第二話 知らない場所
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結局その日、私たちは「それ」をオカルトでよく出てくる怪異の類と結論づけ、そのまま家に帰ることとなった。
そして翌日の帰り道、昨日の場所をもう一回通っているが、何も起こっていないと錯覚してしまうほど何も変わっていない。通りかかった人はいつものようなくたびれたような顔をしているし、道沿いにある建設中の敷地では建物の資材をクレーンで運んでいる。
そしてミライちゃんも、見た目では何も変わっていない。
「昨日さ、オカルトも実在するかもってわかったじゃん?」
「……そう、だね」
「ってことは〜?」
「?」
「《シラルトン》もあるかもってこと!」
「……」
私とミライちゃんの間でオカルトに関する意識が多少変わってしまったせいで、一概に否定できない。一度見てしまった身としては、絶対にないとすぐに否定する事に抵抗を覚えてしまう。
「行こ?」
「…………」
「え〜、これでも行ってくれないの?」
「うん。なんだか怖くなって……」
「いやぁ?別に怖くはないでしょ。あれはともかく、《シラルトン》は幸せな楽園だよ?」
「……逆に、ミライちゃんはなんで怖くないの?何かに襲われるかもしれない、帰れないかもしれない、他にもいろんな危険があるんだよ!?」
「うーん…それでもあたしにとっては楽しいからかな。嘘かもしれないし本当かもしれない、そういうよくわからないものを解明していく、普通に学校に通うよりもずっと楽しいと思うんだ」
「楽しい」──そんな言葉に対して、私は少し羨ましさを感じる。
「お願い!」
「嫌だ」
「でもこれだけは本当に……もう今回で最後でもいいから……!」
うーん、やっぱり行きたくはないな……勉強したいし、怖いし、全くつまらないといえば嘘にはなるけど、それで結局何かあるはずも……はず……
「……(ミライちゃんの目を見る)」
「……!(涙目で目を輝かせながらこっちを見る)」
「……はぁ……仕方ないなぁ。今回で最後にしてくれるなら、一回だけならいいよ」
「ほんと!?やーったぁぁ!!」
ミライちゃんは私のその返答を聴くや否やすぐに飛び起きて、笑顔で私の腕にしがみついてきた。
「じゃあやろ!今日夜!暇でしょ!」
「は、早いね……まぁいいよ。ただ本当に最後にしてくれるよね?」
「うん!約束する!ぃやったぁ!!じゃあ準備しなきゃだし、早く帰ろ!」
ミライちゃんはそう言って笑顔のまま走り出した。
「あっ!ちょっと待って!」
それについていくように私も走るも、体力のない私にとって追いつく事はまず無理で、走っても走ってもすぐに距離を取るように置いていかれてしまう。
「はーやーくー!」
「そんな、速く、走れるわけないでしょ!?」
とりあえず追いつきたかった私は、出せる全力をもって走りまくる。
──それが悪かった。
「ほらーカコちゃん!早くこっちまできてよ!」
「ちょっと、待ってって、言って────」
何の前触れもなく、私は影に覆われた。音も何もなく、ただ一瞬だけ暗くなった事だけ覚えている。
私たちは学校の帰り道、西の方向に帰る。でも、その時に前方向の上空に何かが浮かんでいたのは見えていない。そこから考えられるのは一つ。
何かが既に真上に来ている。それも、至近距離。
私はそのまま意識を闇に落とした。
とまあ、これで終わるならこの物語は存在してなかったよね。
◇
『ぴーんぽーんぱーんぽーん!みんなー!おっはよーございまーす!!今日も一日、張り切っていきましょ〜!』
「…ぅ…ん…………ぁ……」
耳を劈くような大音量で意識が覚醒する。何だろうこの音。ていうかどうせこんな事するのミライちゃんでしょ。
「こんな変な音源どこで見つけたのよ、ミライちゃ───え?」
ミライちゃんがどんな顔をしているのかを見たいだけだった。そのために目を開いたまま顔を上げたというのに──
「……ここ、どこ?」
行き交う人で溢れた大通りが垣間見える裏路地に私はいた。至る所がレンガでできて、しかもそのレンガもところどころピンクとか黄色とかの明るい色に塗られていて、まるで遊園地の一角のような空間だった。日本では見たことの無い中世の世界感のファンタジーに出てきそうな長く尖ったレンガの屋根。そしてその町の向こうには、一部だが大きな建物……これまたファンタジーっぽいお城が立っているのが見えた。
「……ミライ、ちゃん?」
……何も返ってこない。
「出てこないと《シラルトン》行ってあげないよ!」
………………
「…………」
(そうだ、スマホ!)
近くに落ちていたスマホを拾って見ると……あれ?おかしい。このスマホ、キーホルダー…これ、ミライちゃんのスマホだ。それにこんな布に穴を開けただけのような簡素な服、私は持ってなかった。
なんでだろう……
……考えてもわからないものに答えを求めてもしょうがない。スマホを見てみると……圏外?海外なのかな……時間もあんまり進んでなさそうだけど……
「………人に聞くしかない、か」
幸い大通りからはひっきりなしに人が歩いているのが見えるし、町自体が声を出しているくらいには賑やかだ。第一村人に困る事はないだろう。
早速私は近くで野菜を売っている男の人に声をかける事にした。
「あの、すみません」
「繧?≠縲?㍽闖懊′谺イ縺励>縺ョ縺具シ?」
……わからない。日本語、英語じゃないという事はわかるけど、聞いた事ない発音で日本語じゃ表せそうにないし、解読も無理そうだ。
「……あ、あの〜」
「繧ゅ@縺九@縺ヲ縲√?譁ー蜈・繧翫?縺具シ?」
「?」
よく分からない……けど、男の人は私の頭を指差して──じゃない、私の後ろを人差し指で指したので、それに合わせて視線を動かすと、指の先にはあの城があった。私が目覚めて最初に見た光景の一部にあった、やけに印象に残る大きなあのお城。
「縺ゅ◎縺薙↓縺ゅk縺ョ縺ッ《アクシス蝓?》縺ィ險?▲縺ヲ縲√%縺ョ荳也阜縺ョ邇九′菴上s縺ァ縺?k繧薙□。縺セ縺壹?縺昴%縺ォ陦後¢」
「……アクシス?」
アクシスって……axis?どうしてこれだけ聞き取れたんだろう。
「閻ケ遨コ縺?※繧九°??縺薙l繧偵d繧?」
男の人は何かを呟いた後、りんごのような、宝石のように角ばっている果物を三つ紙袋に入れて渡してくれた。
「え、いや私お金は持ってないです…!」
「豌励r縺、縺代m繧?」
何かお礼を渡そうと服など色々探るが、なかなか良いのが見当たらない。チラリと見上げると、男の人はもう一度その城を指差した。これはつまり、もう行ってもいいという事だろうか?
「あ、ありがとうございます……」
結局最後まで何を言っているかわからなかったが、男の人が悪い人でない事はなんだか伝わった。




