第四章 454パーセント
電話が鳴らないまま、季節が三つ変わった。
夏が終わり、秋が過ぎ、東京に冬が来た。
その間、海の向こうでは裁判が続いていた。NECは商務省の調査手続きを争い、商務省は調査を続けた。NCARのSX-4は、まだ一台も納入されていなかった。
坂本にできることはなかった。台風の計算をして、論文を書いて、マイケルから届く短いメールを読む。それだけだった。
三月、NEC側の訴えが退けられた。
そして四月。久しぶりに、国際電話が鳴った。
「ダイスケ」
マイケルだった。
「数字が出た」
「いくつだ」
「四百五十四」
坂本は聞き返した。
「四・五四?」
「四百五十四パーセントだ」
坂本は、とっさに頭の中で計算しようとした。そんな値引きが、ありえるのか。
「NECが、そこまで安く売ったのか」
「そうじゃない」マイケルが言った。「NECは数字を出さなかった」
「どういう意味だ」
「調査そのものを争っていた。質問状に答えなかった。だから商務省は、手元にある資料で計算した」
「それが、四百五十四?」
「そうだ」
坂本は黙った。
四百五十四パーセント。
技術の数字ではなかった。計算速度でも、メモリでも、演算性能でもない。手続きの中から出てきた数字だった。
電話の向こうで、マイケルが小さく息を吐いた。
「ダイスケ。うちにはまだ、SX-4が来ていない」
坂本は受話器を握ったまま、窓の外を見た。
桜はもう、ほとんど散っていた。
第四章 完




