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【書籍化】影魔法使いは悪役かませ犬のままで終わらない  作者: くーねるでぶる(戒め)


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10/42

010 覚悟を決め……

 シャーロット・カチドニア。


 その名が示す通り、ここカチドニア王国の第一王女である。


 オレの記憶が確かなら、公式ページにも紹介されていたキャラクターだ。


 その紹介ページでは、普段は王族に相応しい清楚な姫君だが、実は……。なんて書かれていた、なんだか裏のありそうなキャラクターだった。


 そして、エドワードくんの記憶で知った衝撃の事実なのだが、なんとこのシャーロット、オレの婚約者候補らしい。


 前世では結婚どころか恋人もできたことなかったものだから、なんだか婚約者って不思議な感じだ。


 オレは心の準備ができないまま自室に戻って汗を拭き、新しい服に着替える。


 なんだか心が落ち着かない。


 エドワードくんの記憶では、シャーロットは絵画でしか見たことがない存在だけど、オレは公式ページでシャーロットの姿を知っている。


 それによれば、シャーロットは冷たい印象の華奢な美少女だったことを覚えている。


 そんな美少女が、オレの婚約者候補?


 なんだか嬉しいような申し訳ないような気持ちでいっぱいだ。


 オレ、デブだもん。


 しかも、使用人たちから嫌われてるし……。


 婚約者候補がオレでごめんね。


 でも、候補ってことはまだ決定ではないということだろう。


 相手は王族だし、どちらかといえばオレが品定めされる側かな?


 しかし、公式ページのキャラクター紹介に載っていたということは、シャーロットはそれだけ重要なキャラクターなのだろう。


 たぶん、主人公の味方になってくれるタイプのキャラクターだと思う。


 ということは、オレはシャーロットのやることに基本的に賛成していたらいいのでは?


 これは大きな指針ができたかもしれない。


 だが、逆にシャーロットに嫌われてしまえば終わりなのでは?


 もしかして、詰んだ?


「シャーロット殿下がお着きになりました」

「ああ、ありがとう」


 くぅー! 今から緊張で死にそうだ!


 てっきりオレが玄関でシャーロットを出迎えるのかと思っていたけど、そういうわけでもないらしい。


 この世界の貴族の主な移動手段は馬車だ。しかも、何日もかけて旅をする。その間、汗を拭くぐらいはするだろうけど、当然ながらお風呂に入れない。


 なので、まずはお客さんにはお風呂に入って身だしなみを整えてもらって、それから会うというのが一般的らしい。


 まぁ、お客さんだって汚れた姿で挨拶はしたくないだろうということで生まれた風習らしい。


「ねえ、カーラ? ここから王都ってどのくらいの距離なの?」

「そうでございますね……。馬車ですと、四日ほどの距離でございましょうか?」

「そうか……」


 馬車って一日どのくらい移動するんだろう? いまいち距離がわからない。


 でも、四日も不自由を我慢してオレに会いに来てくれたんだ。


 あぁー……。嫌われないか不安すぎる!


 なんでもっと早くダイエットしなかったんだ! エドワードくんのバカ!


「エドワード様、大丈夫でございますか?」


 頭を抱えて唸っていると、カーラが心配そうな目でオレのことを見ていた。


「大丈夫だよ……。ちょっと過去の自分が……ね」

「はあ? エドワード様、それよりもこちらを」


 カーラが渡してきたものは、まるで平べったい宝石箱みたいなものだった。


「これは?」

「シャーロット殿下にお贈りするネックレスとなっております。ご確認ください」

「ネックレス……?」


 当然だけど、オレはそんなものを用意した記憶がない。エドワードくんの記憶を探ってみてもなかった。


 たぶん、母上が用意してくれたんだな。


 オレにもエドワードくんにも女の子へのプレゼントを選ぶなんて難易度が高いし。


 しかも、相手はただの女の子じゃない。この国の第一王女様だ。そりゃ手ぶらで帰せないよなぁ……。


 カーラは確認しろと言っていたよな?


 ということは、開けてネックレスを確認しろってことだよな?


「ふぅー……」


 オレは一つ息を吐くと、ゆっくりとビロードの箱を開けていく。


「おぉ……!」


 これは白鳥だろうか? 優雅な鳥をイメージした銀細工が美しい。そして、その中央に付いている蒼穹を思わせる大きな青い宝石。


 こういうものには疎いオレでも一目で最高のものだとわからせるような、凄味すら感じるネックレスだ。


「見事だ……」

「気に入っていただけましたか?」

「ああ。これ以上のものはない」


 オレは指紋を付けるのも畏れ多くて、触ることなく箱の蓋を閉める。


 これほどのものを用意してくれるとは。父上と母上は本気だ。本気でオレとシャーロットを婚約させようとしている。


 プレッシャーは未だにある。卑屈な自分もいる。


 でも、この両親の愛には応えたい。素直にそう思った。


 どうせ、今からどうにかしようとしても無駄なのだ。


 ならば、ありのままの自分を見せて、シャーロットに判断してもらおう。


 それで婚約者候補から外されたら仕方がない。


 覚悟を決めろ、腹をくくれ!


「エドワード様、シャーロット殿下のご準備が整ったようです」


 もうちょっと待ってくれない……?

お読みいただき、ありがとうございます!


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