第7話 実力不足
(10月18日に改稿)
緋色の前にライバルが立ちはだかる。
栄西先生は
「表体」
と唱えた。すると結界に閉じ込められている弱体化された妖魔が現れた。
耿李はそれを見てフッと鼻を鳴らした。
「皆下がれ」
栄西先生は警告し、皆安全な距離まで下がった。
栄西先生が指を鳴らすと、結界が解かれた。
それに耿李は素早く反応し、術を展開した。
「展開」
すると栄西先生が作ったお手本の真四角の形状ではなく、内側に向かってトゲになっている複雑な形の結界ができた。
妖魔はいくつかのトゲが刺さったようで、ぎゃやぁぁあという悲鳴を上げた。
「滅」
すると妖魔は一瞬で消え去った。
拍手が巻き起こった。
「確かにあれは応用的な術だったがここまで低位のものに使うのは少しもったいなかったかな、耿李。」
栄西先生は言った。
「これはあくまでおしゃれですから。」
耿李はクールに言った。
だが緋色は今日の食堂でのことが忘れられなかった。
なぜ自分の家が侮辱されなければいけないのか。
俺は無葵校長や鴉丸が認める神力の持ち主だ。
あれぐらい余裕で滅できるはず。
「じゃあGクラスからしていこう。あの妖魔は妖魔に見えるだけの練習用の特殊なものだからいつまでも復活する。それだけは承知しておいてくれ。」
出席番号順に並んだところ、緋色は12番目、金曜日の50m走と同じだった。
耿李はHクラスだったので順番的に隣になったとき、耿李は緋色に向かって口を開いた。
「あの神力持ちでも神力を制御できるかが問題だからな。今日の食堂の分を実技で返してくれ、苑。」
俺が耿李から何を奪ったってんだよ。
大丈夫、俺ならできる。
さっきは展開に手間取ったが、もうコツはつかんだ。
順番が回ってきた。
落ち着いて術を展開する。
「展開」
普通の真四角だ。
できれば耿李を超えるような結界を出したいがどう出すのか知らないので基本できちんと詰めることにした。
次は滅だ。大丈夫。
「滅」
消えなかった。
「滅」
まだ消えない。
「滅」
なぜだ?
「滅」
なんでっ!
「滅」
緋色の声に怒りが混じってきた。
「滅!」
緋色は腹の底からの声を出した。
何度やってもだめだった。
「制御がだめだったみたいだな。もう次の人に回す。」
栄西先生は言った。
次の人もその次の人も、そのまた次の人も、成功していく。
次の人も、その次の人も、そのまた次の人も。
俺は取り残された。
◇
授業が終わって、耿李が話しかけに来た。
「力だけのやつだったんだな、お疲れ」
煽ってきているような口調で言ってきた。
実技がだめでも座学で追い越して見せる。
そして制御方法もしっかり身につけて見返してやる。
緋色の心に炎が燃え盛り始めた。
帰り道。
想志は訓練所のクラブチームに所属しているので帰れないとのことだった。
緋色は一人、駅への階段を降りていった。
降りていっている途中でなぜか眩しい光に襲われた。
全てが真っ白な世界だった。
緋色はまっ平らな地面に立っていた。
すると後ろから足音が聞こえた。
振り向くと、それは無葵校長だった。
「どうやら実技がだめだったようだな」
無葵校長も知っていたらしい。
緋色はしばらく黙った。
「はい」
無葵校長はしばらく考え込みながら緋色の周りを歩いた。
「そんなことを気にする必要はない」
無葵校長は励ました。
「ですが、俺…僕は耿李よりも圧倒的に実力不足です」
はっはっはっと無葵校長は笑った。
「まだ君は入ったばかりだ、心配することはない」
「入ったばかりとはいえ…昨日からすでにやらかしました」
うむ、と無葵校長は同意した。
「それは君が人というものに無知なだけだ」
「人として生きているのにまだ人ということに無知なんですか、それはありえません」
「いや、ありえる。」
無葵校長はすぐに否定した。
「では、僕は何を知らないのでしょうか」
はっはっはっと無葵校長はまた笑った。
「人は死ぬまでいつまでも無知じゃよ。世界にはいろいろなものがある。それをすべて語り尽くすのは不可能じゃ。」
無葵校長は少し間を置いてこう言った。
「失敗を知れ、苑緋色。」
急に現実に押し戻された。
緋色はホームのベンチに座っていた。
ふと頭を上げると電車が発車していた。
慌てて立ち上がっても遅かった。
次の電車は18:37。
約45分後だった。
むしむしと暑いホームにずっといる気になれなかったので、緋色は階段を登っていった。
緋色は図書室に行った。
なにか神力制御についてわかる本を読もうと思った。
検索機で神力制御と検索するとかなりヒットした。
これなら大丈夫そうだ。
一番分かりやすそうな本の蔵書番号を印刷して、コーナーを探していった。
だがもう一度資料情報の紙を見ると、「貸出中」とあることに気づいた。
じゃあ他の本をと思い、再び検索機に行って調べると、全部貸出中だった。
実技のことで頭がいっぱいすぎる。
なんて視界が狭かったんだ。
緋色はとりあえず小説を読んで暇をつぶすことにした。
そして、真剣に読んでいるとあっという間に時間が過ぎた。
駅に降りていくと電車がすでに来ていた。
いつもは萬駅行きのはずの電車が、今日は雅羅駅行きだった。
山手線のような環状線なのだろう、いずれいつもの駅に着くだろうと考えた緋色は、躊躇なく電車に乗り込んだ。
こんにちは、ヤサイローリングです
次回で苑緋色覚醒編が最終回になります。
第2シーズンに引き継がれる非常に重要な回ですので、必見です!
次回更新は10/11 18:20です
お楽しみに!




