Alternative 4
セルベラに連れていかれ施設の廊下を歩き進む。
白衣を着た人達と多くすれ違う。
相変わらずどの人も黒い靄によって顔が隠されているが、それはもう慣れつつある。
少し気になるとしたら凄く視線が集まってることだろうか…。まぁその視線は私ではなく一緒に歩いているセルベラさんへのものだと分かってはいるのだが、少し…気持ちが悪いというか…あまり居心地がいいものでは無いな。
それにしても両親にはあった赤い乱線は…見間違いか疲れのせいだったのだろうか。ここまで誰一人として赤い乱線のある人物はいなかったな。
「じゃあ、はいコレ」
そう言ってセルベラは一個の紙コップを差し出す。
「尿検査しないといけないから、ここのトイレで採ってきてね。採り終わったら入ってすぐにある小さな窓口のトレーの上に置いといたらいいから」
「はい」
「一人で出来る?お姉さんが一緒に入って手伝ってあげよ…」
と彼女のその発言が言い終わる前にそれを受け取り聞かないように急ぎ足でトイレの中へ入って行く。
「ん〜か〜わい」
――――――――――――――
トイレの中は採尿をする為に作られているのか扉に鍵をかけることができ、更に個室が一つあった。
さっさと採尿をして個室を出る。
何故あの人は一々色気や弄らうようなアピールをするのだろう…。
まぁそんなどうでもいいことはいいや。検査を終えたら診察の時に先生に色々聞けるだろうから。今ある疑問を全て聞いてみよう。
そう手を洗い終え視線を少し上に向けると、目の隅に対面に立つ人の影が見えた。
いや、目の前にあるのは洗面所。つまりそこにあるのは鏡であり、その人の姿とは自身のことだ。
考え事をしていて全く気が付かなかった。
たが、これは良い機会だ。自身の顔を見れば何か思い出せるのではないか。
そう思い顔を上げようとするのだが。なかなか顔を上げることが出来ない。
それはちょっとした恐怖だ。
顔を見ても何も思い出せないかもしれない。思い出せても、それはいいものでは無いのかもしれない。その他にも自身にも靄がかかっており自身の顔を見ることも出来ないのではないか、そもそも自身の持つ人の顔という認識が間違いなのではないか、本当は黒い靄が正常であり、認識が世界とズレているのではないかと。
だけどこのまま何もしなければ先に進むことは出来ない。
そう覚悟を決めるように呼吸をし、ゆっくりと顔を見上げ、それを見る。
その鏡に映ったその姿は自身の知っている。しっかりと目があり、鼻があり口がある。黒い靄など一切ない、認識通りの人の顔が映っており安心を感じる。
だが、見える故になぜ、自分の顔は見えるのだろうという疑問が出てくるものの、そんなこと分かる筈などなく諦め眺める。
その顔は幼い為か、中性的でどちらかと言うと女の子寄りの顔立ちで自分の顔ながら可愛いと自画自賛してしまいそうになる。
瞳の色は髪色と同じブラウンで少しだけ赤黒いだろうか。
それほどの顔なのにやはり見覚えが無く、初めて見るように感じられた。
今日この日まで本当に自分の顔を見たことがなかったのかと、自分に対して謎ばかりが増えていく。




