表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
WH/Alternative  作者: KIKP
5/25

Alternative 5

顔を確認し終えた後は、セルベラに連れられて採血、視力や聴力、身長と体重を測り、全身のレントゲンや脳波といった様々な検査が行われた。

その検査毎に様々な人に出会ったが、やはり自身以外に靄が無く顔の見える人物は誰一人いなかった。


全ての検査を終え、残るは診察のみとなった。


移動中暇だったのかセルベラが色々と話していた。

最初は施設での注意点で、エレベーターはあるが、職員の許可なしに使ってはいけない事などを教えてくれた後は、まぁ殆どがパートナー関係の事や化粧品やらファッションやらと興味が無いことを話していた為、子供の私からしたら難しく分からない事でそれらは適当に聞き流していたのだが、これから向かっている先生の話を少しだけしていた。


その先生はこの施設の所持主で管理者でもあるようで、これだけ広い施設で多くの従業スタッフを雇っているよう様で、自称世界で上から数えるの方が早い位置に入るとか何とか。

それを聞いて頼りになるのかは分からないけどこれだけ多くの従業スタッフに囲まれているのだ、それなりには信用できるだろう。

だから自身の持つ謎も尋ねれば幾つかは原因が分かるのかもしれない。


そんな期待を胸にその扉の前に着くと、セルベラが扉をノックし、返事など待たずに扉を開く。

「失礼します先生。アルフレッドくん連れてきましたよ〜」

「ああ、ありがとうセルベラくん」

そう奥の方から若々しい男性の声が聞こえた。一体どんな人なのだろうかと、まぁ相変わらず黒い靄がかかっているんだろうな、と思いながらその部屋へ入りその人を見る。


何か仕事をしていたのか小さな端末をいくつか操作した後、机に置きこちらを向いた。

「やぁ、久しぶりだね。アルフレッド・カーマイン君」

「先生アルフレッド君久しぶりすぎて私の事忘れてたみたいだから、多分先生ごときのことなんて覚えてませんよ」

「そうなのかい?というよりごときって」

セルベラさんの言う通り先生の名前は覚えておらず、静かに頷く。

「そうか…ならもう一度自己紹介をしとこうかな。私の名前はフィカス。まぁフィカスさんでもただ先生とでも好きに呼んでくれるといいよ」

「そうそう、先生でも変態でもろくでなしにクズ、カスでも好きに呼ぶといいよ〜」

「ん…セルベラくん?」


そう先生が挨拶をしてセルベラとふざけた会話をしていたのだが、私はそんな事は聞こえておらずその姿を見て硬直し動揺してしまう。

それは先生の顔を見て固まってしまったのだ。


その顔は相変わらず黒い。黒いのだが、これまで見てきたような黒い靄がかかっている訳では無い。

なんだろうかあれは…。真っ黒な、糸のようなものがびっしりと顔と埋め尽くし、まるで生きているのか、蠢いている。


そう、それは生物で言えば黒いミミズ…いや、カマキリやコオロギから出てくるハリガネムシだろうか。それが数え切れないぐらい見えている。

集合体恐怖症でなくても、それを見れば気持ち悪く、恐怖を感じそうなものなのだが、不思議とその先生からは何も感じられないでいた。

むしろ幾つかのハリガネムシは顔の輪郭からはみ出て手を振るように体をくねくねとさせており少しだけ可笑しく思えた。


「どうしたのかな?」

「い、いえ別に何も…」

「そうかい?まぁ、立ってないでそこに座るといいよ」

「は、はい」

そう、先生の前にある椅子に座る。


部屋の中は壁にいくつもの資料ファイルが敷き詰められた棚、すぐ側にある先生の机にはいくつもの七つのモニターがあり、自身のレントゲン写真や、心電図などのものが広げられている。

それをよく見るが素人目の私にはさっぱり何が記されているのか分からない。


「そう心配することは無いよ。検査結果を見させてもらったところ、やはり君の体にこれといった異常は全く見当たらない健康体だからね」


そう明るく先生は言うのだが、


「まぁ検査結果上は異常は見当たらなかったけど、残念なことに、ここにあることが全てではないからね…。君自身、何か感じている事はあるかな」


と、やはり感がいいのか私の様子に何か気が付いたのかそう問いかける。


「あの、色々と感じることはあるんですが私は何でここで入院しているんですか?それに今日、目覚めるよりも前の記憶がないというか断片的にしか思い出せなくて、名前もお姉さんに名前を呼ばれるまで分からなかったし…」


「…どうやら記憶障害があるみたいだね…名前を覚えてないのもそれのせいなのかな?」

「たぶん…」

「入院している理由は二ヶ月ほど前に君が家族たちの前で突如倒れ意識不明になっておりこの病院に搬送されたんだよ。その時にすぐに検査をしたが先も言った通り人体や脳に一切の異常が無く手に負えない状態だったんだよ。

だけど三日ほどして急に回復し意識を取り戻したんだよ。だけど原因不明のまますぐに帰す訳に行かないし、親御さんからの意見もあってしばらくここで様子見ということで入院することになったんだよ。

そして十日前に突然目を覚まさなくなり、その三日後意識を取り戻したかと思ったら痙攣を起こし再び意識を失い、そして今日目を覚ましたという感じだよ」


「そう…なんですか」


「まぁ、記憶喪失に関しては私達が直接何とかできるものじゃないからな〜これまで通り様子見となるかな〜」


そうフィカスは少し困った様に悩みながらパソコンに記録をしていく。

「じゃあ、記憶障害以外に何かあるかい?」


「その、人の顔が分からない病ってありますか?」


「顔が分からない病か。一応、相貌認失認というものがあるが、ふむ」


すると先生は一枚の紙とボールペンを目の前に差し出す。


「ここに君の思う人の顔と今、君が見えている人の顔簡単にでいいから描いて見てくれないかな」


言われた通りに顔を描いていく。

とりあえず丸っぽく輪郭をつけて目と鼻は店でいいかな。口と眉とかは線で、髪の毛は適当にしてこんなものだろうか…。隣に自分が見えているとおりにって…なかなか難しいなどうすれば靄の様なものをどう描けば…。


そう少し考えていると少し視線を逸らした先に参考になるものを見つけた、すぐに描き終わりそれを差し出した。


その描かれた顔は本当に初心者の子供が描くようなもので我ながら少々画力ないなぁと自覚できたものだ。そして靄をどう表現したかと言うとインクを少し多めにして指で擦ることで何となく表現することが出来た。


「認識的には顔がどういうものか分かってはいるようだね。それで君のこれはどういう風に見えているんだい?」


「頭全体を覆い隠す様に真っ黒な霧というか靄がかかっていて全く目とか口とか見えない感じです」


「ほう…。それはそれは面白い」

そう顔が見えないはずなのだが先生から凄い視線を感じられる。


「先生?」

そうセルベラが注意の呼びかけなのか、少し怖い雰囲気を出して呼んだ。


「いやいや、済まない。相貌失認とは事故などの怪我や脳梗塞、脳出血といった脳機能への傷害になどの要因によって生じるもので主に君のように顔が見えない、分からないと個人を特定出来ないと言ったものだ。先も言った通り君の体は頭の先から足先まで見たところ異常はない。となるとそれは心因性によるものだね。心因性とは何か悩みや、ストレスといった何かを要因として様々な症状を生じるものだ。だから君の病は心因性相貌失認となるだろうか」


「…これは治るものなのでしょうか」


「ああ、それは治りはするが記憶障害どうよう君次第としか言えないかな。これに関しては君自身の持つ何かを解決するのがその症状を治す鍵だろう」


自身の持つ何か…それって一体何なんだろうか。だって今日まで寝たっきりという事はそんな事を持つことも無さそうだというのに…。


「まぁ君にはまだまだ時間はあるんだ。焦らず少しずつ進めばいいんだよ」


「分かりました」

確かにそうだ。病もそんな簡単に治るわけなんてない。だけど時間ともに少しずつ改善される。きっと僕のそれもそれと同じようなもんだ。だから先生の言う通り焦る必要なんてないんだ。自分のペースで思い出せるようにしていこう。


「これから毎朝一応検査するとしよう。今はその原因が上手く隠れてる可能性があるからね。それと心因性治療のためにカウンセリング等の時間を(もう)けるとしのう。一応そこの彼女もその線はできるがどうかな」


そうセルベラを指し示し見るとなんだか嬉しそうに手を小さく振ってアピールするのだが。


「それもいいかもしれませんが、それだと仕事が重なって大変そうですから他の人でお願いします」

即決で丁重に遠慮させてもらった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ