Alternative 18
二週間後。
「…なんて?」
その疑問の言葉に双子も固まって皆同じ方向を見ていた。
その視線の先はセルベラを連れたフィカスが病室の扉の前に居り、告げたのだ。
「親御さんからの主張もあり、唐突に決まった事なんだが三日後の午後から夜くらいにエドアルト君とメレンレッチ君二人の退院が決まった」
「え…親の主張なんかで退院とか決まるものなんですか?」
「まぁ、その二人も君達と同じ、既になんの問題ない健康体だからね。親御さんからのお願いで完全な健康体となって一月以上検査を行いなんの問題も無ければ退院すると決めていたからね。それは双子君には最初の診察の時に伝えていたはずだけど」
そう黙々と告げるのだが、二人はのその様子を見るに納得出来ていないようで。
「た、確かにそうだけど急すぎじゃないですか?」
「そうだよ。それも明日だなんて」
「だから、唐突に決まった事って言っただろう。親御さんたちとは検査結果を送ったりとやり取りしていてね。昨日の夜に突然退院の申し込みのメールが来てしまってね。親御さんの主張で本来なら明日と予定されていたけど、あまりに急だったからこちらとしても色々とやらない事とかあるからと言って、三日の猶予を貰ったという訳だよ。僕としても気遣ってあげてるんだよ。せっかく仲良くなっている君達のことを」
そう申し訳そうに話すその様子を見て、流石に双子も先生を責めるなんて事は出来ず、グッと拳を握り締め俯く。
「まぁ、伝えて置いたとおり、せっかく時間を伸ばせたのだから、今日を含め三日間は学習の時間は無しにしておくから、それまでに悔いを残さぬようしっかりと旅立つ心の準備等を済ませておいてくれよ」
そう言ってフィカスとセルベラは病室の外へと出て行く。
あまりに唐突な事に静寂となる一室。
先生にしては珍しく思いやりのある配慮だな。いや、医者として心身的なものを見ての配慮という事だろうか。親御さんのお願いは完全な健康体という事だから、そこの害を無くすという考えだろうか…。よくは分からないけど、そのお陰で確かに時間が出来たのだから感謝はしとくべきだろうか。
だけど、今あの二人は何を思っているのだろうか。
それが分からないから何と声をかければいいか…。そう悩んでいると。
「も〜辛気臭いなぁ」
そう開口一番にフェルが言う。
皆がその声にフェルの方を見るとベットの上に仁王立ちしており、皆の視線が集まったのを確認してかベットから飛び降りてスリッパを丁寧に履くなり二人の側まで駆け寄りその手を引く。
「ほら、アルも行くよ」
「え、あ、うん」
そう、言われるがままに皆フェルに連れられて行った。
フェルに連れられてたどり着いたのは、このフロアの隅にある扉の前だった。
ノックをすると、奥のから「は~い、どうぞ~」と応答があり扉を開く。
部屋の中は生活感が充満とした部屋で見たことのあるアニメとかのフィギュアやら壁紙やらが丁寧に飾られていた。
そんな部屋の中でフィカスが椅子に深々と持たれて小型の端末を操作している。
プライベートルームというやつだろうか。
「どうしたんだい?」
誰が来たとか興味ないのか、それとも端末内の仕事が忙しいのかこちらを見向きもせず問う。
「中庭に出る許可が欲しくて来ました」
「ああ、いいよ。この際だからこの三日間はトレーニングルームと体育館も好きに使うといい。君なら色々と何があるか知っているから大丈夫だろう。しっかり楽しみたまえよ」
「「「ありがとうございます」」」
皆で感謝をする中、黙々と手を動かすフィカスを見て
「あの、なんか忙しいお邪魔してすみません」
そう形程度になるが謝罪をする。
「ん?いいよいいよ気にすることなって、こう見えても全く忙しくないからね」
そうお気楽に答えるのを見て
「いつも思ってたんだけど…先生はその小さいので何してんの」とそれが気になったかエドが尋ねる。
「何ってヌケモンだよ」
「ヌケモンって何ですか…」
「マヌケットモンスター略してヌケモン。」
なんだそのどこかで聞いたことある様なパチモノみたいなのは…。
「まぁ、ぼく個人で作ったモノなんだけどね」
もしかしてゲームやってる?しかも自作って…。それなら確かに全く忙しそうじゃないな。
「面白いのそれ」
「それなりに面白いんだよコレ。いろんな間抜けなモンスターと仲間になって、それを囮にしたり協力させ合ったりといろいろとできて。それに百人十色のような個体値もあってそれはそれでとてもいい味が出ていると思うんだよね。厳選とかする必要もないしね…」
そうそのことの話していると、こちらを再び見て思い出したように喉を鳴らす。
「んん、まぁ、つまらない話はこの辺で、いってらっしゃい。怪我とかには気を付けるんだよ。一応どのフロアにも人はいるだろうから、何かあったら直ぐに言うんだよ」
「はい」
「ああ、それといつも通り申し訳ないけどエレベーターは使わないようにね」
「はいはーい。じゃあね先生。あんまりサボってまた、あの人たちに怒られないようにね」
それが図星だったようで、一瞬体がビクついていた。
やっぱりサボってたんだ。
皆でお辞儀して出ていく際に見ると、何か嬉しそうに微笑みながら手を振ってフィカスが見送っていた。




