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僕が主人公じゃないの!?  作者: 阿兼 加門
第2章 メイドと執事と盗賊と
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06 カレー回


「クククッ、まさか迷宮初日で10階層までとは、自分の才能が怖いな」


 なんかアレッサが悦に入っているが10階層までならそう凄いものでもないと思う。


「問題はこの階層から罠があるから注意しないといけないよ」


「ほう罠か、だがこの我にかかれば罠など恐れるに足りんわ!」


 あー、だいぶ調子に乗っちゃってるけど大丈夫かな?

 歩いていると罠の目印でもある色の違った床が見えてくる。


「ほら、そこの床。こういう色違いの床や壁が罠のスイッチだから」


 そう説明すると、初めて見る2人は興味深く色違いの床を眺めている。


「これを踏むとどうなるのですか?」


「上から十数本の矢が降ってくる、下手をすれば即死だね」


 僕が天井を指差すと、2人が天井を見て後ろに1歩下がる。


「そ、そうか、気をつけたほうがよさそうだな」


「そうですね、魔物より怖いです」


「実際、魔物より罠のほうが危険だよ。魔物なら僕達がフォローできるけど、罠ならできないこともあるからね」


 その言葉に2人とも顔が強張った。罠は分かり易いけど、その代わり危険だということを分かっていて欲しいからね。


「普通は罠にかかる人なんてほとんどいないわよ、下層に行っても罠の見つけやすさは変わらないから」


「そうか、なら安心だ」


「下層に行ったのですか?」


「ええ、ちょっとね」


「ええー!? その話聞きたいです!」


「ほらほら、おしゃべりしてないで行くよー」


 できれば今日中にもう少し進みたいしね。



 ◇



「じゃあ今日はこの辺りで休むよ。周りには冒険者もいないし、ちょうどいいでしょ」


 あれから12階層まで進んだので、そろそろ休むことにする。一気にレベル上げしても体に感覚が追いつかないからね。

 インベントリからテーブルや椅子、料理道具に食材を取り出す。


「わ! 凄いいっぱい持ってきてたのですね、何を作るのですか?」


「カレーライスだよ。やっぱり最初はこれかなって思ってね」


 委員長と天沢も喜んで食べてた1品。作ったのはほとんど2人だったけど。


「初めて聞く料理です!」


 こっちにはないからね。香辛料は高いし必要な香辛料を揃えるのが大変だしね。僕の場合必要な香辛料が何かは知らないけど。


「ふふふ、委員長が大好きな料理だよ。前に迷宮で作ったときは御代わりしてたほどだよ」


「あれは仕方がなかったのよ。久しぶりだったから……」


 ちょっと恥ずかしそうにしてる。


「楽しみです。私も料理のお手伝いします!」


 マノンは料理ができるんだ。もう1人はどうだろ?


「アレッサは料理できるの? 迷宮だと全員で料理を作るっていうのがうちのルールなんだけど」


 アレッサは見た目はできそうなイメージなんだけど、元お嬢様だからできないかもね。


「クククッ料理か、我がとびっきり美味いものを作ってやろう!」


 凄い不安。マノンの楽しそうな顔が一気に絶望的な顔に変わった。上げて落とされた気分なんだろな……。


「アレッサは僕と皮むき担当ね、2人の楽しみを奪うようなことはしては駄目だよ!」


 今度はアレッサの顔が絶望的な顔に変わる。あっちもこっちも忙しいな。


「なっ何故だ!? 我が至高の料理を作ってやると言っているのに!」


 どこの料理対決だ! 素人の作るゲテモノ料理なんて、わざわざ食べたくない。


「委員長、それでいいよね。マノンも安心していいよ」


「それがいいわ、皮むきなら失敗しても替わりの食材を使えばいいだけだし」


 委員長もホッとしている。あの発言を聞けばみんな不安になるよね。


「はい! 精一杯頑張ります!」


 やっぱりマノンは笑顔が一番だ。

 アレッサにジャガイモと人参とピーラーを渡して使い方を教える。


「こ、これは『ゆきち商会』のピーラーではないか! なかなか手に入らないと聞いていたが、よく手に入ったな」


「ゆきち商会って……。あなた何やっていたのよ……」


「うん? ゆきち商会と何かあったのか? 颯爽と現れ、颯爽とどこかにいってしまった流れの商会らしいのだが、商会長はかなりの商売上手とは聞いたことがあるな」


「ゆきち商会は僕がしばらくやっていた商会なんだよ、お金がそこそこ必要だったからね」


 委員長は呆れた顔をして、アレッサは驚いた顔をする。みんな本当に忙しいな。


「冒険者ギルドで言っていた商売のことですよね!」


 そういやマノンには話をしてたね。


「そう、お金も貯まったし、辞めちゃった」


「辞めちゃったって……、化粧品関係は凄く評判良く手に入らなかったというのに……」


 化粧品は凄く高く売れたなー。他の商品を売るのが馬鹿らしくなるぐらい儲かった。


「化粧品はまだあるからいくつかあげるよ」


「いいのですか!」


 凄い食いつき。アレッサは元が十分綺麗だからこれ以上綺麗になると喋ったときのギャップでがっかりする人が増えそう。


「いいよ、マノンにもいくつかあげるね」


「私ですか? 私なんかが貰っても……。高いものなんですよね?」


 マノンは食べ物なら絶対飛びつくのに、化粧品より食べ物のほうが喜ぶんだろうな。


「そこまで高くないよ。今度一緒にやってみよう」


「わ、分かりました!」


 やっぱりちょっと遠慮がちだ。


「マノンの場合はお菓子とかのほうが喜びそうよね」


「お、お菓子ですか。食べてみたいです!」


 ここは異世界での定番のプリンだよね。


「じゃあ迷宮を出たら委員長がプリンを作ってくれるよ」


「そこは自分で作るところじゃないかしら?」


 またまたご冗談を。


「ごめんねマノン。委員長が作りたくないみたいだから」


「ちょっと! 作りたくないなんて言ってないじゃない! 分かったわよ、迷宮を出たら作るわ!」


 さすがツンデレ委員長。


「わーい、楽しみです!」


「変わった香りがするが、これはもしや香辛料が入った料理なのか?」


 アレッサが匂いをかいで、不思議そうな顔をしている。


「ええそうよ、様々な香辛料が混ざった料理かしら」


「また高級品を惜しげもなく使うとは、ゆきち商会とは本当に恐ろしい商会だな」


「高級品なのですか? 貴族様が食べる料理なのですか?」


 ルーは10皿分300エルの庶民料理です。


「ふふふ、きっとこれを食べるともう普通の庶民の料理では満足できなくなるよ」


「そんなっ! でも食べたい!」


 ご飯も炊けたし後少しかな。


「食べるときっとマノンの大好物がカレーライスになるはずだよ」


 カレーライス、好きじゃない人もいるけどね。


「できたわよ、マノン、よそうのを手伝って頂戴」


「はい! お任せください!」


 テーブルにカレーライスが並ぶ。

 そろそろ僕の出番だね。


「福神漬けもあるよ!」


 ラッキョ派の人はごめんなさい。


「お皿に置いておきなさいよ」


 反応が相変わらず冷たい。やっぱりラッキョも用意しておくべきだったか?


「じゃあ食べましょう、福神漬は好みで入れたらいいわ」


「はい!」


「変わった料理だな」


「いただきー」


 アレッサは警戒しながら、マノンは警戒することなく口に入れている。


「んーーー! おいしーです!」


 マノンは料理を食べてるときが一番幸せそうだね。僕も幸せになってくる。


「ほう、なかなか美味ではないか」


 アレッサは驚きながらも上品に食べている。でも食事の進みが普段よりも少しだけ早い。


「御代わりもいっぱいあるから遠慮なくしてね」


「御代わり頂きます!」


「うむ、我も少し頂こうかな」


 普段、御代わりをしないアレッサが御代わりとは。

 カレーはやっぱり最強だね。


気がつけばカレー回になっていました。そんな予定ではなかったのですが……。


お読み頂きありがとうございます。


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