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【書籍化】影魔法使いは悪役かませ犬のままで終わらない  作者: くーねるでぶる(戒め)


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009 ランニングと生存戦略

 おじいちゃん先生、みんなの噂話で知ったけど、バージルという名前の偉い先生らしいが、その人との魔法の授業が終わって、もう四日も経っていた。


 この四日間、オレは各種授業に出ながら情報収集し、エドワードくんの記憶を探っていた。


 エドワードくんは授業にロクに出ていなかったから大した情報はなかったのだけど、二つ重要な点がわかった。


 オレがエドワード・オールディスとしての記憶を持っているということから、ここが『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』の世界である確定していた。


 そして、エドワードくんの記憶が確かなら、この国が前作の主人公が活躍した国、カチドニア王国で間違いないようだ。


 しかも、ゲームでは語られることがなかったが、この世界では前作主人公、シェリルは、のちにゲームにも登場したアルジャーノン第四王子と結婚したらしい。今はその二人の孫が王として国を統治しているとか。


 残念ながら、シェリルは数年前に亡くなってしまったらしい。


 一目会いたかったなぁ……。


 でも、『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』大好きなオレとしては、エドワードくんの記憶や歴史の授業は、垂涎ものの情報ばっかりだ。オレの知らなかった裏設定や、歴史に触れるたびに歓喜に震えてしまう。


 エドワードくんはアホなことばかりしていたけど、地頭はよかったのか、記憶力がよくて助かった。


 初めてエドワードくんに感謝したよ。


「えっほ、えっほ、えっほ、えっほ……」


 オレはオールディス侯爵家の屋敷の広大な庭を走りながら考える。


 エドワードくんがいるということは、ここが続編の世界で間違いないと思う。


 ということは、再びこのカチドニアに戦火が迫っているということだろう。


 自室の姿見で確認したが、今のオレは公式ページでみたエドワードくんよりも若干幼い気がする。


 戦争は必ず起こる。でも、まだ少しだけ先のようだ。


 その間にどうやって戦争を切り抜ける力をつけるかだな。


 エドワードはやる気をなくしてしまったけど、幸い、影の魔法はかなり使えるし、戦闘でも使えると思う。


 しかも、ウチの実家は侯爵だ。使える軍の数もかなり多いはず。普通ならば、かなり生存確率は高いと思う。


 でも、オレはエドワード・オールディスはこのままでは死ぬのではないかと予想している。


 前作でも、エドワードのような役回りのキャラクターがいた。そいつは辺境伯の息子だったのだが、敵国の強さを示すためのかませ犬として、容赦なく殺されていた。


 辺境伯ということは、辺境を守る要だ。その格は侯爵と同じであり、さまざまな軍事的特典も持っていたはず。


 それでも、辺境伯の息子は殺された。


 同じことがオレで起きないとは限らない。


 オレが生き残るためにできることは二点あると思っている。


 一つは、嫌われ者にならないこと。


 これには味方を作るという面がある。


 誰だって嫌われ者のために命を懸けたり、助けたりしないはずだ。それはオレが率いることになるだろう兵たちしかり、仲間の貴族たちしかり。


 ハッキリ言おう。オレはこのまま嫌われ者のままだったら、戦場で兵たち裏切られて死ぬ未来すらあると思っている。


 そういうわけでも、オレは使用人たちや兵士たちに、支えたい主人として認識されないといけないし、同じ貴族の仲間にも命を懸けてでも守るべき味方だと思われないといけない。


 正直、かなり難易度が高いと思う。


 オレは前世だってただの中卒の社会の底辺だった男だ。今世だってエドワードくんは好き放題いたずらするどうしようもない奴だった。そんな男に人を心服させることなんて可能なのだろうか?


 可能かどうかじゃない。やるんだ! やらなきゃ死ぬ!


 そしてもう一つ。それは、オレ自身が強くなるということ。


 幸い、オレの魂の魔法、影の魔法はかなり柔軟性のある魔法だ。影を実体化させ、自由に形を変えられるし、まるで銃弾のような速度で発射することも可能。


 一つ懸念があるとしたら、それはオレの攻撃が物理属性ということだろう。


 例えば、バージル先生。あの人の魂の魔法は火の魔法。きっと火を自由に操れるのだろう。


 その攻撃は、当然ながら火属性だ。物理ダメージもさることながら、ものを燃やすという攻撃も可能だ。あまり考えたくないが、人間だって燃やせるはず。


 それに比べれば、オレは物理攻撃しかできない。魔法の運用をかなり考えないといけない。


 こんなことなら、もっと前世で勉強しておくんだったな……。そしたら、もっといいアイディアが浮かんだかもしれないのに……。


「ふぅ……」


 そんなことを考えていると、ちょうどランニング終了だ。


 息は切れなくなってきたけど、相変わらずオレはデブのままだった。


 まぁ、ダイエットを初めてまだ五日目だ。効果が出るのはまだまだ先だろう。


「エドワード様、本日は王都よりシャーロット殿下がおいでになる予定です。先ほど、先触れが参りました。そろそろ準備いたしませんと」

「え?」


 これから自室に帰ってスクワットをしようなんて考えていたら、カーラからそう進言された。


 シャーロット? 誰?

お読みいただき、ありがとうございます!


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