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体育祭~準備編~

夏が明けて秋になった。変わらず外は夏だが、時期的には秋になった。


まだまだ夏だろ、夏休み終わりとか頭沸いてんのかハゲ校長とは思うが……二学期だ。


二学期は行事が多い。体育祭、コスプレハロウィン、学園祭、スキーキャンプ……いくつか聞き慣れない単語があるが、とにかく行事が多い。


「おーい、お前らー。行事ではしゃいでるのもチラホラいるが、宿題提出しろよー」


「……シュクダイ、ナニソレ?」


「アンタ、本当にやらなかったの……?」


「ふっ。この我にも解けない宿題があるとは……実に面白い」


「宿題のバカやろぉぉっっ!!」


宿題提出で一部阿鼻叫喚となるが、それは本当に一部。クラスの8割はなんてことない顔で提出する。……俺も美穂たちの助けがなかったら危なかったかもな。


「提出してない奴は明日までなー。明日もしなかった奴は一ヶ月間、石角の放課後スパルタ授業にご案内だー」


「いやー!先生の鬼ー!」


「オレに言うな。石角に言え。提案者アイツなんだから。……で、だ。近くに迫った体育祭だが」


普段やる気を微塵も見せない小早川が目を光らせる。なんだなんだ。


「オレは普段やる気がなく、テストだろうが修学旅行だろうが、いつもなあなあで済ませてる。が、体育祭だけは違う。何故だか分かるか……?」


知るか。


「毎年毎年、石角のクラスに負けているからだ……!最初は本気じゃなかったさ。が、毎年のように煽られてはさすがのオレも堪忍袋の緒が切れる……野郎ども、今年は戦だ。死んでも勝つぞ!」


『お……おぉ?』


「返事はサー、イエッサーだ、分かったな!?」


『さ、サー、イエッサー』


「もっと大きく!」


『サー、イエッサー!』


「よし!今日から体育はオレがやる。許可は既にもらった。体育館の使用許可もな。体育館まで一ヶ月、本気でいくぞ!」


『サー、イエッサー!』


このクラスの団結力はなんなんだろう。乗ってる俺も俺だが。


「うむ。この気運の高まりは良い。やるなら勝たねばな!」


ここにもやる気スイッチが入ってる奴が一人。……程ほどにやろうと思ってたんだがなあ。


「体育祭……ハプニング……ブルマ……女子とくんずほぐれず……ぐへへ」


隣のバカは後で美穂にチクろう。


小早川の一言でチームと競技を決めることに。ラッキー、授業潰れた。


「……!」


寒菜が腕をガッツポーズにしてやる気満々な様子を見せている。……少しずつ学校での様子も変わってきたな、等と思ってると、


「錦田さん、体育祭の競技なにやるのっ?よかったら一緒にやらない?」


「……!!」


「あ、ごめんね急に。私は由衣。小更浜由衣こさらはまゆい。この子は毘釈天凛びしゃくてんりんちゃん。よろしくね!」


「ムリして喋らなくてもいいわよ。喋るの苦手なのよね」


「……」


「わー。頷き方可愛い。ギューッ!」


「こら由衣、ビックリさせちゃうでしょ。……ごめんね、前から話したがってたのよ、この子」


「だーって可愛いんだもん。今日はより一層可愛らしさに磨きがかかってるよっ」


「可愛らしさかはともかく……少し話しかけやすい気はするわね」


「よろしくね、錦田さんっ」


「…………」


「“寒菜でいいよ。よろしくね”……可愛いぃ~!!よし、錦田ちゃん確保!私たちと一緒のチームね!」


「美穂さんも誘った方がいいんじゃない?よく一緒にいるし」


「そっかっ。おーい、美穂ちゃーん!!」




「…………」


良かったな、寒菜。


「なーに氷姫の方見てニヤついてんだ、鳴神!」


「どのような感情の基か……とても興味深い」


「……お前らは確か」


「クラスの縁の下の力持ち!影の委員長、武田康夫たけだやすおだ!」


「……クラスの頭脳、轟現太とどろきげんただ。キミを一緒の競技に誘うために来た所存だ」


「俺?なんでまた?」


「そりゃお前、体育祭だからに決まってんだろ!」


「?」


「彼の言葉だけでは情報不足だ。付け足そう。いつも一人でいて、同情というわけではなくどこかシンパシーを感じた。彼も同じだったらしく共に相伴したわけだ。ふっ、我ながらシンパシーという非科学的なものに頼るとは……実に面白い」


「要はお前らもボッチだから誘ったってとこか」


「ぼぼぼボッチじゃねぇし!」


「孤独を好んでいるだけだ。その気になれば友人などいくらでもできる。……で、どうだろうか?」


「いいぞ」


「キミならそう言ってくれると思っていた。よろしく頼むぞ」


「こちらこそ」


「よっし!じゃ後はお前によく絡む桐生を誘うだけだな!」


「いや、アイツはやめてくれ」


「……仲が悪いのか?」


「極力一緒にいたくない。俺まで変態扱いされるからな」


「いや充分にお前も変もごご」


「余計なことは言わない方が吉だぞ、武田よ。……桐生の件は承知したが、もう一人どうする?体育祭の競技は四人だぞ」


「マジでか。……他に誰かアテはないか?」


「孤独を好む我に他にアテなどないぞ」


「アイツはどうよ?」


武田が指差す先はオドオドしながら周りを見回す気弱そうな男子。……アイツは確か。


五島吉ごとうよしか。ふむ、他にペアもいないようだし、誘うか」


「んじゃ、声かけてくる!」


すぐに行動する武田。……思い切りがいいな。


「彼はこういう時役に立つ。我の場合、思い至っても行動に移すまでに時間がかかる故な」


「……慎重派ってことか?」


「ビビりとも言い換えられるぞ」


「言葉を選んだ俺の気持ちを返せ」


五島とやり取りをしていた武田はややあって、五島と一緒にこっちに来た。


「五島、捕まえてきたぜ!」


「捕まえてきた、とは表現が悪い。連れてきたで良かろう」


「まーまー。ほら、五島」


武田に強く背中を叩かれよろめく五島。俺らの顔を伺った後、口を開いた。


「は、初めまして。五島吉といいます。……こっ、此度はお招きいただき」


「五島、パーティー会場ではないんだ。もう少し落ち着け」


「す、すみませんっ。……ボク、人と話すの苦手で」


「であろうな。そうでなければ他の所に入っているだろう」


「……あの、どうしてボクを誘ってくれたんですか?」


「それは、アレよ。……心が通じあったっていうかさ」


「少し黙っていろ、武田。鳴神も同様の理由で誘ったが、シンパシーを感じた。それだけだ」


「あー!オレのとった!」


「とってない」


「絶対とった!とったよな、鳴神!」


「知るか。……五島」


「はっ、はい!」


「どうやらここにいるメンバーは変わり者揃いだ。俺も含めてな。だから気楽に接しろ。肩の力抜いてな」


「……はい。やっぱり優しいですね、鳴神くん」


「ん、前にも会ったっけか?」


「ええ」


「?」


妙な感じだが……本人が言う気がなさそうなんで、俺も触れずにおいた。


「さて、競技だけど、何に出る?」


「走るもの以外で頼む」


「お前、体育祭って何か分かってるか?」


「では球技以外で頼む。走る上にボールを扱うなど無謀にも程がある」


「あの……残ってるの、球技だけみたいですけど」


「よし、ボイコットだ」


「んな訳いくか」


武田がチョップでツッコむ。仲良いんだな、お前ら。


「何をする、武田」


「体育祭ボイコットなんてしてみろ。あの今回だけ熱血になってる担任にドヤされるぞ」


「あの根暗教師に何をドヤされたところで」


「一歩間違うと、石角の放課後地獄授業コースになりかねないぞー」


「…………。鳴神」


「なんだ?」


「キミと我は似ている。あんまり体力無さそうなところとかスポーツ苦手そうなところとか」


「バカにしてんのか?ってか俺は別に――」


「だからキミが選んでくれ。我には地獄から地獄を選ぶようなマネできない」


「いや、だから――」


「そーだな。オレもなんでもいーし」


「あのだな――」


「ボクも雅文くんにお任せで大丈夫です」


「……ああ、分かったよ。何になっても文句言うなよ」


席を立ち、黒板を見る。……残ったのだと、バスケだな。


「む、雅文くんもバスケか?」


「美穂。お前らもか」


「うむ。寒菜や由衣、凛と共にな」


「さっきはビックリしたな。馴染めたみたいで良かったよ」


「本当にな。嬉しい限りだ」


「ま~ざ~ぶ~み~!!」


「……なんだよ、ゾンビ」


「ゾンビじゃないよ!親友の啓だよ!なんでボクを誘ってくれなかったのさ!」


「ゴメンワスレテタワーアハハ」


「すさまじく棒読み!誘ってくれるだろうと思ってのんびりコレクションを整理してたら雅文、他の人と組んでるんだもん!ボクとは組みたくないって言うのかい!?」


「ああ」


「酷い!あんまりだよ!!ボクとは遊びだったの!?」


「変なこと言うな!!」


啓がアホな事言ったせいで、クラス中の視線がこっちに。三角関係?しかも片方男?ハードル高っ、とか聞こえてくる。……啓を窓から突き落としたら払拭されないかなー、この疑い。


「酷い……酷いよ、雅文……ボクは捨てられるんだね」


「雅文くん。キミが一言捨ててきてくれ、と言ってくれたら捨ててくるが?」


「す…………。ダメだ、俺にも人の心と1億分の1パーセントの情がある」


「ボクに対しての情、たったそれだけなの!?」


「お前らー、いい加減そこどけー。三角関係のもつれなら放課後にやってろー」


「勘違いしてんじゃねぇよクソ担任!誰ともそーいう関係になってねぇ!!」


「ん?紫紅美とはそーいう仲じゃないのか?」


「そっ、それは……」


『それは?』


くっちゃべってたクラスメート共が聞き入る。……ダメだ、余計な返答したら問題になりかねん。


「……い、いいだろ別に!ほら、書いといたからな!」


「おーう。ま、オレもお前らの色恋沙汰なんてどーでもいいからこの辺にしといてやるわ」


「っこの……!!」


「落ち着くのだ、雅文くん。仮にも教師だ」


「ぐっ……!」


美穂の制止で渋々、本当に渋々席に戻る。さめざめと泣き続ける啓はボディーブロー数発で沈めた。


「お、お疲れ様でした。雅文くん」


「ったく……。何で黒板に書き込むだけでこんなに疲れにゃならんのだ」


「見てるこっちとしては面白かったぜー」


「完全に他人事だなこの野郎。まあ実際そうなんだろうが」


「……鳴神よ」


「ん?」


轟が両手を俺の肩にかけた。体重をかけているのか、少し重い。


「何故……何故バスケを選択した……!」


「中学ん時バスケ部だったからな。と言っても補欠だが」


「バスケなど我ができるはずなかろう!どうしてバスケを選んだ!!」


「知るかー!お前が決めていいっつったんだろうが!」


「キミがスポーツ苦手という前提の話だ!キミが経験者とは聞いてない!」


「言おうとしたのをお前らが遮ったんだろが!」


「なんてことだ……バスケなど……」


力なく崩れ落ちていく轟。……俺が悪いのか、コレ?


「気にしなくていいぜ、鳴神。どれを選んでも轟はこうなってた」


「頑張りましょう、轟さん!!」


「……そうだ。気配を消せばボールは回ってこないのでは?よし、今から気配を消す特訓を」


「する暇あるならシュート、ドリブルの練習を重ねろ。その方が現実的だ」


「くっ。現実主義者の我にそう言うとは。中々やるな、鳴神」


「なにがだ」


「よかろう。キミの能力アビリティ、遺憾なく我に教えてくれ!」


「……教えを請われてるってことでいいのか、コレ?」


「合ってるぞー」


武田は轟の通訳バッチリだな。……教える、ねぇ。なんて面倒な。


「メンドいって顔してんな、鳴神」


「実際その通りだからな」


「けど練習はした方がいいだろ。轟をある程度動けるようにしとかないと、なんかスイッチ入ってる担任が余計メンドくさい事にするかもだぞ」


「……はぁ。わぁった。轟、放課後特訓な」


「くっ……。まあ、女子に無様な姿を晒す訳にもいかないからな。よろしく頼む、鳴神」


後で美穂に、一緒に帰れないって伝えなきゃなー。



――……。


「えー、偶然が重なって」


「雅文くん達と特訓することになった。よろしく頼むぞ、皆!」


美穂に話をしに行った所、向こうも放課後特訓するとの事なので、どうせならと一緒にやる事にした。


「よろしくお願いします、美穂隊長!」


「気合い入ってるわね、由衣」


「だって放課後に特訓なんて青春してるみたいだもん!」


青春ねー。俺としては青春はゲームに捧げたいもんだが。なんて考えてると、轟が手招きしてきた。今度はなんだよ。


「聞いてないぞ、鳴神!」


「別に伝える必要はないかと思って言わなかったんだが……」


「気まずさというものを考えないのか、貴様!?小更浜……女子と一緒など!!」


「そういうもんか?イヤなら離れて練習するか?主にお前の為の特訓だし」


「何をバカな事を言ってるのだ!!こんな重要な機会、二度とないだろう!そのままやるぞ!」


「なんなんだよお前」


ひたすら捲し立てた後、離れていく轟と入れ替わりに武田がやって来て、俺に耳打ちした。


「実はな、轟のやつ小更浜の事が好きなんだよ」


「そうなのか?」


「だからアイツ今、緊張と嬉しさでテンション変なんだよ」


「ほー……」


カチコチになりながら女子と五島の所に行く轟。真っ先に奴に話しかけたのはその小更浜だった。


「今日はよろしくねっ、轟くん!」


「う、うううむ。よよ、よろしく頼む」


「雅文くーん。練習するぞー」


「おーう。……まずは様子見るか」


「お、奇遇だな。オレと同じ考えだ。……あの奥手純情くんのしどろもどろっぷりは見物だからな」


「武田、お前いい性格してるな」


「まあな」

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