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第七話 星に抱かれて

『ぴーんぽーんぱーんぽーん!みんなー!お疲れ様でしたー!!今日はゆっくり休んで、楽しい夢でも見ちゃいましょー!』


楽しい時間というのは皮肉にもあっという間に過ぎる物であって、時間を忘れていた私たちは、終わりの放送が流れるまで時間に気付かなかった。


「今日はもう終わりね」


イマさんがそう言って、私たちが裏路地から大通りに戻った時には、もう誰一人としてそこにはいなかった。今思えば、昼間はあんなに賑わっていたのに、放送が流れてからは不気味なくらいシンとしていた。


「……」


「これも《シラルトン》の特徴の一つなんだけれど、《シラルトン》はイヴの放送で始まり、放送で終わるわ。毎日2回、決まった時間に鳴る放送を境にして全ての店が畳まれるの」


「そうなんですか……」


「誰もいなくなっちゃったら街はあまり面白くないけど、もう少し付き添ってくれるかしら?」


私が小さく頷くと、イマさんはまずどこからかランプを取り出して仄かな灯りをつけた後、これまでと同じように足を進めたので、またそれについていく。


しかし、これまでのように大通りを中心とした店巡りではなく、すぐに横道に外れていった。少し疑問を持ちつつも、何も言わずに背中を追う。


辺りを見ると真っ暗だ。これは、カーテンの隙間から漏れる光を含めて何の明かりもついていなかったからだった。私が見えるのはランプの小さな灯火のみ……どうしてか、この時だけは《シラルトン》は楽園でも何でもない、地球のような雰囲気だと感じた。


だからだろうか?なぜか昼間の時よりもずっと安心感があった。


(……いや、それだけじゃない。何だか既視感がある……)


『次は何見にいく?ここからなら書道室が一番近いけど』


『しーっ!もうちょっと小さい声で話さないとバレちゃうよ……』


思い出した。そういえばミライちゃんと夜の学校に入った時だ。確かこの時、ミライちゃんは自分の懐中電灯だけを持ってきていたせいで、明かりは懐中電灯だけで、ズカズカと突き進むミライちゃんについていく事しかできなかった。


(……あの時の焦りが、まさか懐かしく感じる日が来るとは思っていなかったな)


「………ここよ」


イマさんはそう言った後、ランプの灯りを消した。


「ここ、湖……」


私たちは10分くらい歩いた末、とある湖畔に着いた。そこで私は、幻想的な光景を目にする。


「わぁ……!」


空中いっぱいに広がる星々。そして、澄んだ湖にも星の灯りが反射して、まるで宝石箱のよう。当たり前すぎる事なのかもしれないが、地球でこんな光景は見たことなかった。


「綺麗……」


「それだけじゃないわ。行きましょ!」


「え、行くってどこ──って、そっちは湖──」


イマさんは私の手をしっかりと掴んで湖の方に走り出す。振り解くことなんてできずにそのまま湖に足がついたものの、私の足は沈まずに水上を地面のように踏み締めることが出来た。


(何これ……こんな事が…現実にあっていいの?)


これまで私の目の前にしかなかった光景が、今度は私たちを覆う。星灯がまた違った照らし方をして、その中でイマさんの笑顔がフッと見える。








…………………………


間違いなく私はこの瞬間、星々に、そしてイマさんに見惚れていた。


(…………)


イヴの、日本語では表せない、という感覚の意味が今ならなんとなくわかる。


(これが、幸せって事なのかな……)


胸の高揚が抑えられない。こんなもの、夢ですら見た事がないし。想像した事すらない。




「どうかしら?」


「すごく、綺麗です……」


「ここ、私の一番のお気に入りなの。ここでなら、何にも縛られず、何も考えずに、ただ「綺麗」だけが頭を埋め尽くしてくれる…………知らないだけで、ここにはこんな場所が他にもいっぱいあると思うの」


「…………」


「私は意図して《シラルトン》に来たわけじゃないけれど、ここが嫌いなわけじゃないの。だから貴女も、貴女自身のここの幸せを見つけてみて欲しい。これを伝えたくて、ここまで着いてきてもらったの」


「…………」






























「どう?もう帰る?」


「……もうちょっとだけ……」






















「…………もうそろそろ、帰りましょう。もうそろそろ湖の魔法が解けちゃう時間よ」


「…わかりました」










「…………」


「……まだ何か、違和感がある?」


「……はい、少し……」


「ゆっくりでいいわ。選択はその後でいい」


「…………」


私たちが城に戻った時にはもう、空が少し明るくなっていた。

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