ライオンと呼ばれた男 その5
ぼくは、「わっ!」といって、尻餅をつける。
そのままぼくがアタフタと手足をばたつかせていると、ビキッ! と今度は強い音がして、その男子生徒の動きが急激に鈍くなった。まるで、見えない縄に雁字搦めに縛られたかのようだった。
見るとデミニさんが、片手をこっちの男子生徒へも向けていた。
「早く逃げて! このままだと、私も持たない!」
「え?! 何?! なんなの?」
緩慢な動きの男子生徒は、ひたすらにもがいている。
逃げようとしても、ぼくは何が起きているのか、どうしていいのかわからないまま。デミニさんの方を向いた。
デミニさんの目に見えない壁の力が弱まっているのか、抑えているもう一人の男子生徒の動きが少しずつ取り戻されているかのようだった。
裏庭には、既に他の生徒はいない。
誰もいない空間に、ぼくとデミニさんとおかしくなった男子生徒二人がいる。
このままでは、デミニさんの動きを抑えている不思議な力が消えてしまう。
ぼくは、そう思うとその場で慌てだそうとしたけど、勇気を振り絞って、レオおじさんから教わったエーテルの使い方を思いだそうとした。
意志を向けて右拳に集中力を束ねて、少しずつ力を入れていくと。
恐怖や混乱する頭で、やっとのことで、思い出したエーテルの使い方は、レオおじさんといた喫茶店のコーヒーの香りがした。
「えい!」
近くの男子生徒の前に、突き出した右手の掌から、まったく見えないんだけど、右手の周りに凄い力が集まりだした。




