05 実戦経験
「……さい、……なさい、いい加減起きなさい!」
……ん? なに?
「……起きてるけど」
「じゃあさっさとベッドから出なさい!」
目を開けると委員長が側にいる。
「……分かった」
あー、昨夜ラビリポルタに着いたんだった。
「ほら、2人はもう下で朝食食べているから、あなたも早く準備をしなさい!」
確かに2人がいない、2人ともずいぶんと早起きだね。
サッと着替える。
「さぁいくよ!」
「はぁ、テンションの差が激しすぎるわよ」
階段を下りると2人とも食堂にいた。マノンの前には朝だというのに大盛りだ。
「2人ともおはよー」
「うむ、おはよう」
「おはようございます!」
マノンの前にある料理を見ているとそれだけでお腹いっぱいになりそう。
サラダとスープだけ注文すると、アレッサの隣に座る。
「さっき冒険者の人が話してましたけど、どうやらこの迷宮は攻略されたみたいですよ!」
ん? 秋人達が言ったのかな?
「そうなんだ、誰が攻略したか聞いた?」
「それがどうも分かっていないみたいです!」
分かっていない? それなのに攻略されたことは知っている?
「どういうこと? 分からないのなら攻略もされたかどうかも分からないでしょ?」
「迷宮は攻略されると、守護者が出てこなくなるそうなのです! そして守護者部屋の扉が消えて無くなるそうです!」
そうなのか、じゃあ秋人達が言ったわけじゃないんだ。
「そうなんだ、まあ僕達が今回行くのは50階層までだからあまり関係のない話だね」
アレッサが食後のお茶を噴出す。汚いなぁ。
「ご、50階層!? A級冒険者でも苦労する階層ですわよ!」
断罪も行っていたし問題はないでしょ。
「そんなに深いところまで潜るのですか?」
「様子見しながらだから、無理なら途中で引き返すよ」
今回はパーティーを組んでの初戦闘になるから無理をするつもりはない。あくまで経験とチームワークの向上が目的だから。
「ま、まあ我の魔法があれば50階層も夢ではないからな、安心してついてくるといい」
「なるほど、アレッサは先頭を希望と」
「い、いや我は魔術師ゆえ後衛で援護してやろう」
隊列は既に決まっているけどね、僕と委員長が前と後ろで間にアレッサとマノン。安心の隊列だよね。
「じゃあ迷宮まで行くよ」
「ええ」
「はい!」
「え!? 私の話を聞いてる!?」
街を出て迷宮に向かうと冒険者達の視線を感じる。やはり4人だけのパーティーというのは珍しいのだろう。
「ふふふ、ついに我も迷宮デビューか、どれだけこの時を待ちわびたことか」
分かる、その気持ち。初迷宮はやっぱり楽しみだよね。
「迷宮なんてそんないいものじゃないわよ」
ここで水をさすのが委員長らしいとこだよね。でも秋人が跳ばされたり、臭かったり、ゴキが出たり、変な3兄弟が出たりと言われてみればあまりいいものじゃないかも。
「否! ここから始まるのだ、我の華麗な冒険譚が!」
華麗な冒険譚?
「あなたの場合、罠に嵌らないように注意したほうがいいわよ」
罠か、あまりいい思い出がないな。
「走ってうっかり罠を踏まないようにね」
「プッ、迷宮内で走って罠を踏む間抜けなんているわけないだろう」
……アレッサに間抜けって言われた。
◇
「あ! 迷宮の入口が見えてきました。人がいっぱいいます!」
「相変わらずここは活気があるわね、でも私達は外に用はないから受付に並ぶわよ」
攻略されたというのに以前と変わらない。みな攻略するために来てるわけではないのだね。
「攻略されていなければ我が攻略したものを」
いや、少なくとも今のアレッサには攻略は無理でしょ。
受付でギルド証をみせ中に入っていく。
「こ、ここが迷宮か。ふふふ、魔物どもを血祭りに上げてくれるわ……」
あれ? 言葉に緊張がみえる。入ったとたん迷宮の空気を感じ、臆したのかな?
「じゃあまずは僕が先頭を歩くから2人はその後ろからついてきて、そして最後尾が委員長で行くよ。僕と委員長は抑えるだけだから、2人が交互に倒していってね」
「はい!」
「わ、分かりましたわ」
10階層まではさっさと行っちゃおう。
やはり入ってすぐは冒険者が多く魔物がいない。3階層ぐらいになってくるとちらほらと出てくる。
天井にバッドがいたので指差す。
「あそこにバッドがいるからアレッサが攻撃してみて」
「いいい、いいですわ。私の魔法を見せてやりますわ」
ただのバッドなんだからそんなに気を張らなくてもいいんだけどね。
深呼吸を数回すると、杖をバッドに向け詠唱を始める。
「来たれ! 我望むは、終末の炎! かの魔物を撃ち滅ぼせ! ファイヤーボール!」
ファイヤーボールがバッドに当たると、バッドが落下してくる。
その落ちたバッドに対し杖で何度も叩く。
「大丈夫よ、もう倒しているわ」
「ほ、本当ですの!? ついに私がこの手で魔物を倒しましたわ!」
アレッサは魔物に対し、何か思うところがあるのかもしれない。
「うん、おめでとう」
「そうね、おめでとう」
「おめでとうございます!」
次々に祝福の言葉を掛けると、アレッサの目に涙が見える。
「ありがとうございます。ですがまだ最初の1匹、頑張ってもっと多くの魔物を倒して見せますわ!」
ガッツポーズをしながら闘志を燃やしている。でも50階層まで行けば、嫌でも多くの魔物を倒すことになるけどね。
「さて、次はマノンの番だね」
そう言っていたら魔物が近づいてきた。騒いでいたからかも。
「あ! ゴブリンです!」
マノンがゴブリンを見つけると、弓に矢を番え弦を引く。そして狙いを定め撃った。
マノンが撃った矢は真っ直ぐゴブリンの額に突き刺さった。
「上手いね、綺麗なヘッドショットだ」
「ええ、見つけてから撃つまでの流れも早かったわ」
「うむ、悪くなかったぞ」
アレッサのキャラが元に戻ってる。1度倒して自信がついたのかも。そういや秋人もそうだったね。
「ありがとうございます!」
マノンの嬉しそうに笑う姿はまさに天使だよね。
バッドとゴブリンをインベントリに放り込む。
「さぁ、どんどん行くよ」
◇
7階層にきてアレッサの欠点を1つ見つけた。それは魔力の無さだ。僕達も魔法を撃ちまくっていたが、もともとのステータスが高かったので、それも可能だったらしい。
そう考えると天沢はかなり優秀だったんだね。
魔力が切れたアレッサは顔色も悪く、フラフラしている。
「はぁはぁ」
インベントリから魔法薬を取り出すとアレッサに渡す。
「ほら、これ飲んで」
「あ、ありがとうございます……」
魔法薬を受け取るとそのまま飲み始める。
飲み終えると、だいぶ顔色が良くなったようだ。
「あら、凄くすっきりしましたけど、何だったのかしら?」
魔法薬の瓶を見ると目を大きく開く。
「あ、あの、これは魔法薬ですか?」
「そうだよ、アレッサは魔力切れだったし」
「こここ、このような高価なものを……」
あ、固まってしまった。
確かに王都で魔法薬を買うと50万以上するが、秋人の商品売買だと3万ぐらいで買えるんだよね。王都はボッタクリ価格。
「気にしなくていいよ、これは安く仕入れたものだから。魔法薬でアレッサが強くなるなら安いものだよ」
「あ、ありがとうございます」
アレッサが感動している。意外とチョロインかも。
魔法薬を飲んだアレッサは気合が入ったのか、魔法の技術が少しずつ上がっている。詠唱速度も速くなり高速詠唱を覚えるのも時間の問題かもね。
それに対しマノンは安心の命中率と射撃速度だ。狩りの経験者だけのことはある。
そんな2人を連れているので思っていたよりも早く10階層に到達した。
お読み頂きありがとうございます。
よろしければ「ブックマーク」「評価」をよろしくお願いします。




