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【書籍化】影魔法使いは悪役かませ犬のままで終わらない  作者: くーねるでぶる(戒め)


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045 シャーロットとの婚約式

 その後、王都の民衆に祝福されながら大神殿に入る。


 案内されたのは、部屋の中央にローテーブルが置かれ、それを挟むようにソファーが置かれているそこそこの広さの部屋だった。


「こちらをどうぞ」


 オレはソファーに座ると、神官さんがワインを用意してくれる。


 神殿でワインなんて飲んでもいいのかと思うが、この神殿で祀られているゾーイは、豊穣の神からワインを盗むほどワインが大好きという神話でのエピソードがあるので、むしろ水よりもワインを飲むことが推奨されているという。


 そのせいで大いに酔っ払った神官が度々問題を起こすが、カチドニア王国はそれが許される緩やかなお国柄である。終わってるね?


 そんな神官たちだからか、十歳のオレにも平気でワインを出してくる。


 まぁ、法律で禁止されているわけじゃないから、全然十歳でもワインが飲めるんだけどね! これまでに何度も飲んできたし!


 もちろん、オレの向かいのソファーに座っている父上と母上にもワインが用意されている。


 父上がワイングラスを手に取ると、オレと母上もワイングラスを手に取る。芳醇な香りが鼻をくすぐった。けっこういいワインみたいだ。


「エドワード、シャーロット殿下との婚約おめでとう」

「おめでとう、エドワード」

「ありがとうございます、父上、母上」


 そして、三人でゴクリとワインを飲む。


 重いけどしつこくない。まるでフルーツとナッツのような香りが鼻に抜けていく。良いワインしか飲んだことがないオレでも、このワインが特別に良いワインだということがわかった。


「うむ。ボンボルドの二十八年物かな? 良いワインだ。今日という日に相応しい」


 父上がワイングラスに残ったワインをくるくるして香りを嗅いでいた。


「左様にございます」


 父上の言葉に、少し驚いたように神官が答える。


 父上クラスになると、ワインの産地や作った年代までわかるようだ。すごいね。


 しばらく三人で歓談していると、わーっと外の歓声が大きくなった。


「国王陛下、シャーロット殿下がお見えです」


 どうやらシャーロットが登場したらしい。相変わらずすごい人気だ。


「じゃあ、エドワード。がんばるんだぞ?」

「式の進行は覚えているかしら?

「はい。大丈夫です!」


 父上と母上が部屋を出ていく。もうすぐ式が始まるのだろう。


「なんだか緊張してきたな……」


 これからシャーロットとの婚約式が始まるのか。そんなに難しいことはないけど、上手くできるだろうか?


「エドワード様、準備が整いました」

「ああ」


 神官の男性に案内される形で、オレは部屋を出て神殿の奥へと進んでいく。そこには大きな扉があり、扉を開けるために二人の神官がスタンバイしている。


「準備はいいですか?」

「ああ……!」


 一度気合を入れるために両手で頬を挟むように軽く叩いてから返事をすると、目の前のドアがゆっくりと開いていく。聞こえてくるのは、楽しそうな陽気な音楽だ。ゾーイはこういう楽しい音楽が好きだと考えられているからね。おかげで荘厳な神殿だというのにこうも楽しそうな雰囲気になる。


 そして、オーケストラの音楽に合わせて合いの手のように拍手をする参列者たち。


 チラッとそちらを見ると、すごい数の参列者が見えた。


 その最前列にいるのは、父上と母上。そして、国王と思われる男と不機嫌そうな男の子だ。


 あれが『絶対防衛圏~カチドニアの魔女~』の主人公、シェリルの息子にしてこの国の国王、クリスティアン・カチドニアか。イケメンだな。


 ところで、クリスティアンの隣の男の子はなんで不機嫌そうなんだ?


 前方を見ると、そこにも大きな扉があり、ゆっくりと開いていく。そこから姿を現したのは、薄い水色のドレスを着たシャーロットだった。


 髪も奇麗に巻き上げて、華奢な肩も出ており、シャーロットは普段よりも大人びて見えた。


 そんなシャーロットが、こちらを見て、一度参列者を見て、すごい勢いでまたこちらを向いた。どうしたんだろう?


 オレたちは共に神殿の奥に鎮座しているゾーイ像の前へと歩み寄る。


 その時、シャーロットがまるで内緒話をするように小声で問いかけてきた。


「あなた、誰よ?」

「え?」


 誰? シャーロットは何を言っているんだ?


「エドワード・オールディスだけど? 忘れちゃったの?」


 オレも小声で答えると、シャーロットはその奇麗なサファイアのように透き通った大きな瞳が落ちんばかりに目を大きく見開いた。


「嘘……。だって、エドはもっとデブなはずよ?」

「嘘じゃないよ。がんばって痩せたんだ」

「こんな短期間で……? でも、声はエドだし……。本当にエドなの?」

「そうだよ」


 コクリと小さく頷くと、シャーロットはちょっとオレから視線を逸らして呟く。


「なによ、ちゃんとかっこいいじゃない……」

「え?」

「なんでもないわよ。それより、式に集中なさい」

「あ、ああ……」


 今、シャーロット、オレのことかっこいいって言った?


 がんばった甲斐があったなぁ……。

お読みいただき、ありがとうございます!


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