31 委員長を休ませたいのに
陣の中央のフォローを終えた僕は、左翼へと帰ってきた。真ん中にいるアレッサとマノンに帰宅の報告をする。
「ただいま、2人とも。やはり大丈夫だったようだね」
被害らしい被害は見受けられない。どうやら2人とも、上手くやっていたようだ。
「ああ、おかえり、ずいぶんと長い5分だったな」
「おかえりなさい! 5分間のお留守番、完遂しました!」
やっぱり遅刻していたのがばれてる……。5分と言わず、10分と言っておけばよかった……。
「ごめん。中央の隊の隊長さんが医者のおじいさんといちゃいちゃしてたから……」
「え? 隊長さんは男性ではなかったのか?」
「いや、男だよ」
「………え? え? 男同士でいちゃいちゃしていたの!?」
「そうだけど、詳しく聞きたい?」
よし! これで誤魔化せる! これで怒られない。
「………男同士でいちゃいちゃ。それって、その、どんな風に……なのかな……」
アレッサが顔を赤らめて、伏し目がちに僕に聞いてくる。すごく期待しているのが分かるけど、今はスルーする。
「ごめん、今から左翼の指揮をするから、後で話すね」
話を切ったので、アレッサががっかりしているが、気持ちを切り替えてもらおう。ごめんね。
「……そうだな、その話は後でじっくりと聞かせてもらうとしよう」
凄い食いつきだった。BL本とか販売したら、この世界でも売れるのかな?
おっと、僕も切り替えないと。
「聞けー!! 中央の問題は解決した! これで街のことは気にせずに戦える! 後は残りの魔物共を蹂躙してやれ!!」
「「「「おーー!!!」」」」
ここの士気は本当に高いよね。ギリギリで戦っていた中央とは大違いだよ。
その中央も、隊長が戻ったおかげか士気も上がってきているのが分かる。あの半壊していた隊が、しっかりと息を吹き返したようだ。魔物を押し返し始め、最初に並んでいた配置へ戻ってきた。
「あの隊長もやるじゃない」
魔物の数も半数以下に減っているから、負ける要素はなさそうだ。このままのんびり高みの見物も悪くはないかもね。
「伝令ー!」
兵士が僕の下に走ってくる。
このタイミングで伝令? 何の用件だろ?
「ごくろうさま。それで伝令ってどういうこと?」
「は! 中央の陣は前進するので、それに合わせて前に出てほしいとの事です!」
陣を押し上げるのか。このまま勢いに乗り、一気に魔物達を倒してしまおうって訳だね。
「分かった、のんびりしていると追い越すから、と伝えといて」
「は!」
返事をし、そのまま走り去ってしまった。
ちょっと隊長さん、気合入りすぎじゃないかな。でもこれが成功すれば、この戦いも終わるだろうね。
あとは……あれだけか……。
あれはうざいけど、実力だけは本物だから、きっと隊長さんでは無理だろうね。そうなると僕と委員長、そしてギルドマスターあたりで戦うのが一番だとは思うけど、タイミングが合うかどうか。あと、委員長も戦いの為に一度休ませたほうがいいね。
「委員長ー! 一度下がって休んでて!」
委員長が僕のところに戻ってきた。せっかくの執事服が魔物の血まみれで、洗い落とすの大変かも……。
「この程度ならまだいけるわよ」
この戦闘狂は……。戦場に放り込むと、止めないと帰ってこないから。
「あれとの戦いの為に、少し休んでて。今度はちゃんと勝つつもりでしょ」
前回は負けなかったけれど、1対1では負けてたからね。
「……そうね、あれがいたわね。分かったわ、少し休ませてもらうわね」
インベントリからチョコとジュースを取り出し委員長に渡すと、少し嬉しそうに最後尾に下がっていく。
前に出るタイミングで委員長が抜けるのは痛いけど、委員長の代わりに僕がいけば士気もあがるし一石二鳥かも。
「僕が最前列に出るぞ! それと同時に左翼を押し上げる! 中央と右翼も上がってくるが、左翼こそが最強だというところをみせてやれ!!」
「「「「おーーー!!!」」」」
僕が前に行き、左翼をゆっくりと前進させていくと、それとほぼ同時に中央の隊も動き出す。そしてそれに合わせて右翼も前進し始めた。
意外とタイミングが合ったね。後は押し出すペースなんだけど、思ったよりも速いかも……。
委員長を休ませたい僕としては、あまり望ましくないペースだ。
「追い越すとか、言わなきゃよかった……」
後の祭りだけど……、こうなると合わせていくしかないか。
「左翼も押し出すぞ! 中央に負けるな!!」
「「「「おーーーー!!!」」」」
左翼のみなが前に前にと進んでいく。士気も高く、実力もあるメンバーが揃ってるだけあって前進速度がかなり速い。オーガが現れても、矢や魔法で顔を攻撃し、怯んだところを剣や斧で斬り付け倒している。中央の連中も、こいつらを見習えばいいのに。
ただ1つ問題が……。勢いがありすぎて、中央の隊を抜き去ってしまったことだ……。
左翼の最後尾が、中央の最前列よりも前に出ているってさすがに不味いよね。
また怒られる理由が1つ増えた……。
「よくやった! これで中央の連中も僕達の力を理解しただろう! 連中がここまで来るのを待っていてやろうではないか!!」
だからこれ以上進まないでね。本当に、お願いだから……。
「「「「おーーーー!!!」」」」
こいつらテンション高すぎなんだけど、変な薬やっているんじゃないだろうね。
中央の隊が僕達に追いつこうと、急いでいるのが分かる。ゆっくりでいいのに。
すると今度は右翼が突出し始めた。
ギルドマスターは、いったい何やっているのかな?
中央も右翼に合わせようと隊を進めているので、左翼も合わせて進めないといけないよね。
きっと進めって言うと、他の隊を追い抜いてしまうんだろうね……。
魔物達の中には、逃げるものも出始めている。戦局はすでに決したと言っていいだろう。
委員長をもっと休ませてやりたかったが、おそらくそうもいかないだろう。
こうなると、たぶんあれが出てくるだろうから。
「左翼前進! このまま魔物の群れのボスを倒しに行くぞ!!」
「「「「おーーーーー!!!」」」」
左翼が前進を開始すると、中央と右翼の隊が止まる。止まった奥から兵士や冒険者がやられているのが見える。
「ぬるい! ぬるい! ぬるいわー!」
「この程度の雑兵などに、我らを止められると思ったか!」
「街を守りたければ、我らを倒してみせろ人間族ども!」
「「「我らオーク族の戦い、見せてやるわ!!」」」
……出た、3馬鹿兄弟。
いつもお読み頂きありがとうございます。
よろしければ『ブックマーク』『評価』をよろしくお願いいたします。




