漆黒の炎
ビルの狭間。
百はある室外機が立ち並ぶその空間にて。
吸血鬼である東雲が放つ特殊な超音波により、戦闘能力は低くも逃げ足が速く、透明化ができるという逃げ専門の、手紙の文字を喰らい、龍に姿形が似ている魔物、字龍の捕縛に成功。
東雲が携帯していた特殊な縄により字龍の透明化を阻止した上で、曙が携帯していた死神の紐で魂を縛る事で抵抗する気力を喪失させた。
あっけない幕切れに、けれど、東雲も曙も戦闘体勢を継続。
字龍のほかに魔物の気配を察知したのだ。
否。
正確には、魔物と人間の気配が入り乱れる特殊な生物。
魔物が人間を喰らったものの、人間の抵抗が激しく消化できていない状態なのか。
もしくは、人間が魔物に堕ちようとしているのか。
コロス。
甲高い機械音が幾重にも重なり合って聞き取りづらい不快な声音がその場に響き渡る。
コロス。
コロス。
コロス。
「カノじょ。からの。テガみ。ヲ。喰らっタ。ジげん。を。コロス」
右半分は二十代の人間の男性の身体、左半分は不気味に揺らめかせる漆黒の炎で占める半人半魔が空間を斬り出して出現したのだ。
「モう。かのジョ。は。このセカい。に。居ナイ。のに。サイ期の。イノチ。よりモ。タイセツ。な。テ紙。だったタ。ノに。ゆる、サナい。ユルサナイ。ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイイイイイイイイイイイィ!!!」
身体の左半分を占める漆黒の炎が右半身も浸食せんとする中。
東雲と曙は刹那にして半人半魔との距離を詰めては、東雲は自身の血で創った吸血鬼の剣を、曙はカンカン帽子を変化させて創った死神の剣を半人半魔に振り下ろした。
その瞬間。
凶暴化した漆黒の炎が東雲と曙に襲いかかったのであった。
(2026.10.30)




