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第10話 破られた札

破られた札の事を聞きつけた鴉丸オジイがやってくる。

「伝達式」

小夜は焦った様子で言った。

ふわりと小夜の手の上から式が現れた。

「怪しい札が緋色くんの背中から見つかったってお父さんに伝えて」

式は小夜の手から飛び立ち、玄関の戸をすり抜けて飛んでいった。


「パターンは、実花先生がつけて耿李が破った、実花先生がつけて想志が破った、耿李がつけて想志が破ったの3つね。」

「ちょっと想志に連絡してみる。」

緋色は、

[想志、俺の背中についてた札、今日のうちに破った覚えはある?]

と入力して送信した。

どうやら想志はちょうどスマホを見ていたようですぐに既読になった。

返信は...




[札なんてあったの!?]


「はぁ...」

小夜はため息をついた。

想志は関与していないらしい。

「となると、実花先生がつけて耿李が破った、という可能性が高いわね...」

「まさか耿李が破るなんて、天地がひっくり返っても有り得ない。呪いがついている札ならそのままにしておく可能性が高いぞ。しかも先生がつけるなんて...」

「そこが気になる点ね...」


緋色は今日の朝から起きたことを順に整理していった。

「そういえば、朝、颪駅でずっとこっちを見ているやつがいた」

「その人が怪しい!特徴を覚えてる?」

「イケメンではない。髪型はとにかく切ったみたいな感じ。」

その時。


「小夜、緋色!」

弦刀ちゃんが階段からやってきた。

「これ...」

小夜はオジイに札を渡した。

「詳しく調査する。着替えて広間で待ってなさい。」

オジイは自分の部屋へ行き、術を使って様々な可能性を調べた。


1時間後。

オジイが札を持って降りてきた。

「危険性はない。問題なかった。」

「なら良かったけど、誰が貼ったかという問題ね。」

「顔や名前は知っているのか?」

オジイは聞いた。

「2人候補がいるけど、それ以外にもう一人いる。顔は覚えてるけど名前は知らない。」

緋色がそう言うと、オジイはしばらく悩んでこういった。

「では、強力な味方を呼ぶ」

オジイは広間から出て、誰かに連絡した。


10分後、その人がやってきた。

オジイはこういった。

「この人は仕事柄上、君たちに職業を明かせない。そこだけ頼む。」

「分かりました」

小夜は返した。


その人はオジイの紹介の後、きびきびと歩き、広間のテーブルに腰掛けた。

彼はバッグからノートパソコンを取り出した。

何一つ無駄のない動きだ。


彼は一糸乱れぬタイピングで何かを打ち込んでいった。

すると4つのカメラ映像が画面に映し出された。

「ここって、颪駅?」

「話は聞いております。朝何時頃に電車は到着されましたか。」

どうやら緋色と小夜の2人の会話をオジイは聞いていたらしい。

「07:05頃です」

小夜は答えた。

「では1分前から流します」


流し始めて10秒後、電車が到着した。

さらに10秒後、緋色たち3人が降りてきた。

改札に着く間に見てきた人...

「あ、こいつです!」

緋色は叫んだ。

詳細不明人間は映像を止めた。

「この人ですね?」

「はい。」

詳細不明人間はノートパソコンを自分の方に戻して、再び何かを打ち始めた。

「こちらの人は、陽今(ひいま) 雅俊(まさとし)、訓練所に通う術者です。」

「明日、話してみます」

緋色は言った。

「緋色に札を貼ったかもしれない人なんだぞ、小夜に会わせろ」

オジイは口を挟んだ。

「真意を聞くのは緋色が適任だと思うわ、後ろから見守る。」

小夜が言った。

「小夜が言うなら...しょうがない。」

オジイは譲歩した。

明日の朝、絶対になぜ俺を見ていたのか最初から最後まで吐かせる。


◇


翌日の電車の中。

「ガチでそいつに凸るのか!?やめとけよ!」

想志は緋色を心配しているようだが俺はもう覚悟を決めた。

聞き出す。それだけだ。


颪駅に到着した。

周りを見渡してあいつがいないか探した。

だが改札にたどり着くまでに見ることはなかった。

隠れた臆病者!


教室棟に来てから、下足棟にダッシュして、そいつが来るのを待った。

小夜は緋色がこんなに早く飛び出したとは知らず、付いてこなかった。

15分後。

1本遅れた電車に乗ってやってきた雅俊が下足棟に現れた。


彼が靴からシューズに履き替えたタイミングで彼の前に立った。

「ひっ!そ、苑さん!?」

彼はかなり驚いたようだ。

「お前、昨日の朝、颪駅で電車降りた後俺のことずっと見てただろ」

「へ?」

「とぼけても無駄だ!じゃあ俺の背中についていた札は何だって言うんだ」

緋色は彼に自分の背中についていた破れた札を顔に押し付けた。

「札?僕はあなたに触ったことはありません!」

「じゃあなんで俺を見てたんだよ」

「昨日の朝...」

彼は思い出しているようだ。

「僕はあなたを見ていませんでしたy...」

「でも俺はお前がこっち見てきてるのを見た」

「人の話を最後まで聞いて下さい!」

キレた。

「ごめんなさい、どうぞ」

「僕は、あなたじゃなくて...その...あの...」

「何を見てたんだ」

「さ...小夜さんを...見てました...」

沈黙が流れた。

「お前は...小夜が好きなのか?」

「はい」

また沈黙。

「ごめん、人違いだった。また今度お詫びさせてくれ。」

「解決できて良かったです。」

「とりあえず、連絡先だけ交換しませんか」

「あ、いいですけども」

二人はスマホを取り出して連絡先を交換した。



雅俊じゃない。

ということは誰が貼ったんだ?


◇


今日は1時間目から杣締先生の授業だ。

頭が重い....。


「今日は陰陽師世界を司る”十二支”についてお話しましょう」


「十二支は動物の姿で存在しています。

十二支は陰陽師世界を影で動かしていて、どの新たな命に神力を授けるか、様々な物事の成り行きを決めたりしているのです。

これは飛鳥時代に天(あま)氏が記した神話扱いの書物による話なので、信憑性はありません。

ですが下界に降りてきたと見られる十二支の目撃情報が12年に1回出るんです。

ちなみに11年前に起きた目撃が一番最近なので、今年は目撃されるかもしれませんねー。

ちなみにその事件が起きたのは夕方。

当時最新だったスマホを触っていると、なぜか通信が途切れ、前を向くとそこには巨大な牛がいたといいます。

カメラで撮影しましたが、後日確認すると牛は映っていなかったそうです。不思議ですねー。」


先生はその後45分間十二支の話を続けた後、別の話題に移った。

「それでは皆さんの課題をチェックしましょうかね。出席番号順に隣の準備室に来て下さい。テストします。」

皆世界の終わりを見たかのような顔をした。

「そんな顔しないでくださいよ...」

杣締先生はすねた。

だが緋色は月曜日に想志の助言を受けていたので、かなり自信がある。


◇


12番まで回ってきた。

準備室に入ると、杣締先生が椅子に座って、待っていましたよ、という顔で待ち受けていた。

「苑緋色さん、ランダムで一つ出します」

無意識に喉からゴクリという音が出た。


「第16条のタイトルと内容を述べよ」

ラッキー。想志と実際の例を経験したので楽勝だ。

「第16条 関係者以外が話の内容を聞く可能性があるときは職業名を公務員と名乗ること」

タイトルを言い終わると杣締先生はゆっくり頷いた。

「陰陽師は人間社会に溶け込む必要がある。一般人が会社内や学校内などで陰陽師同士のストレートな会話を聞くのはあってはならない。そのため、陰陽師という単語を出す時は公務員に変換して話すこと。」


杣締先生はしばらくノートにカリカリと書き込んだ後、

「よし。100点。教室に戻って下さい」

と言った。

ふぅ。なんとかクリア。

緋色は安心感を胸に教室に戻った。


◇


昼休み。

緋色と想志は教室で盛り上がっていた。


ガラガラ。

教室のドアの方から恐ろしい雰囲気が漂っている。

恐る恐る振り返ると、それは美鶴代先生だった。

美鶴代先生はこのクラスの担当ではないのにどうしてここに用があるのだろう。


「苑緋色」

あー。やっば。


恐怖を感じながらも緋色は立ち上がって美鶴代先生の方へ向かった。

「なんですか」

「こちらがクラブ申請書です。好きなクラブを選んで入ってもいいですし入らなくてもよいです。」

「ありがとうございます」

そして緋色はまた席に戻った。

教室から出ていく間にも美鶴代先生はなにかグチグチ言っていた。


「何クラブにするんだ?」

想志が聞いてきた。

「雅楽クラブにしようと思う」

「え、授業の最初っから実花先生にハリセンやられたのに!?」

「琴の音は神力制御にいいらしいんだ。実践してみたいんだ」

「緋色はせっかく力があるのに制御がだめだからな...やってみる価値はあるんじゃないか」


申請書の端には、決めたらクラブの顧問に渡すこと、とある。

もう決まってるし、昼休みも時間がまだあるので出しに行くことにした。


職員室に着いた。

ドアをノックして、開けた。

「Gクラス苑緋色です。玄海実花先生に用事があってきました。」

実花先生は気づいたのか手を上げて誘導してくれた。


「これ、申請書です」

「分かりました。実は今日雅楽クラブがあるのですが、今日の放課後は予定は空いていて?」

「あ、はい、空いています。」

「では今日楽器決めをしましょうか。17:00始まりですので、それまでに器学教室にいてくださいまし。」

「分かりました。失礼します。」

緋色は職員室から出ていった。

こんにちは、ヤサイローリングです!

今回の話には、詳細不明人間が登場しました。

ですがこれから出てくることはありませんし、重要でもないのでどういう存在なのかここで教えます。

ドラマVIVA〇Tの別班をイメージしたものです。


取り入れてみたくなったという作者の遊び心です。

それでいうと、この作品にVIVA〇Tが与えた影響はかなり大きいです。

颪駅の切符購入方法も影響を受けたものの一つです。

それだけです。

次回もお楽しみに。


追伸

重要なお知らせ(活動報告にて)があります。

以下のリンクにアクセスしてください。

https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/3125611/blogkey/3730471/

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