第六話:俺達は
日差しが暖かいから暑いになってきた時期。俺は一人で学校から帰っていた。すると家の前に白い高級車が一台停まっていた。
「なんだ?」
近づくと車内から白いスーツ姿の男性が一人降りてきた。髪型はオールバックで身長は180cmはあるだろう。それにどことなく見覚えがあるというか誰かに雰囲気が似ている。
男性はこちらに気がつくとゆっくり歩いてきた。
「君ちょっといいかな?」
「え、あっはい」
「もしかして春野啓君かな?」
「どうして俺の名前を?」
「いやー、大きくなったな」
「あの、どちらさまで?」
「覚えてないのも無理は無いか。確か当時君は小学生だったからな」
そう言って男性は大きく笑った。
「えっと……」
「おっと失礼。私はこういう者だ」
男性は胸ポケットから名刺を1枚渡してきた。
「ハルノグループ会長春野……って」
「茜の父だ。ちょっと茜に用があって来たんだが留守かな?」
「確か夕食の買い物をしてるかと」
「茜が自ら買い物を?」
「はい、そうですが」
「あの子がか……」
「えっと、とりあえず家の中にでも」
家の中に入り茜の父をリビングに通した。
この前買った家具がすでに揃っている。
「お茶です」
「お、すまないな」
茜の父はお茶を一口飲んだ。
「あの、今日来た用事とは? 急ぎなら俺が伝えておきますが?」
「そうだな。今日来た目的は茜を――――」
その時、玄関が開き茜が帰って来た。
「ただいま。玄関前に車が停まってたんだけど誰か来てるの?」
茜はリビングのドアを開けた。
「久しぶりだな茜」
「お父様!? どうしてここに?」
「なんか用事があるとかでさっき来たんだけど」
「そのことなんだが茜、家に帰ってきなさい」
「えっ?」
突然の出来事に一瞬辺りは静まり返った。
「我々の事業は今後海外進出することが先日の会議で決まってな。アメリカに行くことになった。今後しばらくはそちらで暮らすことになるだろう。だからお前も一緒にアメリカに行くぞ」
「でも私……」
「来週にはここを発つ。それだけだ」
茜の父はゆっくり立ち上がった。
「啓君。急ですまないな」
「あ、いえ……」
リビングのドアを開けようとドアノブに手が触れた時、茜が小さな声で呟いた。
「いや……です……」
「なんだ?」
「嫌です。私ここ離れたくありません。もっとみんなと過ごしたい。まだ高校生活も始まったばかりですし」
あの大人しい茜がここまで大きな声ではっきり言うのをはじめて聞いた。
「だがお前がここにいる理由は無いだろ?」
「理由は……」
「無いのか」
「あります」
「なんだ?」
「私啓君と付き合ってますから」
「ほぉ」
「え?」
茜は一体何を言っているんだ?
「そうだよね?」
茜の瞳を見た瞬間俺はすべてが分かった気がした。
「そうです。俺たち付き合っているんですだから」
また静まり返った。怒られるような気がした。だがそれくらいの覚悟が無ければ茜が行ってしまうと思ったからだ。
そしてその静寂を切り裂くかのように茜の父は手を顔に当て大声で笑った。
「ははははは! それなら安心だな」
「え?」
「お父様それはどういう?」
「なんだお前達知らんのか? 二人が許嫁であることを」
「許嫁? 俺と茜が?」
「そうだ。お前の父と俺は学生時代から仲でな。お前達が小学校に入学した晩、近くの居酒屋で奴と酒を飲んでいるときのことだった――――」
『は? 茜ちゃんがお嫁にだって? まだ小学校入学したばかりだっての』
俺の父は酒を飲みながら笑った。
『でもいつかはそうなるだろ? 知らない男のところに行くなんて考えられん』
『茜ちゃんが知らない男のところに行くのが嫌か……それなら俺の息子と結婚させればいい』
『それってつまり』
『許嫁だ!』
「ってな。実のところ今日はその事実を確認しに来ただけだ」
「それでしたらアメリカ行くっていう話は?」
「別に私が行かなくとも幹部の誰かを向かわせるさ。それじゃぁな」
そう言って茜の父は帰って行った。まるで嵐のような人だった。
「えっと、とりあえず晩御飯作るね」
「お、おう」
今後どう過ごせばいいんだよーーーーーーー!




