↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
敗戦技術 第四巻 超算の敗戦  作者: 八雲 海


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/7

第三章 選ばれたのに

二か月後、電話が鳴った。

 「ダイスケ。妙なことになった」

 マイケルだった。今度の声は、弾んでいなかった。

 「SX-4か」

 「そうだ」

 「何があった」

 「クレイが訴えた」

 坂本は受話器を握り直した。

 「性能を?」

 「違う」

 一拍あった。

 「値段だ」

 電話を切ってから、坂本はしばらく机の前で動けなかった。

 値段が訴えられる、という意味が分からなかった。安く、速く作る。それは技術者の誇りのはずだった。

*

 翌日、坂本は図書館で古い新聞を漁《あさ》った。

 「反ダンピング」という言葉が、何度も出てきた。ある国の企業が、不当に安い価格で製品を売っていないか調べる制度。安すぎることが、罪になる。

 西村の研究室に、資料を持って行った。

 「値段が理由で、負けることがあるんですか」

 西村は資料に目を通した。

 「性能で勝って、値段で止められる」西村は資料を閉じた。「八〇年代の半導体を覚えているか」

 「新聞で読んだくらいです」

 「あのときも、問われたのは値段だった」西村は言った。「構造は同じだよ」

 坂本は黙った。

 速さだけでは、決まらない。

 今度は、その意味が少し分かった。

 「マイケルは」西村が聞いた。「何と言っている」

 「怒っています。自分たちが選んだ計算機を、自分たちで守れないことに」

 西村は頷いた。

 「その怒りは、正しい」

 窓の外で、夏の蝉《せみ》が鳴き始めていた。

 坂本の机の電話は、静かなままだった。

第三章 完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。