38 オーク3兄弟
本日2話目
121階層に下りた僕たちは扉を開け中に入った。
中は今回も闘技場タイプ、正面に3体の鎧を着たオークが立っていた。
「今夜はトンカツだー!」
ひゃっほーい。
「あれを食べるのかしら?」
委員長が少し引いている。
「私もあれはちょっと……」
天沢も引いてた。
まあ僕もあれを食べるつもりはないけど。
よく異世界物でオークが豚肉みたいな味で美味しいって言うけど、よく食べられるものだと感心する。
知らずに出されたのならともかく、オークを自分で解体して食べるとか僕にはちょっと無理だ。
「トンカツとは何かは知らないが、我らオーク族を食料として見ていることだけは分かった!」
「だが、我らオーク族もただでは食われてはやらん!」
「我らを食したければ倒してみろ人間族ども!」
「「「我らオーク族の誇り、見せてやるわ!」」」
そう言うと3馬鹿がマッスルなポーズを決めた。
「暑苦しい」
「暑苦しいわね」
「暑苦しいです」
この3馬鹿がここの魔物か、もう倒さないから通してくれないかな?
「それで委員長、こいつらは何なの? 普通のオークじゃないよね?」
「ええ、オークキング、オークジェネラル、オークマジシャンよ」
「強そうですね、ちょっと変わってますが」
王に将軍に魔術師か、バランスがよさそうだね。
「とりあえず五月蝿いしさっさと倒して次に行こうか」
「ええ、それがいいわ」
「はい」
「待て待て、我らを簡単に倒せると思ったら大間違いだ!」
「そう、我らは泣く子も黙るオーク3兄弟!」
「我らを恐れぬならば、かかってこい!」
……なんか凄いうざい。
「委員長がジェネラルを、天沢がマジシャンを、僕がキングと戦うよ」
「ええ、早く倒さないとペースを握られそうね」
「はい、何か凄くやり辛いです」
委員長と天沢がそれぞれ自分の相手と対峙する。僕もオークキングに魔法を撃ちこんだ。
「ファイヤーランス!」
「アクアランス!」
僕のファイヤーランスにキングがアクアランスで対抗してきた。
こちらの行動を読まれた? 魔法同士がぶつかり相殺される。
「ふはははは、やるではないか。ではこれならどうだ、ダークバインド!」
僕の足元の床が黒くなると、そこから鎖が現れ僕を捕まえようとする。僕は避けるため真上に跳ぶと、
「ダークランス!」
キングが次の魔法を放ってくる。空中に障壁で足場を作りそれを蹴ることでダークランスから逃れる。
接近して戦おうと一気に近づくと、キングも腰に下げている剣を抜き僕に向けてきた。
顔や鎧の隙間を狙って突きを繰り出すが、悉く防がれてしまう。
「こうも防がれると自信なくすよねー」
「ふはははは、我と戦うにはまだ早かったようだな」
2人を見ると、2人もまた攻めきれずにいる。オーク達は戦い方が上手く、経験の差を見せつけてくる。
「ふはははは、お前達は弱くはないが経験不足なのだよ。戦い方が単調で読みやすい。ただの魔物相手ならそれでも通用するが、我らには通用しないわ!」
いちいち笑うな鬱陶しい。だけど言っていることはもっともだ、人との戦いはステータスの差でなんとかなるから技術を身につける必要がなく、訓練を怠ってきたのだ。
僕達の戦い方は魔物との戦いに特化していると言ってもよいだろう。
「そうだね、僕達は知性のある相手との戦闘経験はほとんどないからね。だから今回はいい機会だよ、お前達との戦いを通してその技術を盗んでいくことにするよ」
「ふはははは、技術を盗むか、その通りだ! どんな相手でも侮るようなやつは駄目だ、相手の戦い方を見て、考え、試し、そして盗め! そうすれば自ずと強くなっていくものだ!」
凄いうざいオークのくせに真っ当なことを言う。こいつの技術を根こそぎ盗んでやる。
「ダークバインド!」
キング使っていた魔法を模倣してみる。発動するかの不安はあったが、しなければそれはそれでフェイントになると割り切った。
キングの足元が黒くなり鎖が現れキングを捕らえようとしたので、キングは慌てて横に飛び出す。
さらに先ほど使われた魔法をお見舞いしてやる。
「ダークランス!」
キングが目を開き驚きつつも魔法を放ってくる。
「ダークランス!」
魔法が衝突し、相殺されたが、さらに持っていた槍を投げつけ、同時にダークバインドを使う。
槍は剣で弾かれたが、魔法が発動し鎖がキングを捕らえた。
「ふはははは、やるではないか。我の戦い方を真似しただけでなく、さらに2手加えてくるとはあっぱれだ!」
捕まっているのに何故こんなに偉そうなんだ……。
「だが我もキングと呼ばれし者よ、これしきの鎖で捕らえておくことなど……」
鎖を引きちぎろうと体に力を入れて必死に逃れようとしているが、鎖の上から障壁で包んだので抜け出すことは不可能だ。
「何故だ? 何故抜けん? あり得んぞ、我はキングと呼ばれし者だぞ!」
「もっと戦い方を教わりたかったんだけどね、まさかこうもあっさり捕まえてしまえるとは……」
「ならばこの鎖を解けばいい、もっと教えてやるぞ! この我が直々に教授してやる、光栄に思うがいい! ふはははは!」
解く訳ないだろ。暇なときならそれでもいいけど、ここで解いたらあの2人に怒られてしまうじゃないか。
こっちが騒いでいたので他の2体のオークもキングが捕まっていることに気がついた。
「兄者!? まさか兄者が負けるなんて! すぐに助けますぞ兄者!」
「我もすぐに行きますのでしばしお待ちください!」
これで2人にも捕まえたことが伝わったから、ますます逃がすわけにはいかなくなった。
2人も僕が勝ったことを確認し、戦いに余裕が出てきたようだ。というか相手のオークに余裕がなくなり、焦って自滅している様に見える。
このままキングを倒してしまおうと思っていたが、2体のオークの焦る姿を見て、捕らえたままのほうが上手くいくなと確信したので放置しておくことに決めた。
倒してしまってあの2体を怒らすほうが厄介だろう。
「じゃあ僕はしばらく見学でもしているかな」
槍の穂先をキングの顔に当てる。
「おい、お前に矜持と言うものはないのか! 敗者をこのように扱うとは、勝者として有るまじき行為だぞ!」
魔物がそんな発言をするとは驚きだ、魔物にも誇りとかあるのか?
「じゃあそちらが勝ったら僕達をどうするつもりだったの?」
「ん? いや、それはあれだ……す、凄く大切に扱うに決まっているだろ……」
はいダウト!
嘘吐きさんには槍をプレゼントー。
「ぎゃーーー! 痛い、痛い、穂先がちょっと刺さっているぞー!」
キングが叫び声を上げると向こうから「「兄者ーー!」」と言う声が聞こえてくる。
効果は抜群のようだ。ツンツン。
キングが悲鳴を上げる度、他のオークの意識がこちらに向くので、委員長達は優勢に戦っている。
「魔物同士ってもっとドライな関係なのかと思っていたけど、そうとは限らないんだな」
「当然だ! 我ら兄弟をそこいらの魔物と一緒にしてもらっては困る!」
ふーん。まあ喋れる時点で普通の魔物とは違うのだろうな。
2体のオークがこちらに走ってきた。それを委員長達が慌てて追いかけている。
「あれ? なんかきたよ?」
「我らの絆を舐めてもらっては困るな!」
何かかっこいいことを言っているな、縛られてるくせに。
2体が僕の前に来るとそのまま土下座をする。
「「この命は差し出しますのでどうか兄者だけはお助けください!」」
……え?
委員長達も来て、そして戸惑っている。
「これ、どうしよう……」
「まさか魔物が土下座をするなんてね……」
「それも自分のためではなく他の魔物のためになんて……」
どうしようと言いつつも答えは出ているんだけどね。
土下座しているオークを障壁で包み動けなくする。
「2人とも行こうか、こっちも戦わずにすむならそのほうがいいし」
「はぁ、わかったわ。今回はいい勉強になったもの、次はちゃんと勝つわ!」
「そうですね、私も普通にやっていたら1対1じゃ勝てませんでしたから」
2人の賛同も得られたし、次の階層に向かい歩き始める。
「ふん、今回は我らの負けと言うことにしておいてやるわ。だが次は我らが勝つ!」
「今回の経験を生かし、しっかり鍛錬しておくことだ!」
「だが、どんなに鍛錬を積もうとも、鍛錬に終わりはないと知れ!」
「「「お前達が鍛錬を怠った時、我らがお前達を倒しに行くから待っていろ!」」」
……最後まで暑苦しい。
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