第十四話 冷たい瞳
第十四話 冷たい瞳
ランタンに映された女性のその目を見た真は、あまりにもびっくりしてそのまま尻餅をついてしまった。
手に持っていたランタンもその時、手から離れて落としてしまった。ランタンはゴロゴロしながらあちこちと転ぶ。
身を守るための包丁も尻餅をつくときに闇の中のどこかに落としてしまった。
人が驚くと、声が出ないのかもしれない。
そんなに驚き、心拍数が急になっても真は口から声が出なかった。
実は「アッ」と悲鳴を出したかったのに…。
転んだランタンはその女性の足を映ってした。
肌は白い。赤いヒールを履いていた。
真とその女性との距離は何メートルはあるものの、彼女からはこっちに来ようとする気配はない。
真はまだ震えている手で転んだランタンを持つ。
もちろん彼女の足が動くのかを見ながらだ。
動いてないだけで、そちらは敵意がないのかどうかはわからない。
急にこちらに動いて来ても困る。
でも、真のその緊張感はすぐに溶けてしまった。
手に持ったランタンを彼女の足から上へと移していく途中に膝のところに人ではない関節部を見たからだ。
「マネキン」
そう…。
彼女はマネキンだった。
黒い断髪の女性はランタンを彼女の顔に向けて映しても相変わらずその無機質な瞳を閉じようともしない。
考えて見ると、マネキンなんてある場所には普通にあるものだが、ここに来るまでに「誰もいない」環境にだんだん慣れていた真としては人形のマネキンを見て人だと思ってしまったんだ。
でも、ちゃんと見ればうまくできているマネキンだった。
髪も普通の人のもののような鬘で、目も瑠璃とかが入ったのかランタンの光の方向によって光る様子がちがう。人の目のような透明感もあった。
目の周りや頬にも化粧のようにペインティングされている。もしや実際の化粧かも知れない。
触りたくないから確認する方法はないが…。
人に似すぎているせいか、その代わりに膝や腕などの関節部は誰が見てもこれはマネキン人形って感じの機械式の関節部だった。
考えて見ると、足音もせず、人がいきなり現れるのはおかしいだろう。
非日常が続いている今になったら何が起こってもおかしくないと思ったからか…。
真の判断力が落ちていたかも知れない。多分、判断力が落ちるには商店街の自動ドアの件も影響があるんだろう。
真しては運悪く、最初にランタンに映されたところがマネキンの顔のところだけだったから勘違いしてもしょうがない。
少し、そのマネキンを観察していたら少し落ち着いた真はゆっくりとそして気を付けながら周りを再びランタンで映してみた。
ちゃんと見たら、その女性マネキンの後ろにもほかにいくつかのマネキンがあった。
その外にもショーウィンドウとか、品棚とかが見えた。
どうやらここはファッション関係のショップ区画らしい。
ゆっくりと時計の反対方向に建物のなかを歩きながらランタンであちこちと映してみたら、壁に二階の入店リストがあった。
やはり先から見た通り、入店リストにはファッション関係のショップが多かった。
衣類や、美容関係とか…。
その中で真の目に入ったショップの名前が一つあった。
「100円ショップ○○〇」
日本全国のあちこちで結構看板が見える有名100円ショップチェーンの名前が入店リストにあった。
この店だけ、仲間はずれされた気もするけど、今の真にはそれはどうでもいい。
三階へ行けば、あの自動ドアを壊せる道具があるかも知れないけど、二階の中ではこの100円ショップだけが道具がある可能性があった。
入店リストの配置図からすれば、100円ショップの場所は一階のセキュリティー室からの廊下からスーパーマーケットに入って来た時にあった、新鮮コーナーの奥、冷凍庫とかがあった場所の上に当たるところだった。
戻って行くことになるけど、時計方向に戻って行くのがこのまま進むよりもっと早い。
真は迷わず、今まで来た道を戻る。
有名チェーンのその100円ショップの前についた真は妙な既視感がした。
「自動ドア」
そう、ここにも自動ドアがあった。
もちろん、自動なのに真がドアの前に立っても動かない。
この100円ショップの自動ドアはスーパーマーケットや商店街通路の自動ドアと形も違って、フレームなしのすべてがガラスになっていた。
持っているランタンで扉やその周りをちゃんと映して調べるが、ドアの上にセンサー見たいのはあるけど、スイッチや電源になれそうなものは見えない。
100円ショップはすべての壁がガラスになっていたので自動ドアの前でランタンを店の中に映してみた。
商品が揃っている品棚やレジとか以外に特別なものはなさそうだ。
どこでも見れそうな100円ショップの光景だった。
自動ドアが開かないのを除ければ…。
そんなに広くない店だそうで入り口はここだけのようだ。
自動ドアが動かないのは二階の灯がついてないのと関係があるかも知れない。
このままだと、ここの100円ショップの自動ドアを何とかしないと店の中には入れない。
「自動ドアを壊すか、自動ドアの電源を探すか」
真はとちらにするのかを悩んだ。
闇は恐怖の元かも知れない。
いくら真が緊張していて、気が弱くても普通の昼には先みたいにマネキンくらいで驚いたりしないだろう。
真っ暗な空間だからこそできる恐怖、それがあったからマネキンを見て人だと勘違いしてしまったのだ。
ホラー映画やゲームでもこんなところで定番みたいに出てくるのが、闇からもやもやと出てくる幽霊やうううと声を出すゾンビーみたいなものだから…。
余計にゾンビーのことを考えたら本当にゾンビーがでそうで真は怖くなった。
ここに来るまで死体なんか見たことがないからゾンビーとかが現れるの確率は極めて低いと思うけど…。
そんなホラーとかゾンビーとかの怖いことを考えていたら真はなぜかトイレに行きたくなってしまった。
実際、マンションを出てからはトイレに行ったこともないから、トイレに行きたくなるのもおかしくはない。
入店リストの配置図によると、トイレは100円ショップのみぎがわの角を曲がるとすぐ出る。
一階にあった、従業員が使っていた休憩室や納品のところだ。
急いではないけど、真はちょっと早い足でトイレに向かった。
予想通り、トイレは一階の従業員休憩室と納品のとろろにあった。男女用揃って。
一階と違うのは一階のセキュリティー室への扉があるところには壁があるだけだった。
特別なものがないから男子トイレに入り、用事を済ませた。
やはり、トイレも灯はついてないし、スイッチを入れても反応がない。
でお、洗面台の水はちゃんと出た。
やはり二階の電源は一階のスイッチとは別になっていると真は思った。
用事を済ませた真はトイレに行く時よりはちょっとゆっくりとした足で再び100円ショップの自動ドアの前まで来た。
そこで腕を組んで考え込む。
二階をすべて回って見たわけではないけど、入店リストから見るとファッション、美容関係のショップが多い。
役に立つ道具があるのであれば、二階ではこの100円ショップが雄一だろう。
だとして、二階はあきらめて三階へ上がってそこで道具になりそうなものを探すのかもまた悩みになる。
真は三階に行くのが気が進まなかった。
二階もそうだが、この闇の中で三階へ行くのがどうしても不安だったので気が進まなかったのだ。
これはさきのマネキンの件で闇がちょっと怖くなったかも知れない。
結局、真は三階へ行くより、この100円ショップの自動ドアを壊すことにした。
最初に真が試そうとしたのは自分を驚かせたマネキンを持ってきて、槌のように自動ドアにぶつけようとした。
でも、期待と違ってマネキンがあったところまでに戻って、実際マネキンを触ってみると、思ったよりも軽く、ふわふわとした素材になっていた。
これじゃぶつかっても自動ドアに傷もないだろう。
自分の驚かせたことに対していい復讐になると思ったのに…。
「はあ」とため息をついたあと、マネキンのことはあきらめた。
真の目に次に入ったのは上に白い布が敷かれている、カートだった。
白い布がちょっと膨らんでいるのを見ると、カートの中には販売用の品とかが入っているようだ。
布の上を手で押してみるとちょっとふわふわしているのを見ると服とかだろう。
カートは特に鍵などでロックされてもなく、押してみると適当な重量感があるものの、真が押せないくらいに重くはなかった。
で、このカートで決めた。
まさにどこかのアニメのように質量兵器アタックだ。
目標は地球じゃなく、100円ショップの自動ドアだけど…。
前が見えないのに両手でカートを押せないとだめだから、カートの上にランタンを載せる。
ランタンは前の方向を映るようにした。
二階の床は特に凹んでるところや坂とかがないため、100円ショップまでカートを押して行くのはそんなに難しくなかった。
最初は重量感で抵抗感があったものの、押し続けると100円ショップ前について止めるのが大変なくらいそのままの勢いで進んでいった。
そんなに長くない時間をかけて目的地の100円ショップ前についた。
カートは100円ショップの自動ドアから一直線の6-9メートル離れている場所に止めた。
もっと長いかも、短いかも知れないが、暗いから距離感覚があんまりない。
でも、ガラスの自動ドアをぶつけて壊すには十分な距離だとは真は思った。
ランタンをカートから傍に置いといた。100円ショップの自動ドアを映すようにして…。
真は再びカートを押す前に軽く、ストレッチングをする。
緊張したあまりにびっくり腰とかなっても困る。
「せーーのーーー」
真は思いっきりカートを押し始めた。
一直線から傍に離れないように気を付けながら…。
カートはだんだん速くなる。
カートは100円ショップの自動ドアのすぐ前まで迫った。
ぎりぎりのところまできて、真はカートを押していた手を放す。
「ガッシャーン」とガラスが割れる音がした。
フレームがない、100円ショップの自動ドアはきれいに壊れてしまった。
重量があるカートは慣性によってそのまま奥の品棚に「カーン」と大きい音を出しながらぶつけて止まるまで進んだ。
床に置いといたランタンを持ってきて、あっさりの壊れた100円ショップの自動ドアを見ながら真は商店街の廊下の自動ドアもこのように…と思ったが、すぐあきらめた。
二階の電源がない限りこの思いカートを一階まで持って行く方法がない。
エスカレーターはカートの幅が合わないし…。
カートが止まった、ぶつかった品棚はちょっと散らかしているけど、ほかのところは大丈夫だそうだ。
品棚が倒れたりとかしたら物を探すのが大変だったんだろう。
良かった。
せっかく、ドアまで壊してしまったんだ。
つけるものを探そう。
さあ、狩の時間だ。
真はニヤリと笑った。
RLがちょっときついです。涙
でも、できる限り投稿します。
たくさんの方が読んでいただいて力になります。
ありがとうございます。
そういえば、前に残業中に停電になって、ビルの中に一人にいたことがあります。
お化け屋敷などははははと笑えるくらいにけっこう怖い体験でした。




