練習、練習、練習!
その数十分前のこと。体育館で美穂と練習、主にパス、ドリブル、シュートを繰り返し、いい汗をかいてきたところで、女子の……小更浜だ。が、美穂に声をかけた。
「美穂ちゃん、ちょっと保健室行ってくるね!」
「うむ?……うむ、分かったのだ」
見れば轟に小更浜が肩を貸していた。……ケガしたのか。大丈夫か、アイツ。
「……仲が良いのだな、由衣と轟は」
「ん、そうなのか?」
「でなければ男女間で肩を貸すなどすまい。……羨ましい」
羨みながら轟と小更浜を見やる美穂。いや、絶対羨ましがる場面じゃないからな?
「……よし。基礎練習も皆こなしたようだし……集合!」
美穂の号令で、あちこちで練習していた面々が集まる。
「はぁ……はぁ……毘釈天、勝負はお預けだな」
「……そうね。決着はまた、次の機会に」
「いや、なんでお前らそんな汗だくなんだよ」
「はぁ、はぁ……ち、ちと真剣勝負をな」
「いい勝負だったわ。ちょっと張り切りすぎかもだけど」
「ちょっとじゃないな。かなりだな」
武田は言わずもがな、毘釈天はクールに笑ってはいるが、その汗は絶対、過剰練習だぞ。
「……3対3をやろうと思っていたが、これでは無理だな。ミニコートで2対2をしよう」
「待て、紫紅美。俺はまだやれ……!」
「いいえ、武田。ここは休みましょう。無理はよくないわ」
「……ちぇー。分かったよ。一旦休む」
「では寒菜、五島、雅文くん。分かれようか」
グーパーで分かれた結果、俺と寒菜対美穂と五島に。
「寒菜、頑張ろうな」
「……!」
「五島。雅文くんも寒菜も強い。気を抜かないようにな」
「はっ、はい!」
「俺が審判するぞ。ティップオフする人、前に出ろー」
やっぱりと言うか、美穂が出てきた。身長的に出てくるとは思ってたよ。五島も決して低い訳じゃないんだけどなあ。
「む。やはり雅文くんか。キミが相手とはいえ、手は抜かんぞ」
「そりゃ、こっちもだ」
「……」
数秒、間があり、ホイッスルが鳴る。真剣勝負の幕が上がった。
「あ、ちょうど終わったみたいね」
「毘釈天、どこ行ってたんだよ」
「ちょっと由衣達の様子を見にね」
「いい感じだったか?」
「……由衣があんなに肉食系だったなんて思わなかったわ」
「だから違うってばー!!」
小更浜が顔を真っ赤にして、毘釈天と武田の間に割って入った。
「あれはその、心配してというか熱ないかなー、的な感じだから!!凛が思ってるよーなのではないんだからね!!」
「……」
「分かってる分かってる、って言いたげな優しい微笑みやめてよ!!色々勘繰っちゃうでしょぉっ!!」
「じゃ由衣、審判頼むわね」
「俺と毘釈天、今から試合すっから」
「分かってる!?分かってるんだよねぇ!?って、なんで私?他の人が……」
小更浜がここで冷静に周りを見渡す。壁際で死屍累々となっている俺らを見て、納得した様子で、続けてこう言った。
「分かった。でも、本当に思ってるよーなのじゃないからね?それだけは信じて」
「由衣、早くボールボール」
「うぅ、聞く気ないし。……分かってくれてるって信じてるからね。じゃ、スタート!」
その後も何度か練習を重ねた。毘釈天と武田の案か、俺たち男子と美穂達女子の練習は被ることが多く、何度も合同練習をした。
その甲斐あってか、轟はある程度動けるようになり、小更浜とも会話が増えた。……どこか挙動はまだおかしいが。まあ他人の恋愛にとやかく言うまい。俺も褒められた状態じゃないしな。
ちなみにだが小早川の奴、マジで体育の授業を自分で仕切り、体育祭の練習に充てていた。そればかりか、自身が受け持つ社会の授業までも。横紙破りもここまで来ると心配になる。……そろそろ退職とか言われないだろうな?
そんなこんなで1ヶ月弱が過ぎ……体育祭の日を迎えた。




