手伝わせてもらおう!」
「隊長殿、あちらは倒したのか?」
「いや、メイドに任せてきた。私では役に立てそうにないのでな」
メイドと言うとトーカのことですね。既にトーカも戦闘に入ったのでしょう。
「……メイド?」
ギルドマスターが不思議そうな顔をするが、すぐに切り替える。
「そうか助かる、正直私だけでは手に余っていたところだ」
2人の会話をオークマジシャンが聞きながら待っている。
「そろそろ始めてもよいかな? 弱者が1人増えたところで、全く意味はないということを教えてやろう! フレイムバースト!」
杖の先から炎を出しながら、周りを焼き払う。
ギルドマスターと隊長が素早く炎の範囲内から離れる。
「ファイヤーランス!」
離れた2人に対し炎の槍を飛ばすと、それを見ていたマノンが弓でオークマジシャンを狙い撃った。
飛んできた矢にオークマジシャンが気づき杖で打ち払う。
「他にも隠れているのか、小賢しい! ブリザード!」
私達に向けて範囲魔法を放たれる。この場所に残ると、かなりのダメージを受けるはず。
「マノン走って!」
マノンの手を取って、ブリザードの範囲外へ走る。
「ははは、見つけた! アイスランス!」
氷の槍が私達を目掛けて飛んでくる。
「マノン伏せて!」
マノンの手を下に引きながら私もしゃがむ。
詠唱破棄とかずるい! ただ魔法名を唱えるだけで好き勝手撃ってくる。こんな相手、どうやって倒せばいいのよ!
ギルドマスターと隊長がそれぞれ襲い掛かるとオークマジシャンの意識がそちらに向く。
今がチャンスですね。
「マノン、逃げるわよ!」
あの2人ではおそらく勝てない。だから2人が倒される前に逃げないといけない。
マノンの手を引き逃げようとするが、マノンは動こうとはしない。
「逃げない! トーカもカレンも戦っている!」
マノンの目はその意思はまだ折れていない。あれを前にまだ戦うつもりでいるようだ。
「あの2人は特別よ! 私達とは違う。私達では4人がかりでもあのオークマジシャンには勝てないわ!」
その英雄が負けたような相手に、一般人が何人いても、勝てる訳ないのよ!
「それでも私は、あの2人と一緒に行きたいって思ったから! だから! アレッサにも協力して欲しいのです!」
「協力と言っても、私には何もできないわよ……」
私の魔法じゃ通用しないもの。撃ってもたいしたダメージは与えられないわ……。
「アレッサには指揮能力があります! 私がどう戦えば勝てるのかを考えて教えて欲しいです!」
指揮なんて少ししただけじゃない、それで勝てるほどオークマジシャンは甘くはないわよ……。
……でも、もし勝つには……私の魔法とマノンの矢のタイミングを合わせて、それぞれ別方向から撃てば、防ぐことはできないはず……。
「いいわ、そのかわり失敗は許されないわよ」
「はい!」
マノンに作戦を伝えると、私とマノンはオークマジシャンを挟んでほぼ反対方向に隠れる。ちょうど反対だとオークマジシャンが私達の攻撃を回避したとき、その攻撃が自分達に飛んでくるのでそうならないような位置にいる。
ハンドサインでいくつか合図を決めた。私が合図を送り、それに合わせてマノンが攻撃を撃つ。
「来たれ、我望むは、終末の炎。かの魔物を撃ち滅ぼせ。ファイヤーボール!」
小声で詠唱をし、魔法でオークマジシャンの顔を狙う。
「ふん! こんなものが我に効くか」
オークマジシャンがファイヤーボールを杖で払うと、オークマジシャンの左足に矢が突き刺さる。
「ぬ? 小賢しい! この程度、ダメージとは言わぬ!」
マノンに向け魔法を放とうとしているタイミングに、もう1度顔を狙いファイヤーボールを撃つ。
「あまいわ!」
魔法は杖で払われたけど、これでいい。ギルドマスター達も満身創痍ながら、オークマジシャンに斬りかかる。
「ええい、鬱陶しい! いい加減くたばれ!」
こちらが絶妙なタイミングで攻撃をし始めたので、相手のペースを崩すことに成功したようだ。
「風よ、気高き風よ、私と共に勝利の一手を、ウインドカッター!」
私は執拗に顔を狙い魔法を撃つ。またしても払われるが、そのタイミングでマノンの矢が右足に刺さる。
「ぐっ! この程度、ダメージと言わぬと言っただろうが!! 何発撃たれようと――」
喋ってる隙に詠唱をし、またしてもファイヤーボールを顔を目掛けて撃った。
「今我が喋ってるところだ!!」
怒りに任せて杖で魔法を払う。もちろんそのタイミングでまた矢が左足に刺さる。
かなりお怒りの様ね。でも戦いはこれからよ。
「このー! 隠れてないで堂々と戦え! この卑怯者めが!!」
く、意外と言葉が突き刺さるわね……。でも……悪いけど、私も負けたくないのよ!
隊長がオークマジシャンに挑み、杖で殴られ吹き飛ばされる。そしてそのまま意識を失ったようだ。
「ははは、まずは1人」
1人減ったことで、オークマジシャンも冷静さを取り戻したようだ。
マノンに戦い方を変えるハンドサインを送る。
今まで顔を狙ってファイヤーボールを撃っていたのを、足を狙って撃つ。
「ぬ! またしても小賢しい戦い方よ!」
その魔法を払った瞬間、マノンの矢が払った右腕に突き刺さる。
矢の刺さった右腕を見ながらオークマジシャンは何か考えている。
「やってくれる……我がこうも好き放題されるとは、甘く見ていたのは我のほうか……いいだろう、認めてやる! 貴様らは、卑怯だが強いと!! 出て来い、せめて1度好敵手の顔ぐらい拝ませてくれ!」
……出て行くわけないでしょ。そんな見え見えの罠にかかると思っているのかしら?
「おい! 聞いているのか? 顔を少しでいいから見せろと言っているのだ!」
「どうやらお前には姿を見せたくないようだぞ」
「貴様ももう時間の問題だろう。まずは貴様を倒してからやつらを倒しに行ってやる」
ギルドマスターが剣を振り下ろすと、オークマジシャンは杖で剣を防ぐが、刺さった矢が痛くて顔をしかめる。その隙を逃すギルドマスターではなく剣で何度も斬りかかる。
「ま、待て! 少しトイレに行き――」
左腕にマノンの矢が突き刺さる。
「ぐ、卑怯だぞ! 3人がか――」
前からはギルドマスターが左右からは私とマノンの攻撃が襲い掛かる。
「ま、参った! 我の負けだ!」
……勝った。なんとか勝つことができた。
隠れていた場所から出て、オークマジシャンに近づく。
「ふふふ、勝った、勝ったぞ!」
勝てないと思っていた強者に勝つことができた!
オークマジシャンが私の姿を見て嫌な笑みを浮かべる。
――まさか。
「引っかかったな! ファイヤーラ――」
マノンがオークマジシャンのわき腹にナイフを突き立てる。
「――くっ」
刺されたオークマジシャンが、刺された痛みで堪えきれず膝をつく。
「最後まで油断をしては駄目です!」
「そ、そうね。助かったわマノン」
あの2人を特別だって言ったけれど、マノンも十分特別だと思う……。
……もしかして、普通なのは私だけかしら?
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