第一話 とある怪異
この作品は、エンド分岐があります。途中にある選択肢のどちらかを選んで進んでください!
全11話(エンドA、Bを含む)+⁇?
こんにちは。名も知らない読者さん
今日はどんなお話を聞きに来たの?
メリーさんの怪談とかおすすめだけど、どう?電話越しに女の子の声で──え?知ってる?
じゃあ学校の七不思議は?UFOは?こっくりさんは?
………………
うっそぉ、ぜーんぶ聞き飽きてる?
え〜、困ったなぁ。それじゃあここにあるものじゃ何も楽しめないじゃない。
………………
あ、そうだ!
《シラルトン》のお話!
これは最近入って来たものだから知らないでしょ!
……うんうん!やっぱり初耳よね!
せっかくだし聞いていってよ。こんな機会、もう二度とないと思うし。
じゃあいくね?
これは、夢の楽園と幸せのお話────
◇
『ぴーんぽーんぱーんぽーん!みんなー!おっはよーございまーす!!今日も一日、張り切っていきましょ〜!』
街に響く大音量の目覚ましは1日の始まり。朝焼けが眩しいこの時間に毎日決まってこの陽気な女の人の声の放送が流れてくる。そして例に漏れず、私は今日もこの目覚ましで朝を迎えた。
ベッドからそそくさと降りて、無駄に広すぎる城の一室の中、カーテンを開けると、もう全てのお店が営業を始めていて、多くの人で賑わっていた。
笑顔、笑顔、笑顔、幸せ、幸せ、幸せ
……
「私もいつか、ああいう風になれるのかな」
◆
「ねえ知ってる?私たちとは別の、どこか遠い世界には、だれでも幸せになれる、《シラルトン》っていう夢みたいな楽園があるらしいよ」
「へー」
「そこではいろんな不思議な出来事があって、毎日がすっっごく楽しく過ごせちゃうの!」
「へー」
学校からの帰り道、唐突にこんな変な話題をぶっ込んでくるのは私の幼馴染であるミライちゃんだ。
「んでね?あたし、昨日ついにそこへの行き方がわかったの!!」
「へー」
「だからさ、明日一緒に試してみようよ!」
「えー」
「……あのさ〜、もうちょっと関心持ってくれても良いんじゃない?」
「いや別に……私そういうの興味ないし」
「えー!?なんでよー。苦しみがないんだよ!?楽しい事しかないんだよ!?最高じゃん!」
「いや、それどうせ七不思議とかそういう類のやつでしょ。で、半年前学校の七不思議確かめようとして何が起こったか覚えてるでしょ?」
「えーっと、音楽室のピアノが勝手に動いてた!」
「何ナチュラルに記憶捏造してるのよ」
「男子トイレから呻き声が…!」
「それお腹壊した見回りの先生だったじゃん」
「くっ、えーっと……」
「はぁ、結局何も無かった。それが私たちの結論だったじゃない」
「でもぉ!」
「私たちはもう高校2年生、良い加減受験勉強始めないと大学行けないよ?ただでさえ私たち頭悪いんだからさ、もうそんなオカルトの話は終わりにしよう」
「えー!!そんなの絶対嫌!《シラルトン》一緒に行こうよ!」
「でも実際これまでそういうの何もなかったでしょ?」
「うぐっ」
ミライちゃんが変な事を話すのは今に始まった事じゃない。オカルトマニアなのか、ただ単に楽しい事をしたいのかはわからないが、ミライちゃんはかなり変人である。(本人の前だし口にはしないが)
「どうせ無いなら最初から期待しないほうがマシだよ」
「でもぉ……カコちゃんがいないと怖いし一人は怖いの!お願い!これで最後でいいから、一緒にやって〜」
「やーだ。ミライちゃんと同じで私も嫌なものは嫌。今日私忙しいから帰るね」
私とミライちゃんは正反対の性格だった。ミライちゃんがいろんな事を探して、試して、調べている間、私はただ普通の生活だけを送っていた。私にとっては、今のままでいいのだから変なことに首を突っ込む意味がわからない。今でもそう。内向的すぎる私と活動的すぎるミライちゃん、どちらもクラスで浮いた存在という部分は同じだとしても、ミライちゃんがこうやって私にばかり固執する意味もわからないのだ。
「待って!」
「え?」
ドグチュッ
気付けば私のすぐ目の前には人影が迫ってきていて──私はその人とぶつかって、尻もちをつく形で転んだ。
「いっつ……」
「………」
誰も何も言わずに、暫くの間沈黙だけが流れた。いつも騒がしいミライちゃんですら、青ざめた顔のまま固まっていた。どうしたのだろうと思い顔を上げてみると──その理由がわかった。
その人はぶつかってからずっと何も言わずに、ただ私たちを目を見開いたまま見ていた。そして何よりもだ。その人の顔は──尋常じゃないくらい爛れている状態だった。よく見れば顔だけじゃなく、全身だ。服すら燃えてしまったのか、全身が隅から隅まで酷い火傷痕で原型をほぼ失い、赤黒い肌と剥き出しになった歯、片目が潰れた状態のグロテスクな光景に二人で息をのむ。
「…………」
その人は私とミライちゃんを一度ずつ見てから、膝から崩れ落ちてそのまま倒れて動かなくなった。
「「……………」」
暫く経って、私はようやくその人から視線を外せるようになった。立ったままのミライちゃんと目があって、もう一度固まる。その後また倒れた人を見て、やっとのことで正気を取り戻した。
「何……これ?」
「これって!──」
「ねえ、もしかして私たちヤバいの見ちゃったんじゃ……あの、大丈夫、です、か?」
躊躇いながらも、尻餅の状態から少しずつその人の顔を覗く。返事はなかった。
「……!救急車……ミ、ミライちゃん、119番して……そうだ、こういう時は胸骨圧迫して……」
私は携帯を持っていないので、そうやって言いながら再び振り返る──も、ミライちゃんはいつにも増して目を輝かせていた。
「ミライちゃん!見てないで手伝ってよ!」
「カコちゃん!やったよ!すごいよこれ!」
「……」
あまりにも違いすぎるテンションで言葉に詰まる。なんだか何を言っても無駄な気がして、私は勝手にその人の側で回りながら確認をする。
「うわぁ〜すっごい!こんなの初めて見た!記念撮影しとかないと!」
「きねっ……ミライちゃん!何言ってるの?人が倒れてるんだよ!?早く行動しなきゃ、死んじゃうよ!?」
「何って……人じゃないでしょ」
「……え?」
「こんな見た目な人なんていないよ。なら何か──きっと怪異!幽霊!超常現象!その類なんだよ!」
「……」
呆れた。そんなものは存在しないってとっくにわかっているし、急にそんなファンタジーになることは無い。いいから早く処置を……よし、覚悟も決めた。
そうして私はその人の体に触って、仰向けの状態にしようとするも……
「……嘘っ!?」
私の指先がその脇腹に触れた瞬間、そこが細かい破片になってボロボロと崩れた。
さっきぶつかった時はそんなこともなかったのに、まるで最初からそうであったかのような……豆腐のような脆弱性と固まったお米のようなパラパラ感、そしてその崩れた脇腹の中には──まだはっきりと原型の残っている肋骨があった。
「ひっ……!何、これっ!?」
「怪異の肉って事かな?採れるかなぁ。でもこういうのって大体記録とか残せないし……でもやってみよ!」
あまりの恐怖に退く私を置いて、ミライちゃんはどこからかビニール袋を取り出してその人の体に当てた。するとその体はさっきのようにボロボロになって、いくつかが袋の中に入った。
「……よし!問題なく採れた!」
「…………」
ミライちゃんは私の唯一の友達で親友だ。でもこの時だけは本気で友達を辞めようかと思った。元々知っていたとはいえ、ここまでの事をしているのを見るのが怖かった。
「え!?ちょ、なんで!?」
次の瞬間、私たちは触れていないのにも関わらず、その人の体は勝手にボロボロに崩れていった。更に、その崩れた破片もまたバラバラになって、それが──とだんだん小さくなっていき……ついにはただの赤黒い道路のシミとなった。
「「…………」」
何度目かの沈黙の後、先に口を開いたのはミライちゃんだった。
「も、もしかして、採ったのも……あぁ……」
袋に採った破片も一緒になってボロボロになっていたのか、透明だった袋が黒く染まっている。
「いや、でもこのあとはもう消えないのかな……なら取っとこうかな」
「やめてよ、それは流石に怖い……」
「そう?」
「だってそれ、もともと人だったんだ、よ?」
「何言ってるのさ、こんなのが起きるなんて、明らかに人間じゃないでしょ?だから私はこれを怪異って呼ぶの!それにさ、カコちゃん!これでわかったでしょ?やっぱり信じるだけ無駄じゃないんだよ!」
夕焼けの中、ミライちゃんの笑顔が明るく照らされて眩しい。でも───
私はこの時知る由もなかった。
私がこれから体験する事になる不可思議な現象とその真実、そして、それらを通して得る──
苦しみを。
ちなみに人が倒れているのを見たら
1. 声をかけたりして返事があるか確認
2. 呼吸、心音を確認
3. ヤバそうなら胸骨圧迫開始
4. 他の人に119とAEDやってもらう
って感じにしてくださいね。
作者との約束だぞ!




