36 委員長いきます
本日2話目
「ノーライフキングの杖、使わなくていいの? 能力的にかなりいい杖なんだけど」
「魔力+30、魔防+20、防御+10とかなりいい杖よね、センスはあれだけど」
「私にはちょっと派手すぎて……」
宝石がゴテゴテしてるもんね、どこの成金だって感じではある。
外で持って歩いていると違和感しかないけど、迷宮内なら見られるわけじゃないし気にしなくてもいいと思うけど。
まあ僕も持ちたくはないけど、高くは売れそうだよね。
階段を下りるとまた扉があった。
「またか、まぁやることは一緒だけど」
「じゃあ行きましょうか!」
委員長がやけに張り切っている。前回、前々回と僕と天沢が1対1で戦ったから、次は自分だと思っているのかもしれないな。
でもこの迷宮だと次は全く違うパターンと言うのが多いからがっかりしないか心配だ。
「はい、頑張りましょう」
扉を開けて中に入るが、前回とは違いまるで闘技場だ。
正面には5つの扉があり真ん中の扉は黒いが、他の4つの扉は白い扉だ。
「闘技場かな? 上には観客席みたいなものもあるし、観客はいないけど」
「扉が5つあるわね、相手は1体ではないと考えるべきよね」
1対1は無理かもしれないね。
「4つの扉は白いのでそこに入るのでしょうか?」
それだとこの場所が闘技場である必要はなさそうだけど……。
そう思っていると白い4つの扉が開き、中からそれぞれ違う魔物が現れた。
オーク、ブラックオーガ、クラーケン、そしてブラックトード。
あの大きなイカはおそらくクラーケンだよね? 他の3体は見覚えがあるけれど、クラーケンは初見だ。
「100階層にいたカエルがいるし……」
「おそらく全て守護者じゃないかしら? あのイカはクラーケンと言うのだけれど、きっと75階層の守護者じゃないかしら?」
やっぱりクラーケンか。てことは水の中から出ることなく倒した魔物か。
「確かに他の3体は守護者でしたね、ですがブラックオーガやブラックトードは前回複数で出てきてましたけど今回は1体のみですね」
そう考えると余裕なのでは? ブラックトードは前回5体に対し、今回は全部で4体しかいないのだから。
「以前戦った守護者達が大集合ね、こういうのって124階層ぐらいでやるべきじゃないの?」
「どこでやっても一緒でしょ、出てきた以上は倒すだけよ」
「124階層はもっと強い魔物がいるからこの階層になったのかもしれないですよ?」
それはありそう。ボスの前って大切だからね。
まぁここはさっさと倒して、そろそろ休むとしますか。
「じゃあ一度倒した相手だし、さっさと倒してしまうよ」
「ええ」
「分かりました」
エクスプロージョンで終わらせる。
そう思い魔法を撃とうとしたとき、ブラックトードがクラーケンのほうを向き、そのまま舌を伸ばしクラーケンを捕らえるとそのまま口に入れた。
は? え? 食べた?
いやいやおかしいでしょ、ブラックトードが大きいからといって3倍ほど大きいクラーケンを丸呑みって色々ありえないでしょ。
僕達が驚いているとブラックトードがブラックオーガとオークも口に入れてしまった。
「まさか仲間割れ?」
「あれだけ大きなものを食べたのにブラックトードの大きさが変わらないわね」
「えっと、ブラックトードだけを倒せばよくなったということでしょうか」
混乱する僕達を余所に、ブラックトードが変化し始めた。色が黒から赤黒くなり、額から角が、肩からクラーケンの足らしき触手が生えてくる。目つきも獰猛そうな目つきに変化した。
「変身した」
「おそらく『合体』と言うユニークスキルよ、かなり強くなっているわ」
「合体する前に倒しておくべきだったんですね」
委員長が前に出る。
「ここは私がやらせてもらうわね」
まあそうなるよね。
僕と天沢は少し下がる。
委員長がブラックトードに近づき蛇腹剣を構える。
ブラックトードも委員長を敵とみなしたのか委員長を見つめている。
委員長が蛇腹剣を鞭モードにし、ブラックトードを上から斬りつけるが横に跳び避けられる。
透かさず横に振るうが跳んで避けられる。
「サンダーランス!」
跳んで避けられないところに魔法を撃つ。ブラックトードは触手でガードするが、その触手にサンダーランスが突き刺さり、痛がっている。
怒ったのか委員長にその巨体で体当たりをしてくる。委員長が横に跳び避けたところに触手を伸ばされ委員長は捕まえられた。
「サンダーランス!」
至近距離からブラックトードに顔にサンダーランスを撃ちこむと、堪らず委員長を投げ捨てた。
投げられた委員長は空中でくるりと回り上手く着地する。
ブラックトードが委員長に対し口を開け舌を伸ばしてくるが、これを回避しその開いた口にファイヤーランスを撃ちこんだ。
さすがに口の中は弱いのか、苦しみゴロゴロ転がっている。
「そろそろ終わりにするわよ」
委員長が二ヤリと笑うと蛇腹剣を剣モードに変えブラックトードに突き刺す。そしてその場所に向かって魔法を唱える。
「サンダーランス!」
魔法を受けたブラックトードはそのまま動かなくなった。
正面にあった黒い扉が白く変わり開いていく。
「てっきり離れて魔法主体で戦うのかと思ってたよ」
「2人とも近接して戦っていたからついね」
「分かります、私も2人を見て近接用の戦い方を身につけようと思いましたから」
天沢が格闘術を覚えたのは僕達が原因だったんだ……。
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