Alternative 16
体力テストを終え、他に予定がないので今日は早めに風呂に入る事となった。
ここの施設の風呂は浴場と個室の二つがある。
いつもは一人かつ部屋から近いのもあって個室で済ませていたが、運動場から近いのが浴場というのとエドとメレンの二人が増え誘われたのもあり、今回はそちらに入ることとなった。
その浴場は職員が多いいのもあり、まるでプールのように広い大浴場だった。床や壁も個室のものとは違い、浴槽や床などが加工された大理石などによってできていた。
作る素材でここまで雰囲気が変わるものなのかと眺めていると、先に入っていた二人の背中が見えた。
服に隠れていて良くは分からなかったが、腹筋やら足やらと鍛えているのかそれなりに引き締まっていた。
それを見て久しく自分の体を良く見ると、自分も運動の時間にそれなりに走ってきたのもあってか程よく引き締まっていた。
腕の筋肉はと力こぶを作ろうとするも、自分の細い腕じゃ変にコブが出てきて笑ってしまいそうになる。
「お〜お〜俺に勝ったらからって肉体に自信でもできたのか?」
エドが肩を組み引き寄せて、温まり濡れた体がが密着してくる。
「そんなんじゃないよ…それに、僕まだ洗ってないから汚いよ」
「俺もまだ体は洗ってないから気にしねぇよ。まだ、お湯を被っただけだからな」
「それでも暑苦しいからやめなよエド」
「なんだ?仲間外れにされて拗ねてんのかメレン」
「そんな訳ないだろ、汗臭い」
「お前、俺より点数が良かったからって」
そう言ってエドがメレンに襲い掛かり取っ組み合いを始めた。
それを横目に巻き込まれまいとさっさと体を洗おうと木で組まれた椅子に座り体を洗い始める。
体力テストが終わって直ぐに学習テストの結果が返ってきた。順位と得点は一位に満点のメレン、二位に三百九十点のフェル、三位に三百四十点の自分に最下位のエドの三百十五点だった。
唐突なテストだったのにも関わらず、満点を取ったメレンとたった二問不正解のフェルはすごいとしか言いようが無かった。
体力テストの結果は変わらず一位にフェル、二位にエド三位にメレン、最下位に自分で結局総合的にしても自分の最下位ということが分かる。
そう考えてしまうと少々情けなく感じてしまうのだが、シャトルランの後のフェルの言葉にそう思う事は必要はないのだと知った。
取っ組み合いに満足したのか二人が自分を挟んで両隣に座りお湯を頭の上から流し体を洗う準備を始める。
「その悪かったなアル。変な発破かけて」
「…ん?何のこと」
「何のことってフェルとのことを確かめてたんだよ。付き合ってるんでしょ二人共」
メレンから言われる思ってもなかったその言葉に動揺し、手に持っていた風呂桶が落ち、その音が浴場内に鳴り響いた。
「な、なに言ってんだよ…別に俺とフェルはそんな関係じゃ」
「…部屋に入った時あとからベットの組み立ての手伝いまで息ピッタリだったから、もうそういう仲だと思ってたんだけど…」
「ふ~ん、そうなのか。それじゃあまだ空いてるなら俺がっ」
そう話している途中でエドの頭上に風呂桶が落ちてきて再び鳴り響いた。
「なにすんだよメレン」
「それはしないって約束したよねエド」
「いや、冗談だっての。こう言えばアルがその気になるだろうって思っただけで。だから、そう睨むなよアルも」
「へ?」
睨んでた?と鏡を見るのだがそんな感じはしていないのだが。そんな顔していたか、とメレンの方を見る。
「うん、顔にはあまり出てなかったけど怒りは滲み出てたよ」
マジか、と両手で顔を抑える。
「まあ、なんだ。それなら応援してるからよ。早めに気持ち伝えろよな」
「そうそう、僕たちから見てもお似合いなんだから」
「だから、そんなんじゃ」
「はいはい、分かってる分かってるって」
そう二人は言い訳は要らないと洗い終わった泡を流すように頭上からお湯を被り、湯舟へと走って行った。
本当に…たぶんそんなんじゃないんだ…。
これまで色々な物語を読んでいたアルは勿論恋愛モノの作品も多く目にしていた。
だからそれなりに知識はあるのだが、自分の持つフェルに対するそれは、それら物語達から感じる恋愛の感情とは違う、似てはいるが何処かズレを感じていた。
だからこそ、その感情が分からない。分からないからこそどうすればいいのか。そもそもフェルは僕に、僕をどう思っているのか。でもそれは、その先がどうなるのか分からない。分からないから最悪のことを考えてしまう。
そう、今の関係が崩れてしまう恐れを。だから、まだしばらくはこの気持ちは自分の中で抑え込んでおきたいのだ。




