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【書籍化】影魔法使いは悪役かませ犬のままで終わらない  作者: くーねるでぶる(戒め)


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041 王都での日々

「えっほ、えっほ、えっほ」


 清々しい朝。王都クレイヴンを囲む防壁からは、ちょうど朝日が見え始める。


 まだ薄暗い早朝。オレは王都のオールディス侯爵家のお屋敷の庭をぐるぐると走り回っていた。


 オールディス侯爵家のお屋敷は、表こそ立派な庭が広がっているが、裏はなんと畑が広がっていた。見たところ、葉野菜を主に育てているらしい。たぶん、王都の近くの村からは野菜を運んでも傷んでしまうため、自分たちで栽培しているのだろう。


「えっほ、えっほ、えっほ、えっほ」


 農作業している人々や、洗濯物を干しているメイドたちの姿を横目に、オレは走り続ける。


 頭を下げるメイドや使用人たちに手を軽く上げて応えつつ、オレは勝手に作った屋敷の周りのぐるりと回るランニングコースを軽く五百周した。


 アーミーアントを倒して身体能力がアホみたいに上がっているからね。こんなことをしても軽いウォーミングアップ程度の疲れしかない。


「ふぅー」

「お坊ちゃま、どうぞ」

「ありがとう」


 玄関の前でカーラから水を受け取って一気に飲み干す。乾いた体に染み込むようで気持ちがいい。


「おかわりはされますか?」

「ああ。もう一杯貰おうか」


 キンキンに冷えた水をもう一杯キメ、オレはカーラから受け取った布で汗を拭きながらお屋敷の中に入る。


 父上も母上もまだ起きていないのだろう。屋敷にはゆったりとした雰囲気が漂っていた。


 そんな屋敷の中を歩き、オレは自室へと戻る。


 今回、急遽王都に行くことが決まったはずなのだが、ちゃんとオレのサイズの服もあるし、部屋も準備してある。


 この世界での貴族の服と言えば、オーダーメイドが基本だ。当然、注文してから完成まで時間がかかるはずである。


 おそらく、いつオレが来てもいいように、前々から準備していたのだろう。すごいね。


 おかげでオレは快適に過ごせるけど、これまでの間にオレが袖を通すこともなく処分された服もあるのではないだろうか?


 さすがにもったいないと思うのは、オレが元日本社畜の庶民ソウルを持っているからなのだろうか。


 自室に戻ると、豪華な調度品たちがオレを出迎えてくれる。


 だが、オレがまず向かう先は姿見の前だ。


「多少は、痩せたか……?」


 姿見には、まん丸おデブからぽちゃくらいにはなったオレが映っていた。


 下を向くと、前まではお腹に隠れて見えなかった自分の足が見える。


 確実に痩せている!


 痩せている。効果が出ているとなると、ダイエットが楽しくなってきた。


 今日もこれからスクワットだ!


 プランクもあるよ!



 ◇



 毎朝の習慣になっているダイエットメニューをこなすと、朝食の時間になった。オレは汗を拭いて着替えてから食堂に顔を出すと、もう食堂に来ていた父上と母上が談笑していた。


「おはようございます、父上、母上」

「おはよう、エドワード」

「おはようございます、エドワード」

「遅くなりました」


 オレは両親に軽く頭を下げると、カーラが引いてくれた椅子に座る。


「かまわんさ。おかげでクラリッサと楽しいひと時を過ごせたからね」

「まあ、あなたったら」

「はっはっはっはっはっ」


 父上は上機嫌に笑い、母上も扇子で口元を隠して笑っている。


 まったく、二人とも仲が良いね。これは弟か妹が生まれるのも遠くないかもなぁ。


「しかし……、エドワードは本当にそんな朝食でいいのかい?」


 料理が運ばれてくると、父上と母上が心配そうな顔でオレを見ていた。その原因は、オレの朝食にある。オレの朝食は、ダイエットを意識した脂質抑えめのメニューなのだ。簡単に言うと、鶏胸肉を主軸にした油抑えめのメニューである。


「はい。これもダイエットの一環です。意外とおいしいですよ?」


 実はこれ、オレが料理長にお願いして、一人だけ別に作ってもらっている料理なのだ。普通の貴族は滅多に鶏胸肉なんて食べないらしいので、料理長にはかなり驚かれた。


 それでも、料理長の技術力の高さなのか、これがかなりおいしい。


 まぁ、鶏もも肉のおいしさには勝てないけどね。


「エドワードが満足しているならいいのですけど……。あまり無理はしてはいけませんよ?」

「はい、母上」


 両親にとって、オレが太っていても痩せていても、等しく愛する対象なのだろう。だから、無理して体を壊さないか心配しているんだ。ありがたいね。


「そういえば、エドワード。シャーロット殿下との婚約式の日程が決まったぞ」


 ナフキンで口元を拭きつつ、父上が喜ばしいと笑っていた。


 そういえば、シャーロットと別れて、もう二週間近くになる。やっとといえばやっとシャーロットとの婚約式の日程が決まったようだ。


「はい。いつになったんですか?」

「うむ。三か月後だ」

「……はい?」


 三か月後? そんなに時間かかるの?


「陛下はシャーロット殿下とエドワードの婚約に許可を出したが、陛下もシャーロット殿下も政務があってな。そのため、日程の調整苦労したらしい」

「きっとシャーロット殿下も新しいお召し物をご用意するはずですからね。その準備もあるでしょう」

「なるほど……」


 そりゃ王様と言ったら国のトップだし、いろいろ王様にしかできない仕事もあるだろう。それに、シャーロットも王族としてもう仕事をしているらしい。


 そして、母上によると婚約式に向けてドレスも作ると……。それじゃあ時間かかっても仕方がないか。

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