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第3話 神力度数測定

(10月17日に改稿)

鴉丸小夜(からすまるさよ)の案内で颪陰陽訓練所(おろしおんみょうくんれんじょ)に到着した苑緋色(そのひいろ)は、事務方の案内で校長と面談する。

事務方は廊下を少し歩いた先にある校長室へ案内した。

「校長先生がお待ちです。」

事務方は手を戸へ差し出した。

<こんこん>

「鴉丸様と苑様がお越しです。」

しばらくの沈黙。

[入れ]


戸を開けると、いかにもカタブツな白いヒゲを生やしたおじいさんがどっかとソファーに座っていた。

「座れ」

おじいさんは自分の目の前にある、テーブルを挟んだところのソファーに手を伸ばした。

「失礼します」

小夜はおしとやかな声でソファーに浅く腰掛けた。

緋色はこんな無礼なじいさんに、そんな挨拶はしたくなかった。

が、言わなかったら後々めんどくさいことになりそうなので、

「失礼します」

と、反抗心まじりの少し低い声で言った。


「まあまずはお茶でも飲んで落ち着け。」

テーブルにはお茶などない。

するとおじいさんはポケットから札を取り出し、顔の前に持ってきた。

「表体」

札が一瞬眩く光ると、テーブルにお茶が出現した。

緋色は目を丸くした。


「はっはっはっ」

おじいさんは緋色を見て高笑いした。

「これは隠されたものを出現させる術だ。もともとお茶はテーブルにおいてあったんだがね。」

どこか意地悪な感じが緋色にはしたが、横にいる小夜を見ると、遊び心満載とでも言うような笑顔だった。

「物質は札で作ることはできん。そんな魔法めいたことはせんから安心しろ、苑。」

確かにどこか優しい感じがしなくもない。

「さ、お茶を飲め。茶道みたいなことはしなくていいからな、抹茶だが。」


お茶を3口ほどすすった後、おじいさんは口を開いた。

「自己紹介が遅れてしまったな。」

「わしの名前は玄海無葵(げんかいむぎ)だ。訓練所の校長だ。よろしく、苑。」

玄海という名字にどこか引っかかったが、自分も自己紹介しなければならないので頭の隅に追いやった。

「苑緋色です。校長先生、これからよろしくお願いします。」

無葵校長は、うむ、というようにゆっくりと頭を下げた。

「さて、緋色くん。この後の全校集会に出てもらう。そこで、神力度数を測定する。手順を説明しよう。」


                       ◇


<ぴーんぽーんぱーんぽーん>

<訓練所の皆さんに連絡します>

<10分後に、颪体育館で全校集会が行われます>

<実技をしている人は札を保管箱にしまって、安全な状態にしてください>

<8分後までに集合を完了してください>

<ぴーんぽーんぱーんぽーん>


8分後。

颪体育館には訓練所の生徒が集合完了した。

かなりの数だ。

きっと颪駅から来ているんだろうけれど、乗車駅で大人数でバレたりしないのかな。

でもきっと対策があるんだろう。


<校長先生が登壇されます>

<起立、気をつけ、礼!>

バッ!

(軍隊みたいな一糸乱れぬ礼だな)

ギロ!

3人ほどを挟んで座っている無葵校長から本気で睨まれた。

思考が読めるのか!?


だが無葵校長はすぐに視線を戻し、登壇した。

「皆さん、こんにちは。」

<こんにちは!>

(すごっ)

「今日は、この訓練所に転入生がやってきたので、その紹介をしようと思う。」

<ざわざわ>

「静粛に!」

無葵校長はさっきの生徒の「こんにちは!」級の声を一人で出した。

生徒は一気に喋るのをやめた。

「苑 緋色くんだ。こちらへ。」

座っていた席から立ち上がり、ステージに登る階段を登った。

校長先生の隣に来る。

一気に正面を向く!

<きゃぁぁっ>

女子の黄色い声が上がった。


無葵校長はぎろりとこちらを睨んだ。

[禁術の一つ、惚れの術を使ったであるまいな?]

なんと無葵校長はテレパシーで話しかけてきたのだ!

返答できるのかはよくわからなかったが、心のなかで強くこう訴えた。

[いいえ、術は一つも習っておりません。]

すると校長はゆっくりと視点を戻した。

どうやら話しかけられるとテレパシー術を持っていない人でも返答できるらしい。


「今から神力度数測定を行う!」

体育館の空気が一気にピリッとした。

事前に無葵校長から聞いた話では、この測定は互いのレベルを知る重要な行事で、悲しいことに見下したり見下されたりの判断材料にもなるという。

会社の序列を実力で決めるようなものだと考えればいい、とも言われた。

(だが苑が見下される側に回ることはないだろうと言われた。)

一年に一回、新年度が始まるときにするのが定例らしい。

だが緋色は転入生なので今月は7月だが、自分だけ行うらしい。


「生徒会長、水晶を。」

生徒会長がきれいに透き通った水晶を持ってきた。

水晶を無葵校長が手に取った。

「苑 緋色、手を水晶の上に乗せよ!」

これは神に宣言する儀式なので、大きな声を出さなければならないらしい。

緋色は手を水晶の上に伸ばした。

[さあ、緋色。術文を唱えよ!]

無葵校長はテレパシーで伝えた。


「我、ここに神に誓う。我が力、国のために用いん。」

腕が金のベールに包まれ始めた。

ものすごい勢いだ。

でも気に取られてはいけない。次を唱えなければ。

「天照の光の力の文を賜らん。」

全身から恐ろしい量の汗が吹き出し始めた。

<おおおおおお!>

どうやらすごいことが起きているらしいが神力によって一時的に目が開けられなくなった。

校長の事前レクチャーではそういう事が起きると言っていた。

次が最後だ。

「我が力、神と国に見出されんことを!」

これで終わりだ。

ここで神力供給は止まるはずだが止まらなくなってしまった。

(ど…どうしたんだ…っ!)

<なんかやばそうだぞ!>

<一旦後ろへ退避しろ!>

生徒も混乱しているようだ。

「断ち切る!」


水晶を支えていた無葵校長が叫んだ。

すると、神力の供給は終わった。

ものすごい量の力が流れたようだ。

ふらふらする、めまいが…


どんっ


緋色はステージの上で倒れた。


                       ◇


「緋色くん!」

小夜はとっさに声を出した。

やっぱりお父さんの言ってた通りだ。

緋色くんにはものすごい神力がある。

きっと神の加護をたくさん受けた影響で断ち切れなくなってしまったんだろう。

校長先生がそばにいてよかった。

そうでなければどうなっていたか。


数時間後、緋色は保健室で目を覚ました。

ゆっくりとまぶたを上げると、そこには小夜や無葵校長、鴉丸おじさんやその他もろもろがいた。

「大丈夫か、苑。」

無葵校長がヒゲを触りながら言った。

「ええ、なんとか…。歩くことはできそうですが走るまでの気力はなさそうです。」

「状況説明ありがとう、苑。鴉丸の親父、放課後になったらお前の手で家に返してやれ。」

「はっ、玄海様。」

「じゃあわしは執務に戻る。」

「小夜、学校が終わったら式を飛ばせ。まだ仕事がある。」

「わかりました、お父さん。」

無葵校長が去ると、周りにいた先生方らしき人たちも退室していった。


すると、見覚えのあるような人が駆け寄ってきた。

「おい、ひい!お前神力持ちだったのかよ!」

「ううぅん?ひい?その呼び方どこかで聞いたことがあるような…」

緋色の頭は一瞬ロード中のように固まったが、すぐに思い出した。

「えっ、想志!?」

緋色は飛び起きた。

「おっ、ちょっ、あんまり激しく動かないほうがいいんじゃないか?」

「いつつ…腰痛めたかも」

「無理すんなよ…」

「そういう想志だって、なんでこんなところにいるんだよ…」

「俺は前から術者なんだ。測定の後に、外部に漏らさないっていう契約書を書かされる。言えるわけがないだろ」

「そうか」

「緋色の神力度数測定、すごいことになってたぞ」

「目が開けられなかったから、何が起きてたか教えてくれ」

想志は、その時のことを語り始めた。


                          ◇


「我、ここに神に誓う。我が力、国のために用いん。」

緋色の水晶に伸ばした腕が金のベールに包まれ始めた。

ここまでは皆が経験するものだ。

想志も、緋色ほどではないが同じ現象を経験した。

緋色のベールは肌一つ見えないほどのものだった。

だが訓練所の成績優秀者でもそれは起こりうる。

だからそこまではまだ普通だった。

だが、

「天照の光の力の文を賜らん。」

これを言ってからが恐ろしいことになっていた。

ここが水晶に一番神力が流れ込むタイミングだ。

ここで大抵の人が汗が滝のように流れる。

そこからは比較的穏やかになるだろうと、皆が予想していた。

だがそうはいかなかった。

なんと天照大神といった天上の神が降臨したのだ。

これは訓練所の歴史の中で無葵校長が入学したときにしか起こらなかった現象だ。

この現象を見ることができるのは本当にラッキーなときだけ。

一生に一度見れるかどうかさえわからないほどの確率だ。

そこでみんな歓声が起きた。

このイケメンはただ者じゃない、と。

そして、

「我が力、神と国に見出されんことを!」

これで神力の供給は終わる、

はずだったのだが、緋色の場合は終わらなかった。

これは校長も想定外だった。

これを言い終わると、水晶は術文を言った人のレベルを色で指し示す。

一番下が白で、一番上が黒。

緋色はそれを超えて、水晶から黒のオーラが溢れ出してきた。

このオーラはどんな効果をもたらすか分からない。

だから皆後ろに退避した。

安全が確保されると、無葵校長が「断ち切る!」と叫んだ。

誰も聞いたことないほどの必死な声だった。

断ち切る、ということは失敗すると自分と自分の持つ神力が断ち切られる可能性があるからとても危険な術だ。

成功確率がそもそも低い。

生徒の命を守るために、無葵校長は術者人生をかけてあれを言ったんだ。



◇



緋色はそれを聞いてひどく落ち込んだ。

無葵校長が自分を危険にさらしてまで緋色と、生徒を助けようとしていた。

緋色は生徒たちと無葵校長を危険にさらしてしまったのだ。

無意識に涙が流れた。

想志は何も言わずに緋色に寄り添った。

どうもこんにちはヤサイローリングです!

今回のエピソードでは緋色の人間くさいところが出てきた回です。

ぜひ読者の皆さんにも緋色は万能だけじゃないところに注目してもらいたいです。

それではまた次回!

~更新予定 9/13(日) 18:20~

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