Alternative 23
退院当日。
だが、いつもと変わらない朝で迎え、いつも通りに身支度を済ませる。
退院日という事で、検査は脳波だけでなく二時間の精密検査を徹底的に受けることとなった。
検査を終えて診察室に入る。
相変わらず、充実したようなさわやかな顔でフィカスが迎える。
「やぁ、退院の日を迎えたわけだけど、調子は、ご機嫌はどうだい」
「何も問題ないですよ」
その返事に、フィカスは一瞬きょとんとして、直ぐに微笑む。
「昨日は昼食も夕食も取らずに資料室で何かを見ていたようだが…どうやら、何か納得できて、スッキリできているよだね」
集中していて見ていたからいつの間に様子を見られていたのか?まあ、そんなことはどうでもいいか。僕は患者なのだから様子を監視されていたとしてもおかしくはないのだから。
「ええ、それなりには。頭痛も無くなりましたからね」
「そうかそれは良かったよ。まあ、僕としては寂しく思うが君から他に無ければ診察は終わりかな」
そう僕の様子を見て無い事を理解する。
「では、診察は終わりにするよ。君の両親の迎えだが十五時頃に来ることとなっている。それまで自由にしていたまえ。あと、昨日二食も抜いているのだから、この後、しっかりと食事は取るように。じゃないと、力が出ないからね」
「分かりました」
「それじゃあね」
そう手を振る彼のそれに答えるようにお辞儀をして外へ出る。
言われた通り、食事しっかりと食事をとり病室に戻る。
迎えの時間まで五時間弱。
僕は資料室から借りた本とDVDを見て時間を潰す。
それは、読んだことない見たことのない新しいモノではなく、記憶に深く残っている途中で終える作品だ。見終えると再び次と最初から見て。終えて見てと、それらを繰り返し見続ける。
きっとそれには大した意味などない。
ただ落ち着くから、そうしているに過ぎない。
そう時間を潰し、あと十分で時間が来る。
僕はナースコールを鳴らす。
すると直ぐにセルベラがニマニマと嬉しそうに駆けつけてくれた。
「なんかすごく上機嫌ですね。どうしたんですか?」
「ん?だって君がこうやって私を呼んでくれたの初めてだからね。お姉さんとてもうれしいよ。それに他にもいいことがあってね。まあ、それは置いといて。それでどうしたのかな?」
「ちょっとお腹が空いて軽く食べたいんだけど。そういうのっていいのかな」
「そういうことなら。まだ食堂が開いていると思うけど」
「うん、そうなんだけど。今はりんごが食べたいんだけど、どうせなら自分で皮を剝いたり切ったりしたいんだけど。そういうのって大丈夫なのかなって」
「なるほどなるほど。それで許可が欲しいのと用意してほしいってことね。もちろんいいよ。持ってくるね」
そう彼女は上機嫌に出ていき、数分経って食器とリンゴ、ナイフとまな板をお盆に乗せて持ってきた。
ナイフを使うのということで色々と危ないのもあり彼女は傍でそれを見ていた。
初めてナイフを握った。少し重くそれに持ちなれないな。
セルベラに向き方を教わり剝いていく。
始めこそ拙く、危なげであったが、二度と、中途半端に皮が途切れたが、そこからはそれなりにうまく剝くことができ、それを見て、セルベラは嬉しそうに褒めてくれた。
そうして適当に切り分けてそれを食べる。
自分で剝いたというのもあってか、少し美味しく感じられるな。
そう食べていると、部屋の扉がノックされ、開かれる。
「失礼します」
その声と同時に二人の男女が部屋の中に入り、こちらへ向かって歩いてくる。
男は少し赤寄りのブラウンに染まった髪色の短髪で、ヘーゼル色の瞳。少し地味で暗いアーガイル柄のチェック服を身に纏っている。体躯はスラッとしており、手首を見るに少し瘦せ型だろうか。
女は青白く、結ってはいるがハーフアップの長く綺麗な髪を魅せる髪型で、シルバー色の瞳。男のファッションセンスに比べ彼女はかなり整っており、黒いドレスの様なものを身に纏い、その上に白いジャケットを羽織り上手く着こなしている。
二人共、若々しく顔が整っており兄弟、またはお似合いのカップルに見えるだろうが、おそらくこの二人は
そう見ていると女性がこちらに駆け付け抱きつく。
「はぁ…久しぶりね…アル」
「お早い到着ですね。カーマイン夫妻」
「ああ、早く我が子に会いたいと思ってね。受付を済ませて直ぐに案内してもらったよ。それでこれは何をしていたんだい?」
「ああ、アル君がリンゴを食べたいと言っていて。ついでに自分で切ってみたいと言っていたので、危なくないよう一緒に切って今、食べていたところです」
「そうか、無理を聞いてくれてありがとう」
「いえいえ、気にしないで下さい。それでは親子水入らずで。先生はいつもの場所で待っていますので」
「ああ、助かるよ」
その返事にセルベラは深くお辞儀をして部屋の外へ出ていった。
「それでこれをアルが切ったのか。うまく切れているじゃないか、食べてもいいか?」
「うん、いいよ」
「どれどれ」そういって男はフォークを手に取りそれを食べる。
「おお、美味しいな」
「私もいただくわ」
男からフォークを受け取りそれを食べる。
「ほんと、美味しいわね。これもアルが綺麗に上手く切ったからかしらね」
「そうだろうな」
そう微笑む二人。を僕も一緒に微笑む。
「それで、しばらく一人でいただろうが寂しくなかったか?」
「うん、別に先生たちが親切だったから。そこまで寂しくなかったよ」
「そうか、それは良かったよ」
そう男は安堵するように胸を撫でる。
「アル、ここであった事聞かせてくれないかな。お母さんもお父さんも貴方がここでどう過ごしていたのか知りたいの」
「うん、いいよ」
その返事に二人は嬉しそうに一層明るくなる。
僕はここで目覚めてのことを話した。記憶が無く不安だったこと。色々な本を読んだこと。自分がしたいと思ったこと。自分の事をより多く話す。
それを聞くと二人がその話に共感してくれるように、時に悲しくも、一緒にワクワク、そして笑ってくれた。
やっぱり、僕の両親なんだな。とそれを見ていてよく分かる。
そう満足し話し終える。
「良かったよ。アルがちゃんと良く暮らせていたようで」
「そうね、先生たちに感謝しないと」
「そうだな。それじゃあもうそろそろ先生の所へ行こうか」
「ええ」
そう二人は置いていた荷物を手に取り、出ていく準備を整えていると
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突如、幾つもの爆発したような轟音と共に地震の様な揺れが響き渡った。




