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【書籍化】影魔法使いは悪役かませ犬のままで終わらない  作者: くーねるでぶる(戒め)


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042 王都でのお茶会

 ランニングや筋トレをしながら、オレは王都での生活を満喫していた。


 父上や母上も社交に精を出しているみたいで、家を留守にしている時が増えた。


 だが、オレの両親は親子三人での時間を大切にしているみたいで、馬車を使って王都を散歩したり、美術館に入ったりなど、家族としての時間を作ってくれた。


 オレの本格的な社交はまだだが、母上の取り計らいでお茶会に参加することになった。


 オールディス侯爵家主催のお茶会らしく、たくさんの人々がお屋敷の庭に集まった。これがすべて貴族で、しかも、貴族たちの中でもオールディス侯爵家の派閥に入っている貴族だけでこの数らしい。


「エドワード様、この度はシャーロット殿下とのご婚約、おめでとうございます!」


 もう、オレとシャーロット殿下との婚約は正式に発表されている。婚約式までの三か月は、たくさんの貴族を呼んで、盛大な婚約式にしたいという思惑もあるのかもしれない。


「お聞きしましたよ、カルヴィン侯爵様。ご子息のエドワード様があのアーミーアントを殲滅したとか。アーミーアントは厄介ですからなあ。有能なお世継ぎでカルヴィン侯爵様も鼻が高いでしょう?」


 父上も嬉しそうにU字のヒゲの先端を整えながら応じている。


 どうも、オレがアーミーアントを殲滅したという話は、貴族間ではもうかなり広まっているらしい。


 もしかしたら、これを機にアーミーアント狩りが流行るかもね。


「クラリッサ様、最近、王都の流行りは――――」


 母上もお友だちとお話してて楽しそうだ。


 オレはというと、同じくらいの子どもと一緒に遊んでいた。


「エドワード様、アーミーアントを倒したって本当なのですか?」

「本当だよ」

「何匹くらいいたんです?」

「百とかじゃないか?」

「百は少なすぎるだろ」

「一万はいたんじゃないかな?」

「「「「「一万⁉」」」」」


 まぁ、オレからすると精神的に年下の子どもたちの面倒を見ている感じだが、この子たちが将来のオールディス侯爵家の派閥を運営していくことになる。できれば、良好な関係を築いていきたい。


「ん?」


 その時、お茶会の会場となっている庭の隅で子どもたちが何かしているのが見えた。立ちションか?


 だが、よくよく見ると、一人の女の子を数人の子どもたちが庭の隅に追い詰めているようだった。なんだかよくない雰囲気だ。囲まれている女の子が今にも泣いてしまいそうだ。


「すまん。ちょっと行ってくる」


 周りにいた子どもたちに断ると、オレはその女の子の下に向かった。


「おい! お前なんかが何でこのパーティに来てるんだよ?」

「ここはオールディス侯爵家なのよ?」

「そうだぞ。ここはお前なんかが来ていい場所じゃないんだ!」

「どの面下げてここにきてるのかしら?」

「え? あ、あの……」


 かわいそうに女の子は今にも泣きそうな表情だ。実際に目尻には涙が浮かんでいる。


「ちょっといいか?」

「あん? って、エドワード様⁉」

「どうしてこんな所に⁉」


 オレが登場すると、女の子を囲んでいた男の子と女の子が驚いた表情をしていた。


「女の子をいじめちゃダメだぞ? さあ、みんなで謝ろう?」

「わたくしたちがこの子に?」

「こいつは男爵家の子なんですよ? なんで子爵家の僕が謝らなくちゃいけないんですか?」

「わたくしは伯爵家の娘よ!」


 なるほど。この子たちは親の爵位を笠に着て、下の爵位の子をいじめていたのか。


 ならば、親の七光りがどんなに嫌なことかをわからせてやろう。


「ところがどっこいオレは侯爵家の息子だ。親の爵位で偉さが決まるんだろ? つまり、この中で一番偉いのはオレだ。異論はないだろう? そんなオレが謝れと言ってるんだぞ?」

「それは……」

「ぐぬぬ……」


 女の子をいじめていた子どもたちは言い返したくても言い返せないような悔しそうな顔をしていた。


「どうだ? これがこの女の子の気持ちだ。言い返したいのに言い返せないのは悔しいだろ? お前たちは、とてもひどいことをこの子にしていたんだ」


 ばつの悪そう顔をする子どもたち。


 しかし、その中でも気の強そうな女の子が意を決したように口を開く。


「ですが、エドワード様。この子の家は、少し前まで違う派閥にいたのですわ。その前はまた違う派閥のお茶会にも出ていたわね? そんな節操のない家の子なのですわ。こんな家の子に心を砕いたところで、自分の利益だけ持ってまた別の派閥に行くだけに決まってます」


 なるほどな。


 このいじめっ子たちは、ただ親の爵位を笠に着ていじめをしていたわけではないらしい。この子たちにとって、次々と所属する派閥を変える家の女の子は、信用できないということらしい。どうやらそのことがいじめに繋がっていたようだ。


 とはいえ、男爵家のような下級貴族にとって、その時々で時世を読んで所属する派閥を変えることはよくあることなのだ。それをいちいち咎めていたらキリがない。


 それに、そんな風見鶏のような下級貴族たちだが実は重要な役割も持っているのだ。

お読みいただき、ありがとうございます!


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